第120話 レベル上げするしかないじゃん!
僕は逸る気持ちを押さえきれず、再びダンジョンへと舞い戻った。
というのも……
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♢ウィリアステータス♪♢
神器所持者【ウィリア】
Lv.1>Level up!>Lv.3
神器【虚と影】 Lv. 30《MAX》
攻撃 Lv.3 技量 Lv.3
魔力 Lv.7 魔防 Lv.7
速度 Lv.5 運命 Lv.1
抵抗 Lv.4
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この度——僕のレベルが上昇しました!!
——ハイ! 拍手ぅう!!
わ〜〜パチパチ! 1人スタンディングオベーション!!
もう、この事実を知ってからか、僕の廃れた闘志に火が灯った!
こんなのレベル上げするしかないじゃん——って思うでしょう?
——思うよね普通!?
だから、僕はこうしてダンジョンに舞い戻ったんだ。
ヴェルテちゃんに負けてから心がしょぼくれモードだった僕だった。だが、これに関して言えば、あの勝負は無駄じゃなかったと、そう思えてしまうほど「負け」との文字は匙に等しいモノである。
ただ……
「さて……手頃な魔物を倒したいところだけど……」
レベルアップを図るのはいい。
だが、肝心の魔物の姿が……
「ラビットブラン……全然いね〜じゃん。ヴェルテと調子に乗りすぎて狩りすぎたか?」
まったく見当たらないんだ〜これが〜。
今は2階層に来ているが、先程乱獲したラビットブランが1匹たりとも見当たらないのだ。
おそらくだが、ヴェルテとの狩り勝負で調子に乗りすぎた弊害。ウサギを仕留めすぎたせいで、奴らは危険を察して隠れてしまったんじゃないかと思うんだ。
僕だったら隠れる。ウサギの気持ちになれば自ずと分かる。人間とは恐ろしい生き物であるからよ。
ごめんよ〜〜罪なきウサギよ。君たちの死は、僕の血肉として吸収されている。無駄にはしないさ。
「さて、どうしようか? ウサギを狩るにしても、いないんじゃレベルの上げようがないよな」
困ったな——もう一度ウサギ狩りに興じようかと思っていたんだが。いないのは予想だにしていなかった。
「仕方がない。ここは奥に進んでみるしかないか?」
やむを得ないと思って、階層を進むことにした。
だって、ウサギいないんだもん。
もう潜るしかないよね? 他にどんな選択肢があるって言うんだ!
そこから……
あれよ〜あれよ~と……
「5階層まで来てしまった……」
3階層と4階層は1階層とほぼ同じ——一面の草原が広がるばかり、ただ広大な大地が存在するだけだった。
草の香りが鼻腔を擽り風は涼しく空気はポカポカと温かい。まさに昼寝をするには最適な空間だった。
それで、ここに現れた魔物だが……
『——ポヨポヨ〜♪ (春はあけぼの〜♪)』
顔なじみのスライム君だった。スライムに顔があるのかは謎だがな。
草原のど真ん中で、でろ〜んと伸び、天然広大な草のベットを我が物として寛いでいる。
『——ポヨ! ポヨヨン! (やあ青年! 気持ちのいい日和だな!)』
そんなスライム君は僕の存在に気づいていようが、その場でポヨポヨしてるだけで襲ってきやしない。
今の一瞬一瞬を最大限に満喫し、ただ生きてる喜びを噛み締め楽しんでいるようにも見える。
「さすがにな〜〜誰にも迷惑をかけず、ただ寛いでるだけのスライム君でレベル上げするのはなぁ……」
『……ポヨ! ポヨヨン? ポヨン? ポヨポヨ! (ナヌ! 変に殺伐としているのだな青年? どうだ、物騒な事は忘れて我の隣で一緒に寛いでいかないか? 風が気持ちいいぞ!)』
スライム君と僕の仲さ。無害なスライム君を屠るのは心苦しい。
何か別のターゲットを探そう。
『おや? 行くのかい? 達者でな! 深淵に潜るのなら気をつけろよ。この先は、進むほどに強敵が待っているのだからな!』
ダンジョンを突き進む僕をスライム君はポヨポヨと送り出してくれた。
んで、来てしまったのが5階層——冒険者協会の駐屯場のすぐ目の前だったと……
ここは、冒険者の仮拠点だ。ダンジョンに潜る冒険者をサポートしてくれたり、ダンジョンの外に出るまでもなく素材を回収、買い取ってくれたりする。
それと同時に——まだ未熟な冒険者がこの先に進まないようにする『壁』でもあるんだ。
だから、僕の行動範囲はここまで……
なんだけど……
「——ねぇ。あなた……」
「……ん?」
「そこで何してるの? 怪しい奴。そこで止まって……抵抗はせず、大人しく投降しなさい」
桃色髪の目つきの悪い女性に……
突然背後から声をかけられることになった。
さて……
どうしてこうなったかな〜〜??