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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第144話 串刺しの一撃必殺

 僕は高速で跳躍を繰り返し奇をてらう。


 そして……



「——喰らえ!!」

「——ッ!?」



 僕は牛頭の前方に着地するとレイピアを顔面目掛けて投擲してやった。だが、コイツは首を捻り華麗にもレイピアをわした。図体の割に俊敏な奴だ。完璧には僕の動きを追えないにしろ、そこそこの瞬発力が備わってるようだ。無闇に攻撃を仕掛けず牽制で様子を見て正解だったな。



「——うりゃぁああッッッ!!」



 そこで、今度はもう1本のレイピアで正面から斬りかかる。攻撃を交わされて自棄やけになったかのようにだ。ただ、実際に自棄を起こしてるわけではない。あくまでブラフを演じる。

 案の定——牛頭の口角が釣り上がる。レイピアに合わせて手にした巨大な手斧を振りかざしてきた。きっと僕ごと押し潰すつもりなんだろう。

 なんともまぁ〜〜思った通りの動きを見せてくれる。



「——魔技ッ虚影!!」

「——ッッッ!?」



 斧は床板へと突き刺さった。だが、そこには僕の姿はない。

 魔技【虚影】を使い最初投擲してみせたレイピアの位置へと瞬間移動したのだ。

 それで、その場所とは牛頭の背後——ちょうど首筋の裏あたりだ。

 僕は瞬間移動《飛ぶ》と、すぐさま投擲してあった方のレイピアを掴む。そして2本のレイピアでもって牛頭の肩口目掛けて思いっきり突き刺した。



「——グモォオッ!?」



 僕の姿を見失い、気づけば首筋に痛みが走る——そんな経験を得ては黙ってなんかいられないだろう。牛頭からは思いがけずといった、くぐもった唸り声が上がる。


 すると……次の瞬間——

 


「——グモォオ!!」

「——ッ!?」



 不意に太い両腕が伸びてきた。

 

 僕を狙っている。もしかして捕まえる気なのか?


 首元で刃を突き立てる僕に対して魔の手が伸びて影がかかる。このままでは牛頭に捕まってしまうのは時間の問題だ。

 僕はレイピアを首筋に刺した。だが、それは致命傷にはならない。

 深く突き刺したと思ったんだけど……刃は僅か十数センチ体内に沈んだだけ。これでは生命力の強い魔物にとって大したダメージにはらない。


 ここまでか?  今すぐ飛んで退避するべきか?


 いや……まだだ……


 この時、僕は奇襲刺突のみでコイツを仕留めようなんて考えちゃ〜いなかった。

 わずかでもいい——皮膚の表層に傷をつけ、刃を体内に侵入させるのが本当の目的だった。


 何故かって……?


 それは——



「——影の霊気(シャドウ・オーラ)ッ!!」

「——ッッッ!!??」



 僕に迫り来る牛頭の腕が掴まれる寸前のところで止まった。それは僕が呪文を唱えたのと同時だ。



 魔法【影の霊気シャドウ・オーラ

 ……物体に影刃のオーラを付与、纏わせる。オーラは変幻自在に操ることができる。



 僕が以前——影の魔力を武器に纏わせる【魔装】というスキルを使ったのを覚えているだろうか? アイリスの武器をへし折った時に使った技だな。

 魔法【影の霊気(シャドウ・オーラ)】はその上位互換だ。厳密には『物体』に対して付与が可能なのだが、武器に纏わせた場合まず切れ味が上昇する。そして、オーラは魔力量次第では影の刃として自在に操ることができる。例えば得物の刃先に向かってオーラを伸ばせばリーチが長くなるし、刺突の瞬間に湾曲や膨張させれば『避けたと思ったのに斬られた!?』な〜んて演出ができたりする。なんともトリッキーな付与魔法なのである。

 ただ、消費魔力が激しいため、レベル、もしくは神器がなければ満足には扱えないだろうがな。


 それで……


 僕のレイピアの刃は牛頭の肩口に突き刺ささったままだ。そこで、僕は新しく覚えた魔法【影の霊気(シャドウ・オーラ)】を発動させた。レイピアはただでさえ黒々とした漆黒に染まっているが、オーラを纏った瞬間、刃の表面が波打つように揺れた。


 そして……



「——奥深く突き刺され! 影の刃ッ!!」



 オーラを精一杯刃先に向かって引き延ばした。

 現在、レイピアの刃は魔物の体内に突き刺さっている。つまり刃を伸ばし、なおかつ枝分かれするようなイメージで体内をズタズタに引き裂く。

 いくら魔物の皮膚が頑丈だとは言え体内まではそうはいかないだろう。だから僕の刺突剣が魔物の急所に近い場所に突き刺さってさえいれば、あとはオーラを引き伸ばせば致命傷になるという寸法さ。

 これは巨体の魔物であっても関係ない。大切な臓器が傷付けば化け物だってひとたまりもないだろう。



「——ッグッ——グモォ……」



 僕はレイピアにこれでもかと魔力を注いだ。影を鋭利に研ぎ澄ませ周囲に向かって針を伸ばすイメージで……。

 すると、影の刃は皮膚を突き破り、牛頭の身体中の至る所から漆黒の棘が生えた。ヤツは口からは大量の血を吐き出し、やがて……ズズンッ——と轟音をダンジョン内に響かせて巨体は床へと崩れ落ちる。



「はい——ッ終了。討伐完了だな。存外、呆気なかったな」



 その瞬間——僕は確信した。確実にコイツは絶滅したんだってね。現に奴が倒れたと同時に、身体には暖かいものが流れる感覚があった。





〜〜レベルが上がりました〜〜


 Lv.10>Level up!>Lv.13


 



 ——レベルがLv.13になりました。


>>>新魔法【幻影ファントム】を覚えました。


 



 おそらくレベルが上がったんだ。今日1日を通して何度も味わった感覚だ。まず間違いないだろう。


 さて……


 それに関しては後で確認するとして——


 《《あの子》》の元に向かおうか。











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