表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第2章 ダンジョン試験 頼れる相棒は素っ頓狂な犬 救うは囚われ令嬢
67/181

第66話 誰この人?

 そう。何が“ハズレ”ているのかというと、僕が大人しく隠れているわけがないということだ。

 決して“頭のネジ”が〜〜とかじゃない。

 今、一瞬でもそんなことを考えた奴がいたなら、今すぐ名乗りを上げろ——ぶん殴ってやる!!



 だってさ。考えてみてくれ。



 アイリス嬢は、無事に出口を目指すように誘導した。

 僕の()()()も持たせた。

 これって、当初の予定通りなんだよね? 

 なら、いいじゃん——!! って思うでしょう?!


 

 問題があるとすれば……アイリスに見つかっちゃったことだけど……



 ——まぁ、たぶん大丈夫だ!



 この後、アイリスの采配で僕の救出に来る者は徒労に終わるだけだ。

 そして、僕は何食わぬ顔で学園で学業に勤しむのさ。

 きっと彼女は今のウィリアを“夢”か“幻”の類だったのだと勘違いするはず……うん。そうに違いない!

 現実逃避してるわけじゃないからね? ただ僕は彼女を信じるだけなのさ!


 それにさ。僕には帰りを待ってる奴がいるじゃん。


 ヴェルテちゃん……


 彼女を置き去りにするわけにもいかないしさ。

 どうする? 寂しすぎてキャンキャン泣いてたりしたらさ。そんなの可哀想じゃないか。

 ここは早く彼女の元に戻って、頭を“わしゃわしゃ”してやらんと——決してモフりたい衝動があるからじゃないからね? 僕をなんだと思ってるんだい?


 さてと……



「…………」



 僕は、元来た道を逆走しようと思ったんだ。



 だけど……



 ちょっと待ってくれ。



「この瓦礫って……なんで崩れてきたんだ? それも、道を塞いで……」



 僕は瓦礫が崩れて塞がってしまった通路を見つめた。そしてちょっと近づいてみる。


 なんで、ここまで僕が瓦礫を気にしてるのか? 


 普段の僕なら、こんなの過ぎ去ったことだって、すぐ意識の外へ追い出してしまう事象なんだけど……どうしても気になっちゃったからさ。


 と、言うのは……


 僕の居るこの遺跡だが……観察してみた感覚ではだいぶ放置されてしまった場所なんだと思う。長い年月をかけて地下に沈んだような? まぁ、僕は考古学者じゃない。詳しくないし、知ったかぶりでそれっぽいと思ってるだけなんだけど。

 でだ、この通路は狭い通路だが、それでも通れなくなるまで瓦礫が積み上がる。これって、相当なことだろう?

 なのに、これが急に起こった。まるで、アイリスを狙ったかのようなタイミングでだ。

 いくら古く脆くなっていたとはいえ、いきなり崩れるのか?

 崩れるんだったら、なんか予兆のようなモノがあってもいいんじゃないかと思うんだ。けど……僕の記憶ではそんなのなかった。

 僕が捉えたのなんて……視界に映った光の線と……『ピュッ』っていう音だけ……


 あれは一体?



「あぁ……君かい? 彼女を逃してくれたのは……さぁ〜〜?」


「——ッ!?」



 急に男の声が耳元で聞こえた。僕は驚いて後ろを振り返る。


 すると……


 そこには1人の男が居た。黒い装いの茶色短髪の男だった。ポケットに手を突っ込んで、気軽な雰囲気で突っ立っていたんだ。

 おいおい……マジかよ? まったく音が聞こえなかったんだけど……!?



「君、何処からここに入ったの? それとダメじゃないかぁ〜〜お姫様を逃しちゃ〜〜。アウトローである俺たちの営業妨害だよ〜〜?」



 なんだ? このお兄さんは……?


 腰に2本のロングソード……見た目は一見冒険者のようだ。だけど、黒いコートのような衣服からは殺し屋のような印象も受ける。あまり関わりたくない人物だ。

 クソガキと殺し屋を引き合わせるとは……運命ってユーモラスだよね?



「姫を助けにきた英雄なのかな、ボクぅ〜? いや〜〜素晴らしいよ! その心意気。俺は感激で涙が出ちゃいそうだよ〜〜!」



 てか……さっきから気持ち悪い。なんなのこの人……言葉を伸ばす独特の喋り口調といい、辺鄙な遺跡で楽しそうに語る姿といい。とてもお友達にはなりたくない感じだ。


 ……え? 同族嫌悪??


 アッハッハ〜〜誰だ今そんなこと思ったやつは! 僕は人畜無害なクソガキだぞ!? 何処が気持ち悪いんだ!! 泣いていい?!



「……で、誰ですか? あなた……」


「……ん? 俺かい? 俺は……」



 とりあえず、コイツの正体だ。音もなく現れたことから、只者じゃないことは分かる。

 僕だってね、のほほんとしてるけど……決して警戒を怠ってたわけじゃないからね? 神器のレベルアップの恩恵で、技量や速度が強化され副産物で感覚も強化されている。だと言うのに、この男は僕の感覚に一度たりとも触れることはなかった。

 気づいたのは、耳元で囁かれたのが最初だったからね? 

 これ……こっそりと近づかれて、刺されたりしたら終わってたな僕……まぁ、見た目チビでクソガキだからナメてくれたんだろうか? 


 あぁ、よかったクソガキで……いや、よくねぇ〜か?



「いや……やめておこう。どうせ言ったって意味ないからさ」


「……?」


 

 あら? この人、正体明かさない? 何が意味がないんだろうか?



「——空気の破裂現象(エアーブラスト)



 ……は?



「だって……今から、死んじゃう君に自己紹介したって意味ないだろ〜〜?」



 男が『エアーブラスト』と呟いた次の瞬間——僕の視界から男が消えた。


 いや……


 消えたどころか……僕の視界はグルグルと回転を始めた?


 ……いやいや!?


 回ってるのは僕!! 吹き飛ばされて…………!!??




 ——ドォォォオオオンッッッ!!!!





 僕は遺跡の壁に激突した。



 壁を突き破り、たちまち周囲に砂煙が舞ったんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ