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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第98話 仮の冒険者になるための試験前

 この街にあるチュートリアルダンジョンは街中央にある城と一体化するような見た目で存在している。


 この城ってのは実際の王様が暮らしている本物の王城なんだけど……城を囲う高い城壁の奥に見えるのは、設計ミスかなって程の煙突を生やした城っていう変な建築物にしか見えない。

 きっと、この城の設計した建築士は斬新かつファンタスティックな阿呆あほぅなんだな〜〜って——僕がこの建物に向ける感想はそんな物だ。

 ちなみに、チュートリアルダンジョンとは城と同時に建てられた塔ではなくて、本当は元来からあった巨大建築物の尊大さを自分のモノにしようとした馬鹿な王が城を建てる際にダンジョンを囲ったそう——これまた阿呆なお話だ。

 それでか……あの塔って城と一体化してるように見えてるけど、建物がくっついてる訳じゃなくて隣接してるだけなんだって……本当に城を建てろと命令した王様アホ過ぎだよね? そうまでするのか?

 もう、王は既に何世代も代替わりし、はるか昔の歴史に過ぎない話だけど。チュートリアルダンジョンはそれよりも遥か昔から存在していて……誰が建てたのかも分からない。

 一節では女神が建てたとされ、叙事詩には残ってるらしいけど……はてさて、何が真実なのか? 「神のみぞ知る」ってヤツか? 知らんけどもな。


 まぁ、僕には知ったこっちゃないんだ。誰が建てたとか……真実が……とか、そんな歴史の探究なんて考古学者がすることで、クソガキである僕の出番じゃないし興味もない。

 僕が知っておくべきなのは、このチュートリアルダンジョンってのが金のなる木であって……他人にバレずに、どうやって安定供給ができるように素材売買の流れを築くか——その情報だけさ。


 さ〜て、そんな夢ある状況を掴むためにも……僕は第一歩として……ここチュートリアルダンジョンのたもとを訪れているんだがな。


 チュートリアルダンジョンは城の正面の城門とは違うところに、入り口が設けられている。

 今の国王はダンジョンを独占しようとは考えてなくて、一般に公開、解放されているんだ。

 城壁の一部にダンジョン用の門が別にあってさ。僕はその門前の広場を訪れている。



「やぁ。みんなよく集まったね? 僕は、冒険者クラン——銀鳥 《アージェントゥム アヴィス》に所属しているクルトだ。本日は仮冒険者認定試験の試験官を務めさせてもらう。どうぞ、よろしく!」



 指定の場所を訪れると、冒険者の装いで着飾る少年少女達が集まっていた。その集団の中心——そこで語るのは、茶髪の歯に衣着せぬ美丈夫の青年がいる。

 銀鳥 《アージェントゥム アヴィス》——この名前は、よ〜く知っている。トップクランの名前だ。チュートリアルダンジョンの階層最高踏破クラン。確か、現在は40階層のボスモンスター討伐に四苦八苦……と聞いた気がする。

 このクランは、言ってしまえば「1番高い場所まで登ったのが我々だ!」と、鼻を長くするテング集団ってことだ。

 僕、こっそり69階層に入ってしまった。正規でないにしろ非公認で僕が1番高い場所まで登った人物なんだよな。ついでにヴェルテちゃんもね。


 ごめんよぉ〜〜。矜持を傷つけてしまいそうで。


 それでだ。


 僕がなんでこんな長〜〜い名前のクランのことを知って、ましてや覚えているのか? 

 それはね……僕にとって、このクランには因縁があるからなんだよ。

 僕がバイトに応募したのがここなんだ。不採用の文字を突き返し、蹴って捨ててくれたクソクランだ。


 ——僕は、あの時のことは片時も忘れてないからな! 


 この、いけ好かない野郎め! 


 “クルトン”だか“狂ってる”だか知らないけどな! 善良なクソガキである僕を絶望の淵に立たせるとか、狂気の沙汰だ!! 


 ——貴様の血の色は何色だぁああ!!


(※ A. 赤色です。クルトはクランの一隊員であって、人事権には関与していません。悪いのは逆恨むウィリアです)





 そしてその後——



 試験官である男は、簡単なレクチャーを数十分に渡って話す。

 チュートリアルダンジョンの1階層の地形だとか、出現する魔物の種類、採取できる素材とその処理方法とかね。

 まぁ、ほとんどが冒険科の授業で登場するような基本的な知識で退屈極まりない講義だった。


 だというのに……



「わぁ〜〜クルト様の講義、わかりやすい! それに、教える姿も素敵ね!」

「本当、本当〜♪ 今日のこの時が一生の思い出になったわ!」

「あぁ〜いつか銀鳥 《アージェントゥム アヴィス》に入って、クルト様のパーティに入りたいわ!」

「手取り足取り、武器の扱い方を習いたい!」



 そんなくだらね〜授業を、女の子達がキャーキャー言いながら聞いてんの。これがうるさいのなんの。

 あんな男のどこに惚れるというのかね? 顔立ちは整ってはいるけど、僕にとっては、いけ好かない野郎にしか見えないんだけど。

 


「では、これより仮冒険者認定試験の試験内容を説明する!」



 と、そんな風に呆れていると、あの……えっと……クルト()? が、試験内容を語り出した。


 あれ……名前クルトンだったっけ? クルッテル……だっけ?


 まぁ、彼の名前なんてどうでもいい。今日が終われば別に関わる気は微塵もないし。覚える必要はないな。


 別にバイト蹴られた腹いせとかじゃないからね! 本当に違うからね!!

 

 僕は身体が小さくてもね、心は御海原のように大きいんだよ? 僕がそんなちっぽけな器にでも見えるというのかね?


(※はい! 見えます!)

 



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