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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第1章 突然知る驚愕事実 僕の胸には野望が芽生えるも 邪魔をするのはアグレッシブ令嬢
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第7話 ダンジョンクリア!

『——ピィピャ!!(アディオス!!)』



 スライムは悲鳴を残し蒸発した。なんとも潔さを感じる悲鳴だった。



「うん! 初めてにしては良好だな。自然に神器は良く馴染むし。何より、すっごく楽しい!!」



 で、手に残る感触は達成感だ。鳥肌が立つぐらいに楽しませてもらった。



 今見せた瞬間移動だが……これは神器に備わる能力——これを【スキル】と呼ぶ。一応、魔力を使った魔法の類だったりする。

 僕が持つ、レイピアの名前は『虚』と『影』——スキル【虚影】を使うと2本のレイピア間を瞬間的に飛び距離を詰めることが可能なのだ。


 と——僕は、さっきから我が物顔で説明をしているが……「なんで、オマエいきなりそんな技を使えるんだよ!?」と疑問に思うことだろう。


 必然的な疑問だ。僕だって逆の立場ならそうツッコミたくもなる。


 まぁ、ぶっちゃけ答えを言ってしまうと……神器を手にした特典のような現象なんだよね。


 2本のレイピアの名前が【虚と影】であるのだとか……スキルの使い方。そして、スライムに命中させて見せた【投擲】と高速で繰り出した【刺突】。

 僕は、人生で戦闘の経験は一度たりともしたことがなかったが、それでもレイピアの使い方が様になっていたり、スキルの発動を見事にこなしているのは……全ては神器のおかげなのだ。

 少し、不思議な体験なのだが……神器から、僕の頭の中に情報が無理やり叩き込まれたような感触と言えばいいのか? 自然と神器を握ると知識が僕に流れ込んでくる。だから、初心者でもある僕は、普通に武器を扱えているのだ。


 とは言っても……


 僕のレベルはまだ1だ。


 簡単な武器の扱いと技量技【投擲】【刺突】——あとはスキル【虚影】だけしか扱えない。


 後は【魔法】だが……


 これも、レベルを上げないとなんとも……


 

 因みに——



 今し方、見事な断末魔を奏でてくれたスライム達だが……ここ、『夢境』に登場するモンスターは特殊で、倒しても僕のレベルの値は一切上がらない。

 本格的にレベル上げをするには、この世が『ラストダンジョン』だと勘違いしているあの塔に行かなくてはならない。



「——少し、考えてみるか……」



 そもそも、僕は溢れる好奇心を抑えられずに、お試し戦闘にきているのだが……そもそも、バトルジャンキーではない。

 今も、しみったれた田舎のガキ代表として、野山を駆ける思いで夢境を訪れているだけで、冒険者ごっこがやりたいわけではないのだよ。

 冒険者のダンジョン攻略は、一攫千金、金になる職らしいが……それでも、僕は命を張ってまでやりたい仕事ではない。



「……仕事は平々凡々——普通が1番。そうだな〜〜パン屋にでもなろう。適当なパン屋に弟子入りして、住み込んで……売れ残りのパンを食べて生きていくんだ。僕の血肉は小麦を求めている。そんな気がする」



 と、くだらない事を呟いていると——



「——ッ」



 突然、目の前に光の奔流が出現した。僕はそれに気づくと迷う事なく、その中に飛び込んだ。


 すると……


 気がつくと藪の中——ちょうど背後には光源を失ったゲートが佇んでいる。つまり、夢境を出たのだ。これで、この小さなダンジョンはクリアとなる。



 で——戦利品が……



 スライムが落としたちっさな輝く石。これを魔石と言う。


 僕は、それをポケットから取り出すと……迷う事なく神器に押し当てる。





——マスター。

 >>>ポイントが貯まりました。

 >>>2ポイント

 >>>割り振ってください。





 すると、刃の表層に文字が浮かぶ。



「う〜ん。じゃあ、魔力に全部——っと」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    神器【虚と影】 Lv.17


 神器所持者【ウィリアム】 Lv.1


  攻撃  Lv.1 技量  Lv.1


  魔力  Lv.5>Level up!>Lv.7


  魔防  Lv.5 速度  Lv.1 

  抵抗  Lv.1 運命  Lv.1


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 

 夢境は装備者のステータスは上がらないかわり、神器のレベルを強化できる。今のように、モンスターから生成される魔石を食わせることで数値を上げれるのだ。魔石をポケットの中に忍ばせたままにしても仕方がなかったので、とりあえず食わせてみた。





——魔力の値がLv.7になりました。

 >>>新スキル【影縫い】を覚えました。

 >>>新スキル【影移動】を覚えました。





 すると、どうやら新しい技まで覚えたようだ。


 まぁ、どうでもいい話である。


 結局、僕は冒険者にはなるつもりがない。この神器だって周囲に知られてしまったら、エライことになりそうだ。

 この事実は『僕だけが知っている』に留めておいた方がいいだろう。

 四方八方から質問責めに合うなんて絶対嫌だからね。


 めんどくさい。



「今日は、羽目を外しちゃったけど……たまの息抜き程度にしておこう。いくら、冒険者が一攫千金を狙えるとしても、命を張るなんてね僕には無理だし。まぁ、チュートリアルダンジョンだけなら、そこまで危険性はないのかも……しれない……けど……」



 僕はこの辺で寮の自室に戻ろうとした。寮の門限はうに過ぎているし、夢境に勝手に入っていることが学園にバレるのはマズイ。


 でも……



「…………」



 ふと、口から漏れた言葉に思うところがあって、僕は足を止めた。


 なんだろう? 


 僕はとても素晴らしい立ち位置にいるのではないかと思えてしまったのだ。

 


 

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