表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第1章 突然知る驚愕事実 僕の胸には野望が芽生えるも 邪魔をするのはアグレッシブ令嬢
30/179

第29話 どうするの これ?

「あのぉ〜ティスリさん。ちょっといいですか?」


「……はい」



 僕はこの時、メイドのティスリさんだけを呼んで離れた場所で話をする。



「これ、どうにかなりませんか? 僕は別にアイリス様を奴隷にしたいだとか、一切思ってないんです。この決闘も非公式のものであるなら今から無効になりませんか」



 と聞く。


 事は起こってしまった後だが、妥協に留められないのか参考人から聞こうと考えたんだ。


 だけど……



「申し訳ありませんが……なりません」



 嘘だろ。彼女は速攻否定してきた。あなたアイリスの侍女だろう? 薄情すぎない?



「はぁぁ……」



 その時——ティスリは大きくため息を吐く。憂いを外に吐き出すかの様に……



「本当、お嬢様には困ったものです。今回の決闘も、いきなり言われて『何考えてるんだ。この人?』って速攻で疑問に思いました」



 そして、凛とした姿を消すと妹を呆れる姉かの様に愚痴を吐露し出した。この人……淡々と支えるような冷たい印象だったが、この時のティスリさんは意外と人間味を内包している。こちらの方が本来の彼女なのか。先ほどまでの彼女は仕事スイッチの入ったティスリさんだったようだな。



「なら……」


「ですが、いくら非公式の決闘とは言え、ウィリア様の提案は難しいでしょう」


「……え? なんで……」


「できる事ならあなたの提案、今すぐお受けしたいですよ。幸い、あなた様を観察させてもらった感覚では、お嬢様を恣意的しいてきに見ていないようですし。見届け人のお二人のご学友も、一般科の生徒で口止めをすれば問題はないでしょう」



 だったら、問題ないようだけど。



「ですが、お嬢様がお認めにならない」


「えぇ〜〜……」


「非公式でも決闘は決闘です。公爵令嬢を奴隷にするのは大問題ですが……これをお嬢様の口からしてしまっている。通常では、こんな条件は認められませんし、このままでは御当主様が飛んできてしまいます」



 ……嘘だろ? 凄くめんどくさい。



「ですが、成立してしまったからには覆りません。ウィリア様の気遣いは痛み入る申し出で、今すぐにでも私は実行したところですけど……お嬢様、あれで凄くプライドが高いから、絶対に受け入れません。自分で言っておいて反故にする人じゃないですからね」


「うわ……凄くめんどくさい女……」


「私も同感です。めんどくさい年頃なんです。あ、今の言葉……不敬罪に該当しますが、聞かなかったことにしといてあげます。状況も状況ですし、私はウィリア様に同情してますからね。お口にチャック。それに、今のお嬢様は奴隷ですから」


「そ、その言葉もどうなんですかね?」


「あら嫌だ。私ったら……なら、これで共犯です。2人だけの秘密ですね♪ ふふふ……」


「…………」



 いや、笑えないんだけどティスリさんや。あなたアイリス嬢が心配じゃないのかね?



「ですが、お嬢様を心配してます。これは本当ですよ」



 おっと……心の声が漏れていたのだろうか? ティスリさんがピンポイントな発言をしてきたぞ。



「私はお嬢様が小さい頃から見守ってきました。失礼かもですけど、妹の様に思ってるつもりです」


「だったら……あんな形でアイリス様の負けを言い渡さなきゃよかったじゃないですか? 適当な理由で僕を負けにすれば……」


「ダメですよ。お嬢様が大切なので彼女には真摯に応えないと……彼女が私に立会人を求めたのなら、それを全力でまっとうしなくてはお嬢様に失礼です」


「…………」


「でも、お嬢様を変な方だと勘違いしないでください。彼女はあれでとても人思いなんです。今回の決闘も……病気で遠くに行ってしまった奥様を思っての行動なんです」


「……え」


「あの、ラストダンジョンの最上階に登ると願いが叶うとは聞いたことありますよね?」


「まぁ……」


「お嬢様、あれを真剣に信じてて、願いを叶えるんだって……奮闘してるんです」


「…………」


「あなたを私のモノにすると言ったのも、本当はウィリア様の能力に希望を見出したからなんです。ウィリア様は珍しい能力を使うそうですね。あんなに楽しそうに他人の話をするお嬢様初めてでしたよ」



 なんてこと……アイリス様はそんなにも健気に……全ては病気で遠くに行ったお母さんのためだったなんて……あら、涙が出ちゃう。


 と、そんな冗談はどうだっていい。僕の涙は枯れてるんだ。


 で、なんで僕はこんな話を聞かされているんだ。これでどうしろって言うんだ。



「あのぉ……話はわかりました。で、それで彼女をどうしたら……」


「う〜〜ん、と……可愛がってあげてください♪」


「おい、冗談も大概にしろよ。心配する侍女から出る言葉じゃねぇ〜ぞ?」


「……テヘ♪」


「おいおい、それで誤魔化せると思ったら大間違いだぞ!」



 結局、メイドと話しても何も解決にならん。正直、もうここだけで解決する問題ではないぞ。


 どうするんだこれ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
さっき考えてた引き分け理論ダメ元でもなぜ言わなかったのか…… 言うだけただじゃん?理想はうやむやにしてじゃあ命令一つに緩和、関わらないでねだけどせめて無かったことにって主張するくらい……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ