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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第138話 残すはコイツだけだ

「——グアッ!!」



 ホブゴブリンが短い叫びを上げる。これを聞いた部下ゴブリンに動きがあった。

 残り2匹のゴブリンは僕を取り囲むように回り込んでくる。ホブゴブリン含め3匹で取り囲むつもりなんだろう。

 だが、向かってくるゴブリンをただボォ〜っと突っ立って待ってなんてやらない。奴らのフォーメーションが完成する前に仕掛けてやろう。

 僕の手には先程掴んだ矢が握られていた。それを、剣盾持ちゴブリン目掛けて投擲する。

 すると案の定、ゴブリンは矢を盾で防いだ。投擲で投げつけた矢なんて大した速度は出ない。奴はドッシリと身構えると盾で矢を防ぎ弾き返した。心なしかニヤケた表情を浮かべて『やってやった!』とドヤ顔だ。

 やっぱり、ゴブリンは馬鹿な生き物だ。本当に僕がそんなモノ(矢)でオマエをろうと考えてるとでも?



「こっちだよッ——おばかさん。魔技ッ——影移動ッ!」

「——ッグギャ?!」



 ゴブリンはなるべく身を隠すように盾を構えた。その時、視線は盾の裏側。ヤツは僕の姿を視界から外したんだ。

 いくら統率が取れているとは言え、所詮はゴブリン。戦闘時の一挙一憂、細かい気の配りはてんでなってない。


 さっき、僕がどうして背後に現れたのか——とか……


 戦闘時、敵から視線を逸らしちゃいけない——とか……


 一撃を防いだからといって一々、良い気になるな——とか……


 馬鹿だから推察なんてできやしない。一瞬の気の緩みがすぐ死に繋がるというのに……コイツは何も考えていなかった。

 奴が盾で矢を防ぎ気が逸れた瞬間、僕は魔技【影移動】を発動して背後へと周り込んだ。

 ボスであるホブゴブリンは僕が影に吸い込まれるように姿を消したことに何かを直感したようだが……自らの気づきを伝えようとしたってもう遅い。なんせ、奴はもう生きちゃいないんだからさ。

 再び僕が姿を現した時、剣盾持ちのゴブリンは姿をくらませた僕に面食らっている最中だった。その慌てふためいてる隙に首に狙いを定め僕はレイピアを突き刺した。魔物だって生物だ。弱点を突かれれば一瞬にして絶命する。

 レイピアを引き抜くと、ゴブリンはビクッと身体が震え膝から崩れ落ちるようにして前へと倒れ込んだ。


 

 さて……これで残すは、あと2匹——



「——ッん?」



 次に狙いを定めようとした瞬間——僕に影がかかった。不意に見上げると、僕目掛けて巨大な刃が落ちてきていた。ボスであるホブゴブリンが、剣を僕目掛けて振り下ろしていた、まさにその瞬間である。

 刃は力任せで叩き落とされる。ズズンッ——という轟音を響かせて、その一撃は床の石畳を砕いた。流石は魔物——一撃の威力は見事なモノだ。


 だがそれも、当てればの話だがな。



「——グラッ?!」



 ホブゴブリンは驚きで目を見開く。渾身の一撃が落とされたのは僕の身体ではなかった。床に倒れ込んでたゴブリンの死骸を叩き潰すように砕いただけだった。

 僕は距離を取るのではなくホブゴブリンの足元に潜り込むように回避した。

 そして、ついでとばかりに両手にあった2刀のレイピアで切り付けておく。

 ちなみに投擲したレイピアは影に収納しておいて、魔技【影移動】発動の際に取り出しておいた。



「——ッッッ!!??」



 ホブゴブリンの顔には苦悶の表情が張り付いた。ただ、僕が与えた斬撃は薄皮を切り裂いた程度だ。いくら、神器によって身体能力が上がったにしろ、僕はパワータイプと違うんだ。正直、力には自信がないよ。

 だがそれでも……僕には多くの能力(武器)がある。それを上手いこと活用すればいい。簡単なことだ。

 ホブゴブリンの股をくぐって背後に回る。その間、レイピアの柄同士に繋がる魔力でできた糸を目一杯に伸ばした。


 そして……


 これを〜〜一気に引き締める!!


 

「——ッグラァア!?」



 するとホブゴブリンの足に糸が絡み合い、それが引き締まることで、たちまち両足を縛り上げた。

 そして、案の定ホブゴブリンはズドンッ——と盛大に手前に倒れこんだ。


 僕の狙い通り。


 あと、ついででレイピアを影に突き刺しておこう。


 ——プスっと! 魔技【影縫い】だ!!


 これでしばらく動きを封じられるはず。君は少しそこで待っていてくれたまえ。


 さて、まずは最後に残ったゴブリンから仕留めよう。

 というのも、ホブゴブリンは拘束済みで動けない。だったら、残った取り巻きから仕留めてしまえと考えたんだ。



「ウゥ……ウギャァ……」



 目の前のゴブリンは指揮官も失い仲間も失った。斧を握る手はカタカタと震え、しみったれたクソガキに怯えている。こんな軟弱者はただの小物でしかない雑魚だな。



「——ギャアアッッッ!!」



 意を決したゴブリンは雄叫びをあげて飛びかかってくる。全力の一発をお見舞いしようと両斧を振りかざしてくる。


 だがしかし……


 そ〜んな大きく振り翳してしまえばどうなるか? 


 僕は容易にヒラリとかわすともさ。

 刃は石畳へと突き刺さり動かなくなってしまう。すると両斧なんて重い武器はすぐには引き戻せない。床板を叩いた衝撃だって腕を伝ってゴブリンの身体は一瞬ではあるが硬直だってする。そうなれば、大きな隙が生まれる。僕はこの(チャンス)をおめおめと見過ごしてなんてやらない。

 ザシュッ——と斧を握るゴブリンの腕を迷うことなく両断する。すると、コイツの手は柄を握ったままプランッ——と垂れ下がった。

 本体である身体は、この時の衝撃から腕をその場に残して背後にふらっと蹌踉よろめいた。

 ゴブリンの驚愕に慄く顔——いや、これは恐怖か? それとも痛みか? コイツの歪んだ表情にどんな想いがあるかなんてわからない。

 だが、僕に切り落とされた両腕からは血が滴り、コイツの命運が尽きたことは間違いがない。だったら、死にゆくゴブリンが何を思っていたかなんてもうどうだっていいだろう。

 これ以上、苦しめなくていいように……僕はゴブリンの(急所)を目掛けレイピアを突き刺す。


 これで……


 残すはボスだけだ。

 



 


 

 


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