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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第168話 何してくれるんや! ワレッ!!

 さてと……


 なんとかクリスタルサーペントを地底湖に沈めることには成功した。

 今は湖のほとりまで降りてきて沈んだことの確認中だ。水面にはブクブクと泡が浮いてきてはいたが、クリスタルサーペントは浮いて這い出てくる気配はない。溺死したようだ。


 ただ……その代わり……



「っぷッはぁ〜〜あ!? ぜぇぜぇ……ひ、酷い目にあったわぁ……」



 ただ1人、水面下から這い出てきた人物がいた。


 ヘンコである。


 この子、僕の糸で魔物共々弾き飛ばしてやったが……どうやら無事だったようだな。



「無事やあえらへんよ!! 何してくれるんや——ワレ!!」



 おっと、ずぶ濡れの彼女をジトォ〜っと見下して“うんうん”と頷いていると唐突吠えられてしまった。どうやら僕の考えていたことを見透かされていたようだ。今はフードを被っていて表情が見えないはずだが……僕はどうしてこうも考えが他人に読まれてしまうんだろう?

 不思議だねぇ〜?



「危うく死ぬところだったんやで! なんちゅ〜無茶なことしよるんや?! 」

「……ッフ。何を世迷言を……」

「な、何が可笑しいんや!?」

「君は生きてるんだから問題ないでしょう?」

「なんや! その言い草はぁあ! 誰のせいやと思ってるん!? 女の子には優しく接っさなあかんよ! むしろ優しくしてぇ〜やぁ〜! うわぁ〜ん!」



 なんだ。この残念な生き物は? 急に泣き出しちゃったよ?

 おいおい。一体誰だ〜彼女を虐めたのは?


 (※ウィリアです)


 冒険者とは命あっての物種。無事に生還できてるんだ。いいじゃないかよ。

 煩いったらありゃしない。まったく、彼女を死ぬ思いさせた無茶な奴って誰のことなんだか?


 (※ウィリアです)


 さて、女の子に優しくない。悪〜い奴とは一体……


 (※うぃり……)



「——おまえだぁああッッッ!!!!」

「うお?! いきなりどうした? 頭でも怪我したか?」

「クソがぁあ!! 何メートルもの高さから水面に叩きつけられても、無傷だったんよ! 人を可笑しな奴みたく言うなや!!」

「無傷なら良いじゃん」

「皮肉じゃボケぇえ! 気づけや!!」



 泣いたと思ったら、今度は怒り出した。情緒不安定か。

 相変わらず思考を読まれてしまってるな。まさかエスパーか?



「ウチに対しての悪〜い思考はビビビ〜ッとくるんや! まったく! なんなんやアンタは!?」

「いや……なんだと言われましてもぉ……」

「それにクリスタルサーペントを弾き飛ばしたあの技! どんな能力してんのよ?!」



 かと思えば、思い出したかの様に僕の技について言及してくる。無遠慮の塊か?



「はぁぁ……言うわけないでしょう? まったく、自身の能力を大っぴらに公開するわけないでしょうがよ?」

「むぅ……そりゃ〜そうやけれどもぉ……」



 ま、なんにせよ。クリスタルサーペントを地底湖に沈めたのは僕の力だ。これで素材の所有権は僕が主張できる。

 彼女が悔しがる気持ちは分かるが、これが事実だ。



「ああ〜〜してやられたわ! ほんま悔しいッ! クリスタルサーペント全部持っていかれて……ック!」



 ヘンコもそのことは分かっているから不満を吐露しているんだ。

 今も頬を膨らませて僕のことを睨んでる。

 そんな目で見たところで分けてやらんけどな。



「でや——あんさん名前は?」

「え? なに?」

「うちの名前はセラフィーナ=シャミル。あのシャミル商会の会長の娘なんやけど……ま、気軽にセラとでも呼んでおくれや!」



 ただ、この子——いきなり何かのスイッチが入ったかの様に笑顔を形成すると、いきなり自己紹介を口にした。

 全身ビショビショのままだけど、これが俗に言う『水も滴る変な女』だな。

 さて、適当に変態女の子——略して『ヘンコ』って呼んでたけど違ったか。



「あんた……今、失礼なこと考えてへんかったか?」

「い、いや〜〜そ、そんなことないよ〜〜?」

「ほんまかぁ〜〜? 怪しぃ~~?」



 おっと、変な思考を巡らせていれば『ヘンコ』改め【セラフィーナ】略してセラが再びジト目を形成した。この子は本当に鋭く敏感だな。

 まぁ、それはさておき——この人、商会長の娘と言ったか?


 シャミル商会。


 なんだろう——どこかで聞いたことある気がするんだけどな。さて、どこだったかな?

 いや、この街に大きな商会があることは又聞きで知ってはいたけど、それとは別にここ最近で聞いたことがあるんだけどな〜〜その名称。


 う〜ん? 思い出せないな。



「んで? あんさん。お名前は?」

「……あ?」

「うちは名乗ったのに、あんさんだけ聞かせてくれへんの? それは筋が通らないのとちゃいます?」



 ただ、そんな思考中の僕にセラは執拗に名前を聞いてくる。

 名乗られたら名乗りかえす。至極真っ当で普通なことだ。

 いつも散々、周りに文句言ってることを、逆に言われてしまった。

 仕方ない——ここは大人しく名乗っておこう。



「私の名前は……テイラーだ」



 ま、偽名だけどね。








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