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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第2章 ダンジョン試験 頼れる相棒は素っ頓狂な犬 救うは囚われ令嬢
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第71話 令嬢の思いとは……?

 突然、目を開けたらウィリアがいた。

 まぬけたつらを覗かせる彼の顔。それがすぐそこ。

 散々後悔の念に苛まれた私だけど……思わずムッとした。

 目覚めたら、チンチクリンが顔を覗きこんで、オマケに手まで握ってたのよ? 直ぐに『なんで?!』って思ったわ。

 私の思考はたちまち疑問で埋め尽くされた。


 それで理由を聞いてみれば……



『たまたま』


 

 ですって……なにそれ??


 意味が分からない。


 ただ……まぁ……意味は、わからないんだけど……


 そもそも、ウィリアに聞いた私も馬鹿だった。

 彼に質問してもまともな答えが返ってきた試しがないもの。

 私は知っている。彼がまともな返答するはずないってね。

 とりあえず、いつもの彼だって、諦めて執拗に問い詰めたりしなかった。

 疑問は残るんだけど……ウィリアならありえると、な〜んか納得してしまったのよね? 変な現象。


 だけど……


 私の胸の奥では、どこかホッとしてた。

 こんなのでも一応は知り合いな訳だし、それが理由なんでしょうね。

 それに、彼は私を助けてくれたって言うじゃない。

 私、上半身下着姿だったけど、ジロジロ見るでもなく外套を私に差し出してきた。あのアルフレッドとは大違いな反応だわ。


 意外と紳士なのね? って感心した。


 ただ一方で私にまったく興味がないって言ってるようなものだから、この点はムカつくんだけど。ここから無事、脱出できたら1発引っ叩いてやらないと気がすみそうにないわね。

 

 だけど……


 なんだかんだ言って、ウィリアには感謝してる。これは本心よ。


 だから、彼の背中を追ってる最中。私はそんな彼に「謝らないと」って思ってた。散々困らせてしまったもの……「ごめんなさい」って……ずっと彼に言いたかった。


 でも……


 わ、私って……何事も卒無そつなくこなして、怯えを感じた試しがないの。自慢じゃないんだけど。本当に自慢じゃないからね! 可笑しなだと思わないで!

 だけど、ウィリアに声を掛けようと思ったら、なかなか言葉が出てこなくて……何故か勇気が出せなかった。心臓も、ドクドクと煩く、これは緊張してるんだって思った。

 あのウィリアに対してよ? それに「ごめんなさい」っていうだけ……これの何に緊張しろっていうのかしら? 本当に訳の分からない現象。


 それで……


 いざ、勇気を振り絞ってウィリアに声をかけた。言葉は辿々しくなってしまったけど、なんとか彼を呼び止めた。こんなの私らしくないよね。


 でも、あとは「ごめんなさい!」って言うだけ……


 何も難しいことはない。簡単なこと……


 だというのに……



『あぁ〜〜そういうこと?』



 先にウィリアが何かに気づいたかのように話しかけてきた。


 ——ッえ?! どういうこと??


 そして、彼の次の言葉で私は謝罪どころじゃなくなった。



『トイレ行きたいの?』

『……は?』



 そう……この言葉で、謝りたいって気持ちはすぐ何処かへと飛んでいってしまった。



 ——訂正よ!!



 ウィリアはやっぱり紳士的ではありません。無頓着なただのガキンチョよ!!


 まったく! デリカシーのカケラもない!! 何が『トイレ行きたいの?』よ!! 馬鹿なんじゃない? 普通、女の子にそういうこと聞く?? 


 ——嗚呼! もう!! ウィリアの馬鹿!!!!


 本当にこの男は嫌い!!





 って……怒りに身を任せて道を急いだ。




 

 そして……





『——ッアイリス! 危ない!!』






 私はまたしても彼に助けられてしまった。


 

 ウィリア……うんん……《《ウィル》》に……



 彼……自分が1番大切だって振る舞って自己中心的な男かと思ってた。

 けど結局、なんだかんだ言って目の前で苦しんでる人を助けずにはいられない優しい人だってわかった。

 瓦礫に沈む彼を見た時——とてつもない恐怖が私を襲った。



 もし……彼が死んでしまったら……?



 私はまだ「ごめんなさい」を伝えてない。

 そして何よりも「助けてくれてありがとう」って……彼に言えなくなって一生後悔することに怯えた。

 私は……また1人……不幸にさせてしまう人を増やすところだった。



 だから……



 私はウィルの為に早く助けを呼んでこなくちゃいけない。


 遺跡の通路を走り、遠くに見える壁の亀裂を目指して……



「ウィル。待ってて……今すぐ助けを呼んでくるから——!」


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