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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第134話 9階層セーフティエリア

「俺の名はレクスだ。冒険者ランクはC。それで君の名前は?」

「え? えっとぉ……て、()()()()だ」



 冒険者の男【レクス】は自己紹介と共に僕の名前を聞いてきた。

 僕は咄嗟に【テイラー】と偽名を名乗る。そのまま『裁縫師』を意味する言葉だ。理由は僕の持つレイピアが裁縫針みたいだなと思ったから。単なる連想ゲームだな。



「テイラー? ふ〜ん、可笑しな名前だな?」

「……ッ。悪かったな」

「おっと気を悪くしたら謝るよ。珍しい名前だと思ったんだ」

「そうかよ」

「じゃあ、よろしくな。テイラー」

「あぁ……こちらこそ」



 まぁ〜彼とよろしくするかはさておくとして……

 レクスは右手を突き出して握手を求めてきたから、社交辞令だと思って仕方なく僕はそれを享受しておいた。



「それでここはどの辺りなんだ?」



 そして互いに挨拶を済ませたとたん僕はすかさず道を聞いた。

 僕はとっとと帰りたいんだ。レクスと友好関係を結ぶ気はこれっぽっちもありもしない。ここは急がせてもらおう。



「おっとそうだった。テイラー、君は運が良いよ。この場所はゲートに近いんだ」

「どのゲートだ?」

「9階層に抜けるゲートだな」



 レクスの身体が跳ねる。忘れていた事を不意に思い出したかのような挙動だ。


 それでレクスの言葉を聞く限り、今いるこの場所は8階層ということだ。


 僕は3階層も登ってきてしまっていたのか? ダンジョン攻略初日にしてはアクティブに突き進んだものだ。



「9階層はセーフティエリアとなってるが休んでいくかい? もし脱出を急ぐなら下りのゲートの方向を教えようか?」

「いや、9階層に向かうよ」

「そうか。なら、一緒に行こう。僕もちょうどそこを目指してたんだ。直接案内してやる」

「——ッん。恩に着る」

「な〜に、ついでみたいなもんだろ? 気にするな」



 レクスの提案に僕は9階層へと向かうことを選択した。

 というのも9階層っていうのはセーフティエリアと呼ばれる場所なんだ。

 チュートリアルダンジョンは100階層からなるダンジョンだが、下一桁に9の付く階層は【セーフティエリア】と呼ばれる区域となっている。要は安全なエリアだ。

 ヴェルテと一緒に侵入した69階層も一応セーフティエリアだ。

 あそこは『ブルーアイアンタートル』という魔物の住処にこそなっていたが、アイツらはコチラから手を出さない限り襲ってはこない比較的温厚な魔物さ。

 魔物は出没すれど秩序を厳守すれば安全性のある区域——これがセーフティエリアである。

 まぁ〜他にも特徴があるんだが今は割愛する。



「ところでテイラー?」

「……ん?」



 そして、レクスの背中を追ってゲートに向かい歩き始めたところで……不意に彼から話を振られる。



「君は()()()()()()はいくつなんだ?」

「……E()だ」

「ほう。やっぱり新人だったのか!」

「…………」

「いや〜君、背が低いだろう? てっきり子供と思ってビックリしたけど……5階層の駐屯地から上層へは抜けれないから、消去法で無いな〜って思ってたんだ」

「悪かったなチビでよ」

「あれ? 怒った? ごめんごめん!」



 クソッ——レクスめ。僕を馬鹿にしやがって! 

 僕は自分の背が低いことを気にしてるんだぞ! 

 どいつもこいつも僕の村にいた同い年の奴らはグングンと成長し、クラスメイトすらも大方背は僕より高い。 

 僕はチビなんかじゃないやい! この世の中がデカすぎなんじゃい!!


 と——心の中で叫んだって、背が伸びるわけでもなし……ここら辺にしておこう。そして帰ったら牛乳でも飲もうかなぁ……。


 それで……レクスとの会話だが、僕をチビ呼ばわりしたと同時に『冒険者ランク』との単語を発したと思う。

 『冒険者ランク』とは、その名の通り冒険者の階級である。下はE級から始まり、上はS級。ダンジョンの踏破階層、魔物の討伐、冒険者協会からの依頼達成等——冒険者の活動を通して階級は上がっていき、上に行けば行くほどギルドは最上級の支援をしてくれるようになる。

 僕は咄嗟に『E』と呟いた。だが、これは嘘である。

 だって僕は今日、()冒険者になったばかりだ。この『仮』の文字が取れない限り冒険者にはなれない。だからE級ですらあるわけないだよ。

 だけど、仮冒険者がこの場所にいること自体がNGだ。そこで『E』だと嘯いた。むしろそう説明するしか選択肢はないだろう? 幸いレクスはこの場所に冒険者ですらない奴がいるのはおかしいとの固定観念から勘違いしてくれている。このままやり過ごせそうだな。



「テイラー見てみろよ」

「……ん?」

「あそこにゲートがある。な、近かっただろ?」

「あぁ、そうだな」



 と、そうこうしている内に石柱のアーチが見えてきた。9階層へと抜けるゲートである。レクスと出会ってものの5分足らずでついてしまった。

 本当に近かったな。これなら自力でも見つけられたかもしれない。



「では、お先に〜!」



 レクスはピョンっと飛び跳ねながらゲートをくぐる。中年冒険者の割に意外とお茶目な奴だ。

 いい大人が恥ずかしくないのかね? クソガキである僕以上にはしゃいじゃって……こんな大人にはなりたくないなぁ……。


 ……え? さっきまで狩りに夢中で興奮して道に迷ってたクソガキは誰かって?


 さて、な〜〜んのことだか、クールな僕には皆目見当もつかないや。


 そして……


 僕は、レクスの後を無言で追っていく。そうクールにな!










 

 


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