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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第95話 冒険者デビュー(仮)

「ついに……この日が来たか……」

「——うん!! 私、頑張っちゃうんだから!」

「ヴェルテ? 張り切るのはいいが……緊張感は持てよ。要らん怪我するぞ」

「うん! 分かってるよ〜!」



 僕は、大きなストリートを歩んでいる。

 ピカピカの冒険者の装いに身を包み、腰には剣という名の誇りを帯刀して……さながらリトル冒険者だ。

 僕の背後には、クルクル、ぴょこぴょことわちゃわちゃ引っ付き虫のヴェルテの姿もある。彼女の格好もまた——僕と同じようなものだ。


 今日——この日……


 僕……と、ついでにヴェルテは……


 チュートリアルダンジョン……じゃなくて……


 今はこっちの呼び方をしてみようかな?



 ——っゴホン!!



 あぁ〜〜仕切り直して——



 僕たちは、今、目の前に見える天高く聳え立つ塔に向かっている。



 そう……



 今日——我々はダンジョンデビューをする。



 ()()()()()()()()()()に堂々と正面から入場するんだ。



 さぁ〜僕の冒険譚の1ページ目を始めよう!!



 ——グゥ〜〜♪


「——ウィル! お腹すいた〜〜♪」

「ちょっと? ヴェルテちゃん?? 今僕、感慨に耽っているんだけど!?」



 おっと……せっかく、カッコつけてみたんだけど。ヴェルテちゃんの腹の虫に台無しにされちゃった。

 

 まったく、この子ときたら……


 はぁ……締まらないな〜〜……クソッ!





 陳腐な冒険の始まり——





 と——なぜ、(とヴェルテ)が冒険者デビューしようとしてるのかと言うと……


 いや、厳密には僕たちは“まだ”——冒険者ではないんだ。


 とある試験を受けるために、今ここにいる。










 ——数日前——



「……仮冒険者試験?」

「あぁ……成績優秀者には全員言っていることだが……冒険者見習いになるつもりはないか?」



 冒険者見習い? 何だそれ……??


 僕の冒険譚知識、神器からの情報、総動員しても知らない言葉だ。



「まぁ、簡単に言ってしまえば冒険者の卵——仮の冒険者としての活動支援制度だ。この試験に合格すると、見習い冒険者の資格を得られる。ラストダンジョンの低階層だけという決まりで立ち入りが許可され、簡単な依頼や、採取した素材の買取をしてもらえる」



 ほう? それは、何と魅力的なことか?


 学園長が語りはどうやら僕にとって吉報であったようだな。



「なるほど……で? 試験の内容って?」

「ほう? 早速、本題を聞くということは、やる気は満々といった様子だね?」

「そりゃ〜〜もう……ダンジョンに入れるってことはレベルが上がるってことですから。ステップアップするなら早い方がいい」

「ふむ。向上心があっていい答えだ」



 つまり……この試験で合格を勝ち取れば、僕は堂々とダンジョンに足を踏み入れることが許可されるわけだ。こんな嬉しい話はないさ。


 地下での盗賊との勝負も……結果からすれば、低確率の賭けに勝って隙をつき、ただ逃走を計った勝ち逃げの幕引きだった。

 あの戦いは褒められた結果ではない。反芻する部分も沢山ある。

 冒険者を目指すと決めた以上——自分自身ぐらいは守れないとダメだ。

 せめて、あんな変態野郎ぐらいはボコボコにできるぐらいの実力はつけたい。

 じゃ〜〜そこで、僕はどうするべきなのか?

 そこはやっぱり、『レベル上げ』に越したことはないわけよ。簡単にステップアップするにはさ。

 それにはまず、人類が皆——勘違いしてラストダンジョンだと言い張るチュートリアルダンジョンに入る必要がある。だが……あそこは冒険者しか入ることは許されてない。だから、僕はレベル上げができないわけだが……


 学園長の申し出は、僕にとってクローゼットからシュークリームといったような話だ。


 ダンジョンへの立ち入りを認めてもらえる、またとない機会。その資格とやらは喉から手が出るほど欲しい。



「試験は実際の冒険者と一緒にダンジョンに入ってもらい、レクチャーを受けてもらう。後に簡単な素材採取と魔物討伐を実践してもらい、問題がないと判断してもらえたら試験は合格だ。めでたく冒険者見習いと認められる」

「なるほど……」

「どうだい? 受けてみるかい?」

「それはもう。当然受けます。ヴェルテはどうする?」

「——うん? ウィルがやるなら私も〜〜やろうかな? ウィルがいれば何でもできちゃう気がするんだ。うへへ〜〜♪」



 何気なく、ヴェルテにも話を振ったが、なかなかに嬉しいことを言ってくれる奴だ。頭をワシャワシャしたくなるだろうが!



「うむ。分かった。——実は、この話をするのも君たちが初めてなんだ。この後も何人かに話はするつもりだが……そうだな。せめて80以上の点数をとった者には声をかけるつもりだ。試験当日は他にも受験者は居るとは思う。が、君たちなら大丈夫かな。他の者に臆することなく挑戦できるだろう。何てったって6000点の2人だからな!」



 おいおい。えらい持ち上げてくるな。このイケおじは……僕はしみったれたクソガキですよ? 試験に落ちる気は毛頭ないが、何に期待してんのだか?



「とにかく、全力は尽くしてみます」

「あぁ……頑張ってくれたまえ。試験は今週末だ。試験の詳しい内容と準備は娘のフェルナンドを通じて追って伝える。もう午後からの授業の開始時刻となるだろうから、教室に戻ってくれ。以上で話は終了だ」

「はい。では失礼します。ほら、ヴェルテも行くぞ?」

「ふみゅ? お話終了??」









 てな……ことがあったのだよ。



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