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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第2章 ダンジョン試験 頼れる相棒は素っ頓狂な犬 救うは囚われ令嬢
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第80話 来訪者の怒り

「——クソ! クソォオオオ!! あの餓鬼ィイいい!! 俺の腕を斬り落としだけで逃げやがったのかぁ嗚呼!! クソが!? あんなのただの雑魚だっていうのに——ふざけんなよォオオ!!」



 黒服の男は叫び、辺り一面に暴風が荒れる。周辺の遺跡を細切れの残骸へと変貌させ、彼に近づくことさえ難しい。

 そんな中——





「もし——そこの君……ちょっといいかね?」





 荒れ狂う暴風を歯牙にもかけない男が1人……怒り狂う男に対して声をかけた。

 ゆっくり、確かな足取りで歩き——暴風の斬撃は男に触れると霧散する。髪や衣類は強風に靡く気配はなく、ただ静かなそよ風の中の散歩のように首領の男へと近づいてくる。



「——あん? なんだ。オッサン——? 俺は今、ムシャクシャしてるんだ。俺の腕をこんなにした奴を今すぐ探し出さないといけないんだよ! お前に構ってる暇はねぇ〜〜なぁ〜〜?」



 ただ、突然の来訪者に怒る男は煩わしそうな返答をする。



「ふむ。まぁ……そう言ってくれるな若いの——。私もな……用があってここを訪れているんだよ」

「——はぁあ?」



 だが、来訪者の男は静かだった。ゆっくりとした口調で丁寧に喋る。



 その様子は——



 どこまでも静かに……








 怒っていたのだ。








「お前が——首領なのかね? 黒服の男よ。アイリスを攫った集団の?」

「…………オッサン。誰だ?」

「ストライド公爵家——当主……セブンス=ストライド。アイリスの父親だよ」

「あ? あぁ……パパのお迎えってわけか……。なんでこの場所がわかったのかなぁ〜〜?」

「何……蝶が教えてくれたのでね」

「は? 意味がわからないんだが?」



 突然の来訪者——【セブンス】。


 アイリスの父親であり、ストライド公爵家の当主の男である。



 首領である黒服の男は一旦怒りのボルテージを鎮静させると、頭を残っている右手で掻く。来訪者が現れたことを呆れて疑問に思っていた。


 だが……



「まぁいい! お前に構ってる暇はねぇ〜〜んだ!! とっとと消えろやぁ嗚呼ッッッ!!」



 そんなものは一瞬で、再び暴風吹き荒れる。



「そう言ってくれるな。君に用がなくとも、私には用があるのだよ」



 黒服の男は、ロングソードに風を纏わせて薙ぐ、不可視の斬撃がセブンスに襲いかかる——


 と、思いきや……



「ふむ。風の扱いが全然なってないな」

「……はぁあ?」



 気付けば、セブンスは黒服の男の背後にいた。突然、セブンスの姿が視界から消え、男の口から思わず声が溢れる。

 中腰で手は剣の柄を握りしめ、数センチ引き抜かれた刃をカチンッと収めている。



「——俺の風が斬られて……!?」



 今、何が起こったかなんて……まったく黒服の男には見えていなかった。

 ただ唯一、背後から鳴った納刀時の金属音を拾って予想を立てて喋ったに過ぎない。



「——風とは……こう使うのだよ」

「——ッ!?」

「堕ちろ——爆発的に吹き下(スーパーセル・)ろす破壊の気流(ダウンバースト)

「——グァァァアアアアッッッ!!??」



 突然……男は不可視の物体に押しつぶされるように地面に突っ伏した。

 周辺の地面もろとも陥没し、石畳を砕いて沈む。

 この時——彼は辛うじて息はあるが、気流の衝撃をもろに食らい、苦痛に叫んだと思えばたちまち気を失ってしまった。



「私の娘を傷つけた罪——こんなモノでは済まさん。覚悟してろよ」



 そんな地面に沈む男を見下すように鋭い視線を向けるセブンス。平静を装っていても……彼の抱える怒りはこんなモノでは済まない。

 黒服の男の今後は地獄のような日々が待ち受けていることだろう。



「さて……」



 セブンスは男が起き上がらないことを確認すると、周辺の気配は探るかのように周りを見渡す。



「…………」



 しかし、そこには風穴の風音だけが響くだけで、生き物の気配は感じられなかった。


 が……



「ふむ……見られているか?」



 と——セブンスは直感していた。


 

 だが……



「悪意は感じられないか……」



 その視線からは悪意は感じない。

 視線の正体を探ることなく、地面に沈み気絶した男の服の襟を掴むとズルズルと引きずっていった。

 彼には、謎の視線を探るよりやらなくてはいけないことがあるのだから……

 


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