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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第4章 僕が【死を縫い付ける裁縫師《デス・テーラー》】と呼ばれるようになるまで
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第143話 異常種? な〜に たぶん大丈夫だろう?

 僕は少女を抱き抱えると、そのまま魔物との距離をとった。


 にしても、この子……恐ろしく軽いな?


 身体は僕より若干小さいぐらい。ボロボロでシンプルなワンピースを着ている彼女だが、布越しで触った感触は相当ガリガリな印象を受けた。

 言っとくけど変な意味はないよ? 触ったって言っても、抱えた時に触れたのは背中とか足であって、変なところは触ってないからね?


 断じてないからね!? 僕は無実だよ!! 



「ごめん。ここで待っててくれる?」

「——ッえ?! わ、私を1人にしないで……く、ください!」

「えッ……ちょっと?」



 魔物との距離をとってその子を下ろす。すかさず、その場を離れようとしたが少女に外套の裾を掴まれてしまった。彼女は恐怖で歪む表情のまま『置いて行かないで』と必死に懇願している。


 このままでは戦えないんだけどな?



「話してくれる? 君と一緒だと、アイツと戦えないからさ」

「戦う? ダメッ——アレは()()()。絶対勝てない! 今直ぐ逃げないと!?」



 はあ? 異常種?? 


 僕の聞いたことの無い単語だ。


 この子は身体を震わせて、瞳は絶望に染まって光を失っている。この様子を見れば彼女が漠然と語っているわけではないのは分かる。


 でも……



「いじょうしゅ? が何か分からないけど……たぶん大丈夫かな? 安心して待ってなよ」

「え?! だめ……お願い! ダメッ——!!」



 僕は少女の手を振りほどくと、悲痛に叫ぶその子を置いて魔物と向き直る。



「さぁ〜待たせたね」


「グモモぉ……」


「これで心置きなくやり合える。異常種と呼ばれるオマエはいかなものか? その力を見せてみろよ」


「——ッグウォォオオッッッ!!!!」



 僕は不敵に笑って武器を構える。


 すると……


 巨体の魔物——異常種【牛頭の化物(ミノタウロス)】はこれを敵意と感じ取ったのか大きく咆哮し闘志を奮い立たせた。

 この時の魔物の絶叫は周辺を揺らすほど反響した。まるでダンジョンが悲鳴をあげてるようだ。



「——うわぁッ!?」



 僕の背後では少女が怯えて身体を丸めているが……まぁ、これが当然の反応か。

 おそらくコイツは強敵だろう。『異常種』な〜んて呼ばれてるほどだ。

 この巨体もそうだが、初撃の蹴りを入れた感覚からもゴブリンなんて目じゃないほどタフネスな相手だ。


 だが……


 いいじゃないか強敵。

 同時にコイツの咆哮は僕の身体をも震え上がらせたが、何も恐怖で震えてるわけではない。


 いや……確かに怖いよ?


 でもね——それよりも……


 僕はコイツと戦いたい。そして倒したいと思ってしまっている。さて、いつから僕はバトルジャンキーになってしまったんだろうか?

 しかし、今の実力がどこまで通用するのか試したくて仕方がなかったんだ。


 ふふふ……楽しみだ。


 さて……



「—— 影の加護シャドー・ブレッシング!!」



 戦いを始めようか。


 僕は魔法【影の加護シャドー・ブレッシング】を唱えた。危機にある少女を救うべく、華麗な登場を披露した時に使った、体が軽くなる魔法だ。



「——グモモ……」



 壁、天井、床、あちこちを足場にして飛び跳ねる。ミノタウロスは僕の動きを追えていない。唸って様子を伺ってる。

 下手に攻撃をしてこないあたり、コイツはとても冷静だな。普通の馬鹿なら手にした武器を振り回して闇雲に攻撃してきそうなものだが……うん、やりづらい相手だ。

 コイツの唸り声から察するに僕のスピードを脅威だとは思っているんだろう。だが、矮小な存在である僕の一撃には目をくれていない。

 魔物の巨体は、筋骨累々と鋼の肉体が備わっている。そんじょそこらの柔な武器の刃ではコイツの薄皮1枚を切り裂いて終わるだけなんだろう。

 僕が肌を撫でるような攻撃をしても大したダメージにはならない。

 もし仮に大ダメージを狙って深く刃を突き立てようとすれば——あの筋肉質だ、刃は抜けなくなってしまいそうだな。それに、大きな技を繰り出そうとすれば攻撃の瞬間、基本身体は硬直するもんだ。つまり大きな隙が生まれる。

 この牛頭は脳みそが牛のくせに、その瞬間を狙っているんだろう。生意気なことにな。

 僕を捕まえるのは困難だと悟ったコイツは、攻撃を待っているんだ。僕が繰り出す攻撃の瞬間——インパクトの瞬間——身体が硬直し動きが止まる瞬間を……。

 

 肉を切らせて骨を断つ——!!


 魔物らしい理にかなった戦法だ。


 魔物の皮膚は非常に硬い。おまけに魔力によって薄い膜を張っているから、さ〜ら〜に〜硬い。

 僕みたいなちっぽけな存在の攻撃なんて屁でもないと考えているのだろう。

 ま、その通りだろうな。牛頭コイツにダメージを与えるのは骨が折れるだろう。それは今説明した通りだ。僕のレイピアでもってしても困難だという事実は変わらない。

 奴に捕まったら最後だ。それは一撃を喰らっても同じ——しみったれたちっぽけなクソガキである僕ではひとたまりもない。一瞬で肉塊に変貌する事だろう。

 僕が攻撃を入れた瞬間、牛頭はカウンターの一撃を仕掛けてくる。その時、逃げ遅れればゲームオーバー。僕の負けだ。


 ならどうするのか?


 フンッ——そんなの簡単だ。 前にも言ったろ?


 相手の意表をつくんだよ。


 そこで、1撃で仕留める。


 今の僕にはその手段がある。








はい4章突入です! 章開設に少々手間取ったので、2話目にお祝い申し上げさせて頂きますよ!

いきなり戦闘からの開幕です。

対、異常種と呼ばれる魔物! さて、ウィリアは女の子を救うことができるのか!?

第4章ですが、もしかするとちょっと長めの章になるかも? どうかお付き合いくださいませ!!

では——引き続きお楽しみくださいませ!!

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