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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第182話 オマエに異名を与えよう

「……は? お断りします」

「……ッえ? はぁぁあああッッッ!!??」



 僕は反射的に拒否った。

 彼は断られるとは微塵も思ってなかったのか驚いている。

 

 コイツはコレでよくOKが出ると思っていたな。やはり考えなしの馬鹿だという僕の見立ては間違ってないみたいだ。



「コイツッッッ——!!??」

「おい! こらこら、リーダー? 何する気だ?」

「離せ! モーリーこの野郎!!」

「リーダーが冷静になればすぐ離してやるよ。とにかく落ち着け」

「ぐぬぬ〜〜ッッッ!!!!」



 衝動的に飛びかかってきそうな勢いのダリルをモーリーが羽交はがい締めにする。

 あの筋肉に押さえつけられれば、大抵の人物は身動きも取れない。ダリルはぷら〜んッと垂れ下げた四肢をジタバタさせるも、その抵抗は虚しくあり無意味だ。滑稽なマリオネットを彷彿とさせてくれる。

 別にこれを見て面白くはないけど……ここは笑っておくべきか? どうなんだろうな? それが礼儀とかないよな?



「ご、ごめんね。ダリルが急に変なこと言って!」

「あぁ、いや……気にしてない。それで、私は行っていいのか? 悪いのか? どうなんだ?」

「えッ!? あぁ、ちょっと待って。せめて話だけでも聞いて欲しいの!」

「はぁあ? う〜ん? なら、手短に頼むよ」

「——ッ!? ありがとう。テイラー君!」



 できるなら、早急にこの場を後にしたい気分なのだが(特にダリルの所為で…)、カーラからも呼び止められてしまう。

 あまりにも困った様子でアタフタとしてるものだから、僕は仕方なく歩みを止めて彼女に向き直る。

 突然の申し出には驚いたけど、理由なんてどうでも良いから帰らせろよってのが本音なんだけどね。ただ、カーラ(この子)に罪はないからな。

 仕方がない。カーラの顔に免じて話だけは聞いてやるか?



「実はね。私たち、君と会ったのは今日が初めてじゃないんだ」

「……え?」

「テイラー君が10階層のボスに挑むためにソロでゲートを潜った姿を見てたんだ。私達はあの時負けて逃げて来ちゃったんだけれどね。その時君とすれ違ったのが私達——」

「あぁ……」


 

 僕はボス部屋へと向かうゲートを誘われるように潜ってしまった。

 確かあの時——僕の意識を奪った3人組が居た。


 

「あの時の敗退者ばいていしゃか!」

「……ッ?! ば、ばいていしゃ……」



 やっと思い出した。


 思わず声を出してしまったが、僕がどうでも良い事柄を思い出すなんて珍しいことだ。

 この時、カーラが僕の声を拾ってショックを受けていたが……僕は本当のことしか言ってないから多めに見てくれ。



「コイツ〜〜よくもカーラをイジメやがってぇ〜〜!!」

「やめろリーダー。落ち着けぇ〜〜」



 そして、相変わらずダリルはモーリーに掴まれてマリオネットを継続中だ。

 コイツはどうでもいい。放置だ。



「それで……その君たちが私に何の用?」



 だが、だから何だって話だ。

 そんな敗退者ばいていしゃ達が僕に何の用で絡んで来てるんだ? 

 これではまだ、その理由を語ってないぞ?



「えっと……私達は……」

「テメェ〜〜を心配してるんだよ!!」

「うわッ!? ダリル!!」



 カーラが理由を語ろうかとしたタイミングでついにマリオネットを脱却したダリルが割り込んでくる。


 割り込んでくんなや。



「いいか! いくらオマエが強くたってな。ソロでダンジョンなんか攻略できないんだ! だから俺様達のパーティーに入れてやろうって話をしてるんだよ!」



 ……は? なにそのBIGなお世話?? 僕はそんなこと頼んでないんだけれどな?


 確かに、冒険者とはワンマンプレイではダメだ。チュートリアルだって、パーティー攻略がセオリーだ。

 だけれど、僕は僕だけが知る事実を僕だけが知っている状態を維持しなくてはならない。

 だから、マリオネッターMr.ダリルの提案は非常に迷惑だ。

 


「お断りします」

「まぁ〜遠慮するな。優しい俺様がボッチなオマエを救ってやろうって言ってるんだ」

「だから、お断り……」

「今ならオマエに合った異名を考えてやろう! ちなみに俺様は双龍剣のダリルだ! どうだカッコいいだろう? そうだなぁ〜オマエの異名は……」

「要らない。そんなダサい名前は……断るって言って……」

「——おッ! そうだ!」



 だというのに、この男は僕の話など聞きゃ〜しねぇ〜! 自分の世界にトリップしている。

 助けてくれとカーラとモーリーに視線を送ったが……ダメだ、彼女達も呆れて冷ややかな視線をダリルに向けている。

 誰も彼の奇行を止めることは叶わない。



「テイラー! オマエの異名は“デス・テイラー”だ!」


「「「…………」」」



 そこに僕の視線も加わる。

 何がデス・テイラーだ。僕の偽名そのまま使用かよ。ダセェ〜し特徴がまるでないぞ??

 それに僕は厨二病患者ではないんだ。



「そう。ならその異名はそっくりそのままお返しますんで……じゃあな」

「——はあッ?! ってオイ! デス・テイラー!!」



 その名で呼ぶんじゃねぇ〜この野郎。

 あまりにも騒がしいものだから、数少ない冒険者の面々がこちらを伺ってんだよ。その名前が定着でもしたらどうしてくれるんだ? ぇえ?!



「ソロの攻略なんて限界があるんだ! ここまでこれた胆力は褒めてやるが、絶対に()()()()()()()には1人で挑戦するんじゃね〜ぞ! 馬鹿野郎!!」



 僕はダリルを無視してダンジョン脱出を目指した。


 しかしそこで、ふと考えてしまった……



「「「……ッ?」」」



 振り返る僕にダリル、カーラ、モーリーが不思議そうな表情を見せる。


 ダリルの単語を拾ってしまった僕には衝動が生まれた。


 ああ、そういえば以前もこんな感覚を味わった。


 確かこれは……前にもこの3人が関わっていたんだよなぁ〜〜。



「20階層のボス……かぁ……」



 今日は、素材採取に来たはずが、その目的が頓挫して、やるせない気持ちが僕の中に燻った。











 


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