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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第164話 ウチ! 金稼ぐの好きやねん!!

 ——シャミル商会!!


 それは大都市シルフに本店を構える大商会の名前や。


 武具、衣類、食品、日用雑貨と庶民の喜ぶ小物から……化粧品、宝石、甘味といった貴族御用達の高級品と——扱う商品は種々様々とぎょ〜うさん取り揃えとる。もはや『シャミル商会に揃えられへんもんは無〜し!』とまで言いはってもおかしくない優れた商会なんや。

 商会長アルバート=シャミルの娘——セラフィーナ=シャミルとはウチのことや。

 まだ学業に励む学生ではあるんやけど……商品開発や簡単な商談なんかも担当させてもろてるんや。

 まぁ〜商会長の娘やし、昔っから嫌々やらされはったんか〜と勘違いされそうなんやけれど……ウチにとって商人とは天職やと思うてる。


 ウチ金稼ぐこと大好きやねん!


 だって、金はウチを裏切らない!


 金さえあれば大体の事は解決できるんよ!


 だからウチは金が好きや! 


 なっはっはぁ〜〜!!


 いや……勘違いせんといてほしいんやけど……ウチは良心的な心は持っとるからな? 子供をぎょ〜さん捕まえて奴隷として売っぱらえやぁ〜〜! みたいなことは思ってへんからね? ウチを悪徳商人だと言わんといてな!? そんなん堪忍やで!?

 でもな、金を稼ぐんは大変なことや。商談にしろ、開発にしろ阿呆には務まらへん。馬鹿な考えは時に活躍する場面はあるんやけどな。突拍子も時には大事や言うことや。

 ウチは常日頃どうやったらええもん作れるか、よぉ〜考えんやけれど……コレがなかなかに難しゅうてな……いっつも頭抱えとんねん。


 だけんな。ウチ最近ええ商売みつけてん。


 ウッヘッヘ〜♪ そやから、もうヨダレが止まらんのよ。ぐっへっへ〜♪



 ダンジョン産の素材。



 ダンジョンから排出される素材はわりかしポピュラーな商材やけれど……最近、ええ素材の手に入る秘密の場所見つけてん。

 場所で言うと14階層。ウチ学生やけれど、もう冒険者資格は持ってるんよ。今は3年生でな、あと半年もすれば卒業やし。実家の口利きで、あの有名な大クラン【銀鳥アージェントゥム アヴィス】とも懇意にしとるんや。だから、仮冒険であるうちでもクランメンバーの同行ありきで5階層以降にも登っとるし、レベルやって既に20なんやから! 


 誰かウチのこと褒めたってもええんやで! ホレ、愛でろや!


 ま、そんなことはどうだってええんよ。でや。話は戻るんやけど……


 ウチが14階層で見つけたんは、たまたまやってん。ダンジョンの構造上、どうしても気になる場所があってな。手当たり次第に壁突っついとったら……なんと隠し通路を見つけたんや。

 んで、そこの先には風変わりなエリアが広がってっとてな。そこには非常に珍しい魔物が生息しとった。



「クリスタルサーペント。全身を特殊なクリスタルで覆われたトカゲの魔物や。あのクリスタルは魔力伝導率がめっちゃええからな。武器の装飾品にはもってこいやわ。ま、それ以外でもアクセサリーに加工しても人気のある一品になる。いくらでも応用の効く素晴らしい素材やわ! って、ウチは一体誰に話しとんのやろな〜? なっはっは〜〜♪」

 


 11階層以降は石でできた無機質なダンジョンが形成されてるんやけど、14階層の隠しエリアは突然、岩窟の中に出る。植物なんかも自生してはってな。湧水も流れてん。地形はすり鉢状で中央には地底湖さえもあるんや。

 どちらかと言えば1〜9階層の草原地帯の雰囲気と似てはるんかな? 

 ここは湿気も多く光苔が至る所に生えとる。それらは洞窟全体を薄ら照らしてな。幻想空間のように美しい光景の場所なんや。

 そこに生息してはったんが【クリスタルサーペント】——小型のトカゲの魔物やな。

 特徴はウチの説明した通りや。

 補足するんなら甲殻でもあるクリスタルは非常に硬いゆうことや。コイツらには刃物は通用せん。せやったらハンマーでブッ叩いたらええかと思うやろうけど……そうとも限らん。サーペントいいはるだけあってな、曲がりなりにもドラゴンなんよアイツらは——小型のトカゲやけれど生命力がごっつあってタフや。魔法も氷以外は受け付けない——ま、面倒な魔物やってこと。



「それが、こんな狭いエリアにぎょ〜さんいるんや。ウチでも1体、2体と対峙するのが関の山や。沢山居るっちゅ〜ことは良い事なんやけどなぁ〜。安全に素材採取できんのは問題やなぁ〜」



 秘密のこのエリアにやって来たウチの目の前にはクリスタルサーペンが、ぎょ〜さんおる。珍しい魔物やからウチにとっては金貨の山が尻尾生やして歩いとるようなもんやね。


 が……その数が多すぎる。


 数匹程度ならウチでも始末できるかもしれへんが、討伐にはちょっと時間が掛かってまう。この場所には軽く見渡しただけでも十数匹はおるからな。あんなん1匹にかまけてるうちに囲まれてお陀仏や〜。

 このエリアの存在はウチしか知らん。冒険者を雇いたいところやけれど、無闇に情報を公開してしまうと変な輩が集まりよって儲けにならんくなる。

 おとんにもこの場所は教えてへんのよ? 『ウチしか知らん』言うのは大きな武器やからな。情報を制するんは商売を制す。こんなん常識やね。

 せやけど……ウチだけではクリスタルサーペンをどうにもできひんのがもどかしいんよ。


 さて、どうしたものか〜〜?


 しかし作戦はある——例えばエリア中央の地底湖。クリスタルサーペンの甲殻は非常に重い。せやから、アイツを地底湖に落とすことができれば、そのまま沈めて倒すことができるはずや。


 まぁ〜その落とす方法はこれから考えるんやけれど……



「……あ? あかん!?」



 不覚やわ。

 

 遠くからクリスタルサーペントを観察していたらな。気づいた時には背後に1匹のクリスタルサーペンがおったんや。

 したら『グワッグワァ〜!』って鳴きだして〜〜仲間でも呼んだんかな? あっという間に囲まれてもうてん。


 なっははは〜〜……


 て笑ってる暇あらへん!? ど、どないしよう!? 全力で逃げへんとぉお!!

 ウチはこんなところでやられる奴やあらへん。まだ商人王にもなってへん。夢を叶えるまでは死んでも死にきれへんのやぁ〜〜!!


 ぜ、ぜ、全力で逃げる——死に物狂いで撤退やぁあ!!


 ウチ、大ピンチ——てな、そんな時やで……


 おかしなモノを見たんや。


 

「……え? 先客が居るのかよぉ……」

「だ、誰や?! 君は……?!」



 突然、ウチの視界に飛び込んで来はったのは影やった。

 漆黒の外套を纏ったソイツは空間に紫紺の糸を漂わせた怪しい人物や。


 敵か——味方か——その辺は本当分からへん。



 せやけど……なんでやろうな……



 ウチはソイツが良いビジネスパートナーになる気がしてん。



 これぞ——天啓ってやつなんか?



 この感覚——よく分からへんわ〜〜。






 






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