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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第90話 僕の日常となった令嬢

「貴族の中にも友人はいるわよ。私が家を勘当されたとしても、気が変わることなく接してくれる素晴らしい友人がね。この点、私は恵まれていたわ。だけどね、どうしても私に気を使おうとするから、あまり顔を合わせないようにしてるの」

「うん……」

「それで行く当てもないから、あなたのところに来てるってわけ」

「……さい、ですかぁ……」



 アイリスが理由を語ってくれた。


 だがしかし……


 気を使ってくれる友人のため、気を使ってここに来ている。ふむ……なら、僕にも気を使ってくれないだろうか? 1人にして欲しいんだけど? 

 「なんでここに来てるんだ!」って質問が、遠回しに「帰ってくれ」って言ってるのに何故気づかない!? 友人の気を使ってますオーラを感じとれるレーダーをお持ちなのに……何故、僕のわかりやすい感情を読み解けないんだよ!



「はい……あなたの質問には答えた。今度は私の質問〜♪ 試験ではどんな()()をしたの? 教えなさい!」



 でだ。僕が呆れているのもそっちのけ〜〜彼女は自身の質問を仕返しにぶつけてくる。

 てか——僕が試験で不正したってのは確定認識なのね? 


 ——失敬なぁあ!!


 そんなふうに思ってる奴にはなぁあ!!


 

「それは〜〜秘密ですぅ〜〜!」

「えぇ? 何それ?」



 教えてなんかやらないよ!! 

 ま、例え猫撫で声で菓子折り持ってきたとしても、僕の秘密は教えてやらんがな!!



「不正だって決めつける人には〜〜教えませ〜〜ん」

「あら? 怒った? ふ〜〜ん。あなたって見た目通り子供っぽいのね?」



 なんだよ! この人!! 僕のこと馬鹿にしに来たのかよぉお!!


 なに「見た目通り」って!?


 「見た目によらず」とかならまだしも、「見た目通り」なんてうたい文句聞いたことねぇ〜よ!! ただ、率直に感想言ってるだけじゃん!! 


 悪かったな! 子供っぽくて!!



「あ!? そうだウィル!」



 あん? なんだよ! まだ何かあるのか!!


 ——フンッだ! 


 もう、アイリスの言うことなんて聞いてやらないんだから! 今更謝ったって許してやらな……



「ここで話してるのもなんだし、昼食でもどう? 前は、約束したのに、ランチをご馳走してあげれなかったから、ウィルの分の昼食も用意させるわ。続きはそこでお話しましょう?」

「うん、行こうか」

「ふふ。そうこなくっちゃ♪」



 なんだよ、それを早く言ってくれよ〜。


 前は邪魔が入って食べられなかった令嬢飯。

 正直、僕はあの時のことを後悔していた。

 何故あの時、チャンスをモノにできなかったのかと……。

 あぁ〜〜夢にまで見た令嬢飯——Mr.シェフ=イチリューは元気にしてるだろうか? あったことはないが、僕はもう彼を待ち焦がれていた。珍しく名前まで覚えていたんだぜ。どこぞの“ナメ太郎”とは大違いだぞ!


 さぁ〜どんな料理が待ち受けているのか? 楽しみだ!!


 こうして、僕とアイリスは教室を後にする。






 はてさて、廊下を歩いていると、周りの人間はどよどよ〜〜とは、ならず。いつもの学園の賑やかさが広がっている。

 ここ数日、アイリスと行動を共にするようになって、周りはこの状況に順応してしまったのか、僕たちに触れることは無くなった。


 むしろ……



「あ!? アイリス様! ウィリアさん! ご機嫌よう」


「はい。ご機嫌よう」

「えっと……ど、どうも……」



 なんか、僕は貴族科の生徒の一部に覚えられるまでになっていた。今も、令嬢の1人がスカートの端をつまんで流麗な所作でカーテシを決めると、アイリスと僕に挨拶をしてくる。

 状況は飲み込めていないのだが、どうもアイリスが僕のことを貴族科で風潮してるみたいなんだ。それもこれも良い噂で。

 田舎者のクソガキを貴族の間で布教して、どういうつもりなんだか。一体、何がしたいんだろう? アイリスは?


 まぁ〜〜そんなことはどうでもいい。悪いように思われてなければなんだってね。


 そんなことよりもメシだメシ!! 


 今はアイリスが用意した特別な個室に向かっている最中だが、前回はここで邪魔者が立ちはだかった。



「ウィル? なにキョロキョロしてるの? みっともないわよ?」

「……ふん! なんとでも言え! 是が非でも邪魔者を排除しなくちゃいけないんだ」

「……?」



 アイリスが僕に呆れているが、構うことはない。


 今日は何としても邪魔されたくないから警戒を怠らないぜ!


 と、その時だ。



「——あ!? ウィル〜〜〜〜!!!!」



 後方から僕の名前を大声で叫ぶ人物がいた。



「——ん? なんだって…………ッ!? ——グベェエ!!??」

「——ドォーン♪」



 掛け声と共に僕は吹き飛ばされる。地面を跳ね、やがてゴンッ——と、鈍い重低音。後頭部を床にぶつけて視界がグルグルと回る。

 体当たりを受けた腹部がズキズキと痛む。盗賊さんに強く蹴られ、その痛みがまだ残っているというのに!? 突進を受けたのが何故ピンポイントでそこなんだ!?

 この世で唯一の神器所持者である僕にダメージを負わせるとは——一体誰が……?



「あははは〜〜♪ ウィル面白い顔〜〜♪」



 ようやく視点が定まったかと思えば、僕に馬乗りになってケラケラと笑う緑の犬——ヴェルテの姿がそこにあった。





 


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