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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第118話 “元”公爵令嬢の レッツ!リタ〜ン!憂鬱!

「ねぇ~あれって……」

「アイリス様よ。一体何があったのかしら?」

「とても不機嫌そう……」

「でも、眉間にしわが寄っていても、お美しい! 一体、何故なの!? キャ〜〜♪」



 周りの生徒達が私の噂をしている。


 そう——私は今、不機嫌なのよ!!


 昼間の試験結果を考えてしまうと、どうしても身体に力が入っちゃう。

 今は寮に帰る真っ最中——校庭を歩いていたのだけれど、きっと酷い表情を浮かべて居ることでしょうね? 今の私って。

 だって、あの“バカフレット”の顔が頭にチラついてムカムカしてしまってるの! 必死に楽しいことを考えようと頑張ってるんだけど、あのバカの顔の次に想起されるのはやっぱり試験結果のことだった。

 すると、必然的にあの男の顔がチラつくの、それと「30」の数字も!? 

 

 悪! 循! 環!


 あぁ〜〜ムカッとするぅぅうう!!



「きゃ〜〜今、アイリス様に睨まれたわ!」

「私もよ! その眼光で私を突き刺して〜〜!」

「あぁ……幸せ……もう死んでもいい……」



 というか、さっきから周りにいる他の生徒が私を見つめて頬を染めてるのよね? 


 私、きっと酷い顔してると思うのだけれど……これは、どういうこと??


 と私の脳裏が怒りと疑問が入り混じる。


 その時……



「——キャッ!?」

「——ッ!? あら! ごめんなさい。大丈夫だった?」



 前から歩いてくる女生徒とぶつかってしまったの。

 私は周りの反応に意識を割いてるあまり、つい余所見をしていた。

 


「……え、えっと……だ、大丈夫で——っひ!?」

「……ッ? どうかした? 私の顔に何か付いてる?」



 その子は肩口で切りそろえたユルフワで紫がかった黒髪の少女だった。


 どこか、見覚えがあるのだけれど……さて、どこだったかしら?



「大丈夫? 立てる?」



 それで、その子……尻餅ついてしまってたから、私は手を差し伸べて引き起こしてあげようとした。



「きゃ〜アイリス様! お優しい!!」

「私もぶつかって、お手をお借りたいわ〜!」

「あの子! ずるい! どこの子よ!」



 相変わらず、周りがうるさい。ただ手を貸すだけでしょう? 何を馬鹿なことで騒いでるのよ?


 

「——ん? どうしたの?」



 ただ、尻餅を付いたその子は、いくら待っていても私の手を取ろうとしなかった?


 どうしてだろう?


 と……しばらくその子を観察していると……



「……ご、ご、ご、ごめんなさい!! こ、殺さないでぇえええ!!」

「——ッえ!?」



 真っ青な顔で悲鳴をあげて逃げちゃった?! なんで??


 私も、周囲で一部始終を観察していた生徒も、みんなキョト〜ンとしちゃって、終始その場で固まってしまっていたわ。


 一体なんだったのかしらあの子?? そんなに私の顔が怖かった??


 殺さないでって……え? 死を悟って逃げるほど!?


 

「あそこまで怖がられると、ショックなんだけど……」



 みんなの目には私がどう映っているのかしら? まったく分からない。



「……ん? そういえば、あの子……」



 だけど、ここでようやく思い出した。あの恐怖のあまりに逃げ出した黒髪の子のことを——


 確かあの子、一般科の教室で見たのよ。

 ウィルが彼女に声をかけてて、「本を返さないと〜!」とか、なんとか言って、その時も逃げて行ったのを思い出した。


 名前は……【ミミル】だったかしら?


 え? もしかして、あの時も私に怯えてたの? 


 これ……ウィルが彼女に私のことを可笑しく風潮したんじゃないでしょうね?!


 だとしたら、腹立たしいわ! ——あの男!


 今度会ったら、剣の鞘でぶっ叩いてやろう。

 ウィルには彼女を説得させて、私に対するイメージを改めさせないとね。



 ——本当、あのチンチクチン! 許さないんだから!!

 




 ※ウィリアは印象操作はしていません。無実です。ただ、日頃のおこないが悪いので、おとなしく殴られるのは吝か。





「——ッあ!? お〜〜い! アイリスちゃ〜〜ん!!」


「……ん? あれは……?」



 突然、私を呼ぶ声が飛んだ。


 振り返って見ると、遠くから外套で身を包んだ1人の少女の姿が。大きく手を振ってこっちに向かってきていた。



「あら、ヴェルテ。おかえりなさい」

「うん! ただいま〜♪」



 その正体とは、早朝“仮冒険者”の認定試験に出かけて行ったヴェルテの姿だった。


 私の元まで駆け寄って来たヴェルテはニパッと笑っている。

 その表情をみれば試験結果なんて当然分かってしまうわ。私に向けてくれる笑顔は嬉しいんだけど、胸の中がチクチクする。私ってここまで嫉妬深かったかしら?


 軽く息を吸って深呼吸——ふぅ〜と息を吹いてはヴェルテに向き直る。


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