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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第125話 氷結乱舞 狂気の攻防

「オイ!? クソッ——」



 僕に向けた2丁の武器。向かってくる2発の魔弾。これを瞬発力にモノを言わせて身体を捻って避ける。


 だが……



「こんなモノじゃないよ——たった数回避けられたからって良い気にならないで。そんな暇なんて与えないんだから!」



 ポッピーの持つ武器【銃剣ガン=グラディウ】はカチッと音が鳴った。かと思えば、魔弾を撃ちだしたばかりだというのに再び青く発光を放つ。



「——ッ!?」



 僕は思わず顔を顰めた。


 あの武器は魔弾を連射可能らしい。僅か数秒の間で再び氷の礫を放ってきたんだ。


 しかし……



「ふ〜〜ん? よく避けれるね?」



 弾幕は問答無用に僕を襲ったが、辛うじて避け切って見せた。ポッピーは目を細め呆れた様子で言葉を吐き捨てた。


 脅威なのは視認が難しい球の大きさと速さにある。魔弾が小さい分、しっかりと視認さえできれば、後は隙間を縫うだけだ。弾幕の回避ゲーである。

 だが『言うは易し』との言葉がある通り—— 一般人からすれば難しい要求だって自ずとわかる表現だろう。

 神器有りきの身体能力と視力があってこそなしえる神業——正直言ってしまえば、地下で盗賊が放った風の斬撃を避けてた時より厳しい動きを強いられているかもしれない。

 時に跳ねて身体を捻り、針の穴に糸を通す様な回避行動の繰り返し……これを秒単位で計算し位置把握に努めなくてはならない。


 まったく……どうかしてるぞ?!


 もし……神器がなければ、僕は今頃脳の回線が焼き切れているのではなかろうか?


 持っててよかったリーサルウエポン【神器】!



「曲芸みたいに避けてるけど……いつまで続くのかな〜〜それ? ふふふ……」



 ただ、僕の曲芸回避をポッピーは称賛して鑑賞してる。1人の観客。

 僕がどんな気持ちで避けてるのか露にも考えず、アイツは魔力の弾を“芸者()”目掛けて撃ち出して笑ってる。


 ——ックソ!! お気楽かよ!?


 ニヤニヤしてるところが非常に憎たらしい!!


 今時の女子って奴は——人が死に物狂いで逃げ惑う様を見て笑うモノなのか? 


 って……アレ? 前にもこんな経験があったような?!













「——ヘクチッ! ヘグチッ!!」

「アッハッハ〜! ヘクチ〜ヘグチ〜!! だって!! あはは!!」

「うぅ……風邪かしら……これ……」

「アイリスちゃん! 面白〜〜い!」

「ヴェルテ! 笑い過ぎよ!! 何処が面白いの!?」

「アッハッハ〜〜♪」

 













 おっと!? こんなことを考えても仕方がない。


 今は回避に専念を……



「ん? 余所見かしら? 余裕のようね。お馬鹿さん」

「——ッ!? しまった!!」

「——はい、いただきました〜♪」



 弾を避けるために僕は宙に飛んだ。しかし、これが悪手だった。


 氷の弾丸は小さく、それでいて高速で飛来する。これでも十分視認しづらいのだが……最も恐るべきなのは氷の礫は光を反射し、眩く僕の瞳に映ることだった。

 ポッピーが放った魔弾は数十発——周辺はすっかりと氷に覆われダンジョンこうを反射して燦然さんぜんとした風景となった。

 すると……僕は顔面目掛けて飛来する1発の魔力弾を見過ごしてしまった。光に顔を顰め、一瞬まばたきしたのがダメだった。

 これに気づいたのは、地面から足を離してからだ。

 再び着地する時には既に手遅れ——その時は氷漬けとなったウィリアが落下するだけだろう。



「——ックソ!?」



 これに僕が取った行動は魔力弾を、手にしたレイピアで薙いで撃ち落とすというモノ——小さな氷の礫を数センチの刃でピンポイントで捉える。


 流石は僕だ。


 思わず自画自賛が飛ぶような見事な対応力と技術だが……


 この行動は……



「ふふ……剣で私の氷弾を受けたわね?」



 ポッピーを喜ばせるだけだった。



「——何!? 剣が凍って……」



 その理由に僕は一瞬で気づく……彼女の攻撃を防いだレイピアが重くなったのだ。

 驚いてレイピアを確認すると……弾丸を受けたであろう箇所が氷で覆われ、大きく刃に絡みついてしまっていた。



「どう? 驚いた? 私の魔弾はね。防いだらいけないの。盾で防げば構えることがままならなくなり、剣で防げば刃をダメにする——そんな氷の華を咲かせるの! どう綺麗でしょう?」

「…………」



 綺麗??


 きったね〜〜よ!! なんだその戦法は!?


 ただでさえ視認の難しい礫の弾幕。それは目まぐるしく連射が可能で、おまけに防御不可——相手の武器を奪うときたもんだ。汚い戦術だ!


 何が氷の華だ! ただ見た目に惑わせて腹黒いやり口を隠してるだけ!


 すっごく性格が悪いぞポッピー! 悪いのは口だけだと思ってたのに!?


 この裏切り者ぉお!!



「——アハッ! 黙ってどうしたの? ねぇえ〜早く武器を捨てて逃げれば? 慌てふためいてさ! もう、その武器は使い物にならないでしょう? それぐらい、馬鹿な脳みそでも分からない? ま、逃げても私の氷の餌食にしてあげるんだけどね〜♪ 『足掻くだけ無駄だ』って、そこだけは分かってるのかしら? ふふふ〜♪」



 ほ〜ら性格悪い。


 戦術的に汚ぇ〜氷の礫を飛ばし、口では汚ぇ〜罵声を浴びさせる(口撃)。


 僕——この子、好きになれそうにないわ!


 

「抵抗しないなら、それでも良いけど……。バ〜ン! はい、おしまい」



 ポッピーは目のハイライトを消すと、汚物を一瞥するように無情にも魔弾を撃ち出した。

 


 僕目掛けて——



 飽きて敵にトドメを刺すような所作を見せた。


 だけど……



 ——パキンッ!!



「……はぁあ?」



 僕がこのままやられてやるとでも思っているのかね?


 もう、負けるのはヴェルテちゃんだけで懲り懲りなんだよ。



 



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