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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第2章 ダンジョン試験 頼れる相棒は素っ頓狂な犬 救うは囚われ令嬢
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第51話 あるはずのない人影

 確かに、ここに積まれた鉱石の塊は10キロにも及ぶ……これを学生2人が担いで帰るのは辛い。僕が担いだリュックサックも中身は冒険者用のアイテムでいっぱい——これらを捨てて、鉱石を持っていくのもできればしたくない。もったいないしね。そもそも、カバンの底に穴が空いちゃうよ。鉱石が重すぎてさ。


 で、どうするか?


 それは、こうだ——



「う〜〜ん、ほいっと……」

「——うわ! 消えた!!」



 僕は神器の刃を影に刺した。自分のね。影は墨をテーブルにこぼしたかのような広がりを見せやがて鉱石の山に浸る。すると……ズブズブと鉱石は沈んで消えてしまった。まさにイリュージョン。ヴェルテが驚くのも無理はなかった。

 実は……神器ってね。収納機能もあるのだよ。ほんとマジ便利。影の中に飲み込まれる光景は、たぶん僕の魔力の性質が原因だろうが、ちょっと格好付けすぎだろうか? でも、見せびらかせるもんじゃないし、まぁいいか。



「あれれ? ちょこっと残ってる?」

「それは体裁(提出)用だ。今すぐコレだけ担いで帰るぞ」

「——うん! 帰ろう! 私が持つね〜〜♪」



 そして、集めた鉱石の残り2割ぐらいはその場に残す。これは提出用だ。ヴェルテが持ってくれた。彼女はヒョイッと持っていたが、ようやく獣人としての力を発揮してくれたようだな。


 さて……


 時間も頃合いそろそろ帰るとしよう。










「……お肉〜お肉〜大量ゲット! お肉〜お肉〜一杯誤飲〜♪」



 そして、僕とヴェルテは通路を引き返す。


 69階層の隠しゲートを再び潜ったあとは2人並んで通路を歩いた。この間、ヴェルテは先ほどの歌を口ずさみご満悦だ。大事そうに青魔法石の塊を抱きかかえてルンルン——なんならスキップを時折おり混ぜ飛び跳ねるほどだ。

 この時、歌詞が違うことには触れてやるな。ツッコミたい衝動はあれど、空気を読むことだけはピカイチな僕は彼女の喜びは当然理解してるからこそ何も言わないのだよ。暖かく見守ろう。人はこれをハードボイルドと呼ぶ…………うん、違うかな?


 と、そんなくだらないことを考えながら通路を歩いてた僕だが……


 この時——突然……



「……ん?」



 おかしなモノを見つけてしまった。


 それは通路にできた壁の割れ目……ヒト1人は通れるほどに崩落してしまった割れ目だが、眼下には崩れた遺跡のようなモノが見下ろせる。

 これは、69階層に向かっていた行きの時にも一瞬眺めた景色だ。僕も何気なく、なんなら帰り道の目印のように、この通路の割れ目を眺めた。例え、道は一本道だったとしても、同じような見た目の景色が続けば人は自然と不安を覚える。それを払拭する意味でも、確実に前へと進めている実感として、僕の視線は反射的に遺跡を俯瞰ふかんして眺めていたのだ。


 だが……



「……人影?」



 おかしい……


 今、僕は遺跡の影に一瞬、人影のようなモノを見つけた。こんなところに人がいるのはおかしいのにだ。



「お肉〜お肉〜…………ん?! ウィル。どうしたの??」



 ヴェルテは振り返って僕を心配する。その訳は、僕は立ち止まっていたから。通路壁の割れ目に手を置いて、遺跡をよく観察していた。

 柱だとか石畳の通路だとか、明らかに人の手が加えられた形跡のある遺跡だが、そのほとんどは崩落している。ダンジョンである塔を囲む、かつてあった古人の形跡だと思えるが、幾星霜と月日が流れるうち、地下に沈んだのだろう。だが今は、時代に忘れられ地中深くに眠る遺跡と成り果て、人々の記憶からもその姿を消した。噂ですら聞くこともないから、世間一般的に広まっているはずがないと思われるが……


 僕は……()()を見たのだ。



「ヴェルテ」

「……ん?」

「ちょっとここで待っててくれる?」

「——え!?」

「少し気になることができた。なんだったら、先行ってて……」

「……え!? 先に行けって……この先、崖なんだけど——ねぇ!? ちょっと!!」



 僕は大きな荷物をその場でおろし、気づくと割れ目を飛び出した。遺跡に向かって飛び降りていた。


 あの人影はなんだったのか……その正体を突き止めるために……


1話抜けていたことのお詫びとして……今日はもう1話投稿。

本当に申し訳ありませんでした。

どうぞ、お楽しみください。


さて……不穏なムードが出て来ましたが……次回からちょっと雰囲気が変わります。

ヴェルテちゃんはしばらくおあずけ〜

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