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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第2章 ダンジョン試験 頼れる相棒は素っ頓狂な犬 救うは囚われ令嬢
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第84話 さぁ 帰ろうか?

「——風とは……こう使うのだよ」

「——ッ!?」

「堕ちろ——爆発的に吹き下(スーパーセル・)ろす破壊の気流(ダウンバースト)

「——ッグッァア!!??」



 うわぁ〜〜なんだよ。今の魔法?


 遠くから見学させてもらったけど……アイリスパパの怒りの一撃、半端ないな……?


 黒服の男を、赤子の手を捻るように簡単に叩きのめしたよ。やっぱり校舎裏で会った時、激昂されて斬られてなくて良かった。そうしたら確実に命はなかったな。あっぶねぇ〜〜。


 僕が追うことのできなかった加速接近を見せた黒服の男だったが、アイリスパパはそんな彼以上の速さで男を翻弄。あっという間の攻防で地面に沈めた。

 最後の魔法の一撃も、あれは大技の魔法……というよりは細かい魔法を何重にも重ねて圧縮したのを落としてる感じだな? 


 ——マジ? あんな芸当、人間にできるんだな。


 神器があれば可能性はあるけど、生身1つであれって……普通、脳が焼き切れて、いい感じのミディアムレアになっちゃうぞ?! 恐ろしや〜〜!

 それと、黒服男以上の速さの移動だけれど……あれってどうやってるだろ? 観察しても、まったくわからん。たぶん、魔法は絡んでるんだろうけど。

 おそらく、アイリスパパもレベルはMAXだと思うんだ。でも、同じレベルMAXでも、ここまで差が生まれてしまうのか? はぁ〜〜戦闘って奥が深い。


 まぁ……今日はいい勉強になった。


 僕は【神器】という秘密兵器を持った唯一の人間だけど……レベルは雑魚だし、戦闘技術もまだまだど素人——もっと頑張らないとダメダメだな。いい教訓になったよ。



 はてさて……



 そろそろ僕はお暇させてもらおうかな。

 アイリスパパがここに居るってことは、つまり僕の誘い蝶(御守り)が無事発動したってことだ。なら、アイリスも無事ってこと。僕はもう用済みだろう。

 アイリスパパは何やらキョロキョロしてるし、このままじゃ見つかりかねん。見つかってしまう前にとっととずらかろう。


 それに……


 早くヴェルテちゃんを迎えに行ってやらなくては——


 寂しくてワンワン泣いてないといいけど……













「うわぁ〜〜〜〜!! ウィル〜〜がえっできだぁ〜〜〜〜!!」



 うわ。本当にワンワン泣いてたよ。


 通路に帰ると、ヴェルテは僕の姿を見て飛んで抱きついてきた。膝をついて足にしがみついてワンワンと泣く。



「遅いよぉ〜〜ウィル〜〜!!」

「あぁ……ごめんごめん」

「置いていかれたかと思ったぁ〜〜!!」

「はは……置いてくわけないだろ?」

「よがっだよぉ〜〜!!!!」



 ほう。そんなに僕が恋しかったか……可愛い奴め〜〜!



 ——グゥ〜〜♪



「——うわぁ〜〜ん!! お腹すいだ〜〜あぁ〜〜!!!!」



 違うな。これ、空腹を嘆いているんだな。はぁ〜〜実に彼女らしい反応ですこと。


 僕は、ため息をつくと目の前でピョコピョコ動く耳がついた緑の頭を撫でる。



「さぁ、帰ろっか……ヴェルテ?」

「……うん!! お腹すいた!!」



 今日は本当に疲れた。合理主義な僕だけど……らしくもなくアグレッシブに動いてしまったよ。これも周りの人間の影響かな?



 ——グゥ〜〜♪



 僕もお腹すいてきたよ。


 さて……試験終了も後数分——早くダンジョンを脱出しよう。岩や瓦礫を眺めてばかりで疲れたよ。



 さぁ〜て……帰ろう。












 ◇


「セクル——今戻った」

「——オヤジ!?」



 セブンスは遺跡の出口に戻った。

 怪しい視線は気にはなったものの彼はその正体を追求しなかい。特に悪意、敵意を感じなかったため無視をしたのだ

 それよりもセブンスには大切なものがあるからして、謎の視線にかまけてる暇などない。



「アイリスはどうだ? 大丈夫か?」

「あぁ……少し俺の魔力を注いだら顔色が良くなったよ。打ち身が身体中にあるが、息はしっかりしてる。よく眠っているよ」



 それはセクルに抱かれ寝息を立てる娘の心配だ。

 セブンスは娘が気絶する寸前に見せた必死な様相の懇願に、堪らずその願いに応えて示す地点を目指したが、そこにいたのは激昂する男だけだった。

 暫く周囲に意識をめぐらしたが少年の姿はなく、早々に諦めてこの場に戻ってきている。彼の中では娘の心配の方が最優先だったのである。



「ところでオヤジ……そいつは?」



 セクルは戻ってきたセブンスの手に引き摺られた1人の男の存在が気になった。



「あぁ……アイリスを攫った連中の首魁だ」

「そいつが?!」

「連れて帰って情報を吐き出させる」

「そうか……コイツ、ただじゃ済まさねぇ……洗いざらい吐かせてストライド家を敵に回した事を後悔させてやる!」

「うむ。手は抜く必要は無い。全力でやれ」

「ああ! わかった!!」



 気を失った男はセクルに預けた。彼の今後は地獄も地獄——公爵家の全力の拷問が待っている事だろう。


 そして……



「スゥ〜スゥ〜……」



 手の空いたセブンスは気持ちよさそうに寝息を立てるアイリスを抱き上げる。


 

「では……帰ろうか……」

「あぁ、そうだなオヤジ」



 目的は達成した。


 この場に用を無くした騎士2人は、ゲートの前に立ち輝く門を潜って行く。





ウィリアVS変態首領とのバトル終幕です!

良い戦闘描写ができてるか、ちょい〜と不安な部分もあるんですが……楽しく読んでいただけたなら嬉しいです。どうだったでしょうかね?

戦いの決着は『首領の腕を斬り落とし、その隙に離脱して後は丸投げ(アイリスパパに)』——という終わりにしましたが、ウィリアは最後まで戦わない主義者のゲスっぽい主人公なのでこれでヨシと思ってます。

ウィリアの勝利条件はアイリスが逃げ出す時間を稼ぐこと——ですのでウィリアの中では勝者だと感じていることでしょう。もう大勝利ですね。

さて……【僕だけは知っている……】の2章終幕は『第88話』を予定しております。

あと4話お付き合いください!よろしくお願いします!


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