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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第1章 突然知る驚愕事実 僕の胸には野望が芽生えるも 邪魔をするのはアグレッシブ令嬢
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第27話 勝負決着?

 僕は1つ深呼吸、心を整えると柱の翳りから飛び出す。



「——ッ!?」



 すると、驚くようなアイリスの表情を捉えた。そんなに僕が飛び出てくることに驚くかね? そこまで臆病者に見えたのか?



「——ふん! 意外と勇猛なのね? だけど、悪手よ。格好の的だわ!」



 だけど、そんな様子も一瞬だ。すかさず対処に出る。手にした刀剣の柄を力を込めて握る。それは焔を放つ合図のようだ。



「——抜刀焔!!」


 

 僅か5秒にも満たない感覚で炎の一太刀がお見舞いされる。まさに、僕の予想通りだ。



「——ッ!? まさか飛び込んで!!」



 だが、僕には当たらなかった。前に飛び込むようにして焔の鋭い一撃を避けて見せた。そのままの勢いでアイリスに飛び掛かる。



「——アハ! 驚いた。だけど私はストライド公爵家の令嬢よ。なのに接近戦が不得意とでも思った? 残念——刀剣術だってね。十八番なのよ!!」



 アイリスは、驚愕を一瞬で忘れ、八重歯を覗かせ狂人的に笑う。これには、流石の僕も驚く他ない。彼女には畏怖の念が絶えないよ。本当に怖い……この令嬢。


 だけど……

 

 迎撃のために剣をすかさず僕に向けてきた。 


 そう、この隙を待っていた!



「ふふ……反応するわよね。やっぱり良い。実に良いわ〜ウィリア! あなたは私のモノ——私の野望のために一役買ってもらうわよ!」



 刃同士がぶつかり合う。金属質の打ち付ける音がダンジョン内部に響き渡り、近場でこれを聞いた僕を耳鳴りが支配する。

 と、同時——ノイズに混じってアイリスの笑い声まで聞こえて来る。

 近くで見た彼女の顔は、仄かに頬を赤くして興奮状態だった。


 うん……そう、興奮状態。


 すっごい怖いんだけど……折角の美人な顔立ちなのに、瞳孔を開いて笑う姿は、獲物を見つけた狼のようだ。



 拝啓——田舎のお父さん、お母さん、お元気ですか? 僕の方は凄く萎えています。都会はとっても怖いところです。貴族の令嬢がクタクタ笑いながら斬り掛かって来るの。もし生きて帰れたら……この武勇を詳しく聞いてほしいな。



 なんてね……



 もう怖すぎて走馬灯のように手紙をしたためてる自分がいるよ。気でも狂ったかな。


 だがな……


 僕は諦めてないよ? 


 ククク——散々好き勝手言ってくれたけどなぁ〜〜そろそろやり返させてもらおうか!



 ——ッパキン!!


「……え?」



 再びの金属質な音。驚き目を見開くアイリス。そりゃそうだ。だって彼女の剣が僕の剣の刃の触れた部分で折れたのだから……

 僕は、自身の持つロングソードに神器の魔力を流し込んだ。【魔装】と言う能力だ。神器のステータスを強化した際、【技術】と【魔力】に一定数のポイントを振り込むと授かる力で、その効果は武具の魔力コーティングである。まぁ普通は属性に弱い魔物に使う技なのだけど。

 アイリスの剣の刀身の素材は青魔法石だ。アレは魔力の塊のような鉄鉱石である。

 僕の魔力『影』には魔力の吸収効果があるため、魔力の塊である青魔法石を溶かすことで、“ナマクラ”へと変貌させてしまう。初授業で見せた鎧の破壊現象と同じだ。

 だから、アイリスの刀剣は刃の中腹でポッキリだ。


 と、同じくして……この瞬間には重要なポイントがある。


 刃が割れた音と共に僕は手を離さなくてはいけない。刃同士が打ちつけた衝撃が消えてしまう前に、まるで剣が折れた衝撃に弾き飛ばされたような演出だ。

 このタイミングで、剣が折れるのはいささか訝しがられるかもしれないが、そもそもお嬢の剣の扱いは褒められた行為ではない。

 あんな鞘の中に魔力を貯めて無理矢理射出するようなやり方、絶対刀身に負担がかかるはずだ。青魔法石は硬い金属ではあるらしいけど、連発多様の酷使は、刃を痛めつけていること間違いなしさ。その状態から、直後に刃同士を打ちつけたのなら刃が折れてしまうのも可能性としてはあると言う事……騎士ならば、武器の状態にも気を配るべきだよ。気をつけてね!

 って……折った元凶が何言ってんだと、冷ややかな視線が飛んできそうだからこれ以上は言わないでおこう。


 それでだ。


 僕の剣は、タイミングバッチリで手放したことで弾き飛ばされる。床でバウンドしてどっか飛んでちゃった。


 バイ〜〜ン——って……


 だが、それでいい。ナイスバウンドだ! 


 これで、無事ゲームセット。


 武器を失った事を僕はレフリー(ティスリ)に抗議して、今すぐ決闘の中止を……


 って……



「——ッキ!!」



 ……え?



 ……は?!



 おいおいおい!! ちょっと待て!!



 アイリスさ〜ん!? 君何やってるの??



 僕が安堵していると、目の前におかしなモノが写った。

 それは、足だ。

 僕の顔面目掛けて後ろ回し蹴りが飛んできた。

 ——て、ちょっと待て!! これ、続行するの? 君、騎士を輩出する公爵家の人間だろ? 剣を無くしてまで戦うか?! まぁ……武器がなくとも一矢報いるその姿勢は評価してあげるともさ。だけどな、後ろ回し蹴りなんて令嬢がやるもんじゃねぇーーだろうが!? てか、見えちゃうでしょう!? 羞恥はないのか!!


 それよりもどうする? 


 避けるか……?


 この間——僕はアイリスの蹴りの軌道が見えている。ここまで思考を巡らせられるのも神器のステータスを伸ばしたからだ。だけど、この状態から避けてもいいのか? 彼女の足先はピンッと伸びて僕の顔面目掛け飛んでくる。すぐ目と鼻の先だ。

 回避行動を取るのは可能だ。容易い。だが、この段階での回避行動は果たしてやっていいのか? あまり僕の実力は見せたくないぞ。あくまで僕は田舎者のジミ〜ちゃんでいいんだ。しかし、ここで回避してしまえばクソガキの実力が露見する。そんなことはあってはならない……が……


 これ? 喰らう??


 ちょぉ〜〜〜〜嫌なんですけど!?


 だって痛いの嫌じゃん!! 


 あ!? 今日はピンクですか? 女の子らしい一面もあるんですね。可愛らしいですね——ってちがぁあああーーう!! 


 と、現実逃避してる場合じゃないんだよ! ヒステリックの女の子らしい一面をみっけてる場合じゃねぇ〜のよ。足すぐそこなのよ。てか、どこを見て女の子感じてるんだ? 僕最低人間って思われちゃうじゃん!! ち、違うの!! ぼ、僕は変態さんなんかじゃないからね!


 てか、どうしよう!?



 避けるか? 避けちゃうか!?



 考えてる暇はないぞ! 蹴りがすぐそこだぞ!



 ——あぁぁぁぁあああああああ!!??





「——ッそこまで!!」


「「——ッ!?」」





 その時——


 2人の死闘を静止させる声が飛び、ダンジョン内に響く。


 決闘終了の合図。


 この時、アイリスの足は……僕の顔の右横すぐ隣で止まっていた。


 

 


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