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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第162話 ◯◯をください!

「アイリス。要望だけど……1つ思いついたモノがある」

「ふむふむ。んで、それは何かしら? 私にできる事ならなんでも聞くわよ?」

「おいおいッ君もか? あまり乙女が『なんでも』とは言わない方がいいぞ?」

「……? なんのことか分からないけど……早く要望をいいなさいな」



 さて……勿体ぶっていればアイリスがプリプリし始めたぞ?

 彼女が剣を引き抜くその時まで、僕はそれよりも早く要望を口にしなくては再び昨日の二の舞か? 

 はて? ただプレゼントを貰うだけで命を失う危険が伴うとは……都会って本当に恐ろしい場所だよね。


 

「僕のお願いはただ一つ……」



 なら、早いところ言い切ってしまおうか。

 な〜に、そう難しい事じゃない。僕は単にとある衣装が欲しいだけさ。



「制服が欲しいんだ」

「……え? 制服? それって……」

「学園の制服が欲しい」



 それは、僕の抱えたある問題を解決するための衣装なのだが、現状の僕ではなかなか手にすることができない。だから、ここはアイリスにお願いすることで解決しようと考えていた。



「なに? あなたって制服の予備がないの? そこまで貧乏なのかしら?」

「おい。田舎出身のガキンチョを舐めるなよ。いきなり貧乏扱いかよ。アイリス? 君の物差しで僕を測るのはやめたまえ! と、言いたいところだけど……」

「……?」



 確かに僕は金策をしなくてはいけないほど金がない。アイリスの言う通り貧乏だとも。


 だけど、アイリスは1つ勘違いをしている。


 いや、貧乏なのは正しいよ? 


 けど、間違いってのはそこではなくて……



「僕が欲しいのは“()()()”の制服さ」

「はぁあ? なんで、そんなモノを……?」



 アイリスは、僕が僕自信の制服の予備を欲しているモノだとばかり勘違いしている。だが……僕が欲したのは予備の男物の制服ではなく、女物の制服だ。

 彼女は、そこのところ勘違いしていたのだよ。



「ああ……もしかして、シトリンちゃんにってことかしら? なるほどね。この一般科の教室ではメイド服は目立つから、せめて格好だけでも合わせようってこと?」

「——ッ!? ウィリア様?! そうなのですか?! お、お気持ちは嬉しいですが……この格好は私にとっての正装ですよ! 着替えるわけにはいきません」

「シトリンちゃん。その考えも、どうかと思うけど……」

「これは、ウィリア様に仕えるためのの最適な姿なんです!」

「それはさておき……ウィル、あなたの考えは分かるけど、それだとシトリンちゃんへのプレゼントになってしまうわよ? 私が聞いてるのはウィリアの欲しいモノ。そのほかに候補はないの?」



 アイリスは納得がいったかのようにポンッと手を打った。だが……僕の要望は彼女の求めた答えとは異なるようで険しい表情のままだ。

 シトリンはシトリンで驚きの反応を見せていたが、メイド服の何たるかを語っては信念を曲げるのを嫌っている。彼女もまた、しかめっ面を形成したのだ。

 2人して……僕の要望には不服を露わにしていた。


 だが……


 この子たちは、まだ勘違いをしている。


 僕の要望とは誰かを想ってのモノではない。



「2人とも、なに勘違いしているの?」

「「……え?」」

「僕がお願いしたのはシトリン用の制服じゃないよ?」

「何言ってるのウィリア? だったら、誰が着る制服なのよ」



 僕個人の欲望を叶えるためのモノだと……2人は気づいていない。



「誰って……僕だよ?」

「「………………え?」」

「僕の丈に合わせた女子用の制服が欲しいんだ」

「「………………は?」」



 そう……僕は僕自身が着る()()()()()()が欲しいのだ。



「ちょっとウィル? 私の聞き間違いかしら? え? なに……あなたが着るの?」

「そうだとも。他にどんな解釈があるんだ?」

「ないから困惑してるのだけれど……」



 アイリスは汚いゴミでも見るような眼差しを僕へと向ける。

 もし……彼女が初めから()()()()()()()を僕に向けているのなら、この反応も当然か?



「まぁ……理由を聞いてくれ、実は……」

「いや。言い訳は要らないわ。ウィルが本当は女装趣味の変態っだってことがよくわかったから」

「……は? いや……これには……」

「煩い。近づかないで。変態ウィル!」

「……へぇえ?!」



 だが、アイリスは僕の言い分をまったく聞く耳を持たない。シトリンを抱きしめてスススッ——と距離を取ってしまった。



「シトリンちゃん。このままウィリアを置いて髪留めを買いに行きましょう」

「え!? で、ですが……」

「この変態と一緒にいたら、あなたに影響が出てしまうかもしれない。もし、身の危険を感じたらいつでも私に言って。メイドがしたいなら公爵家で雇ってもらえるように口利きするわよ?」

「——ふぇぇええッッッ!!??」



 そして、2人の世界。何やらコソコソ語らいだした。僕は完全に蚊帳の外だな。

 てか待て——僕は変態って認識は確定事項なのか?



「あのぉ……2人とも? 僕の話を……」

「ウィル。シトリンちゃん借りていくわよ」

「……え? えっと……ちなみに拒否権は?」

「あるわけないでしょう? 死ね」

「ですよね〜〜」



 ダメだな。申開きはアイリスをイラつかせるだけみたいだ。彼女の中の僕は『変態クソ虫』でしかないのだ。



「ほら。シトリンちゃんいくわよ」

「——ふぇ?!」


 

 1秒でも早くこの場にいたくないのかアイリスはシトリンを連れてそそくさと教室を後にしようとする。



「う、ウィリア様! わ、わ、私は——ウィリア様を信じてますから! ど、どんな趣味があろうと——し、信じてますから……!!」



 いや、あれはもはや人さらいだな。首根っこを掴まれて引きずられていく。

 ただシトリンよ……その捨て台詞はなんだ? 女装趣味の変な奴って認めているのかい? 

 さて……僕のいわれもない悪評を信じ込んで、僕の何を信じるんだろう?


 僕は悲しいよぉぉ……。


 ただ……



「まぁ〜いいか。放っておけば僕の悪評なんて、そのうち忘れるでしょう」



 僕は変態さんなんかじゃない。僕は僕の事実無根を信じて、いつもの僕でいるだけだ。


 それなら……



「気晴らしにダンジョンでも行くかな」



 時刻は放課後——シトリンも攫われちゃったことで1人ボッチだ。ちょうどいいじゃないか。


 この際、ダンジョンに向かって気晴らしでもしようかな?


 あれ……そういえば……


 アイリスは僕の要望を聞いてくれるのかな? 疑問だな。

 



 







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