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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第154話 コレって何度目?

「おい、なんだよアレ……」

「ウィリアと一緒にいる子は誰だ?」

「またウィリア君? 彼に何があったの?」

「あの服装は『メイド』だよな?」



 ホームルーム前の一般科の教室。

 突然とんでもないことが僕に舞い込んだ。



「ねぇ……シトリン?」

「はい! なんでしょうウィリア様!」

「いや……『なんでしょう?』じゃなくてだよ。君……なんでいるんだよ」



 僕はまさかの事実に頭を抱えた。それも全て、僕の隣でかしこまって控えている1人のリトルメイドちゃんが原因だ。



「私はウィリア様の奴隷なんです! 常にお側でお仕えしてないといけません!」

「あのね。君の忠順な献身は、非常〜〜に嬉しく思うんだよ。だけどね……教室にまで来ちゃダメだよぉ……」



 いきなり一般科の教室に謎のメイド少女が現れたことで、民草ピーポー諸君はドヨドヨし始めた。この教室にメイドが来ることなんてありえないのに、キュートで小さなメイドちゃんが居たら、そりゃ〜騒ぎになるともさ。鬱陶しいほどにね。


 あれれ〜〜? 何この状況〜〜? すっごく既視感〜〜??


 僕はこの状況を何度も何度も味わってる気がするのだが……はてさて、あれはいつだったか?



「オイオイ、ウィリア。一体この子は誰なんだ? どこで攫って来た?」

「ええ!? ウィリア君——こんな小さな子を攫ってきたんですか?!」



 ただ、今回1つ違うことといえば……クラスメイトであるノートン君にミミルちゃんがメイドの正体に釘付けで僕を取り囲んでいることだ。



「おい。ノートン氏や。僕を変態誘拐犯みたいな風に言うな! それにミミルはすぐ信用しないでくれる!」

「はん。いつものお前なら変態誘拐犯と遜色ないぐらい破茶滅茶だけどな」

「……ご、ご、ご、ごめんなさい! ウィリア君!!」



 コイツらときたら、僕がシトリンを攫ってきたものだと決めつけやがる。

 僕が幼女を攫うように見えるか?! 人畜無害を絵に描いたようなウィリアちゃんやぞ!! 失礼な奴らめ!! 


 ——フンッだ!!


 それで……



 なにがあったのかは、もう誰もがお気づきだろう。

 僕はシトリンをとりあえず寮の自室に置いてきたつもりでいたんだ。

 しかし……彼女は僕の後をコッソリとついてきて、学園の教室にまで押しかけてきたんだ。

 まぁ、ついて来てること自体は余裕で気づいていたんだけれど……あえて泳がせた。いや、カッコつけた言い方をしてるが、実際は目的なんて存在しない放置に近い。

 だって、あまりガミガミ言って追い返すのも可哀想だと思ったんだ。僕は小さい子から好かれるって経験したことがなくて、正直どう接していいか分からないんだ。

 まだ生意気なクソガキなら、僕と通ずるところがあるからして意気投合できるんだけど……やっぱり女の子って難しい。

 そもそも、女の子の扱いが上手いんだったら僕は妹2人から嫌われたりなんかしてない。

 僕だってね。好かれるか、嫌われるかだったら、せめて好かれてはいたいと考えてるんだ。嫌悪感を抱かれて蛆虫でも見るような視線がグサグサ刺さるのはなんとも耐え難い。まだ、無関心の方が僕としては嬉しいんだが、何故だか僕って気づくと敵を作っているみたいなんだよね? なんでだろう?!

 僕は15年生きてきて、いまだにその答えには至れない。さて、いつ気づくことができるんだろうか? 楽しみだなぁ〜?



 と僕が考えを巡らせた。その矢先——



「はい。皆さん。おはようございます。では、ホームルームをはじめ……」


 

 担任が教室に入って来てしまった。



「あら? 可愛らしいメイドさん? なぜ、一般科の教室に??」



 教室にいた生徒が各々の席につく中、僕の背後に控えたシトリンは突っ立ったままだ。当然、担任はシトリンの存在に気づく。

 1番最後尾の列なんだ。いくら小さな身体のシトリンだとしても気づけるさ。

 ただ、学園には貴族も通っているからか、校舎の中でもお付きのメイドさんはチラホラ目撃はするんだ。

 しかし、それはあくまで貴族科でのお話。一般科の教室にメイドが居る光景はまず見ることはないだろう。


 

「私はシトリンと申します! こちらにおられるウィリア様の忠順なメイドです! どうぞお見知りおきを〜♪」

「……ふ〜ん? これはご丁寧にどうも。では、ホームルームを……」

「——ッ!? ちょっと待てやぁあ!!!!」

「……ッ? どうしました? ウィリア君?」

「どうしたもこうしたもあるかぁあ! この状況にツッコまないんかい!?」



 だが、担任は軽く触れる程度でシトリンをスルー。僕はその奇怪な反応に思わずツッコんで真意を聞かずにはいられなかった。

 だっておかしいでしょう?! なんで普通にスルーするんだ〜この教師は!?

 いや、触れて欲しくはないんだよ? 僕だって今、必死に言い訳を考えていた。しかしまさかのスルーですよ! どうかしてるぞ?! 

 教師のまさかのスルースキルに考えてた言い訳なんてものは全部吹っ飛んで、気づけば叫び散らす始末だ。


 すると……



「だって……ウィリアム君。あなたのことですから……ねぇ〜?」

「“ねぇ〜”と言われましても……!?」

「ウィリア君の起こす事はあまり考えないようにしてます。だって一々驚いてたら疲れちゃうでしょう?」

「ぼ、僕はなんだと思われてるんだぁ……!?」

「えっと……問題児?」

「——失敬なぁあ!?」



 これだよ。


 僕が問題児? んな馬鹿なぁあ!! そんなわけない!!


 僕が問題なんて……いや、トラブルしか起こしてない気がすれけど……別に引き起こしたくて起こしてるわけじゃないんだからね! トラブルの方からやってくるんだよ!! 

 何度も言ってるけどさ! 僕は人畜無害のウィリアちゃんやぞ! トラブルメーカーみたいにいうなやぁあ!!



「はい。ウィリア君、席についてください。ホームルーム始めますよ! それと、メイドさんを雇うなら学園に申請書を提出してください。あとエッチなことはダメですよ。学生は健全でなくては」



 教師がこの言葉をつぶやいたその瞬間——学生共の視線が一時僕に注がれた。特に野郎な。敵視する視線だ。

 これに対してシトリンは、頬を桃色に染めて恥ずかしそうに身体をクネクネしていやがる。


 な〜ん〜だ〜こ〜れ〜わ〜??


 なんだろう……非常に不愉快だ。

 


 









 


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