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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第112話 一方その頃 別の試験会場では?2

「アルフレッド……あなた……」

「ん? どうしたアイリス。そんなに目を丸くして……?」

「——どうした……じゃないわよ!」

「——ッえ!?」

「一体どうするつもりなの!? それ!!」



 あれから数時間——


 私は夢想ダンジョンへと足を踏み入れる。


 だけど、この隣に居る男ときたら……ッもう!!


 どうして、こんなのと組まないといけないのよ!?



 私の憂鬱な再試験が始まった。









「アイリス。君のことはこの俺が守って見せる。戦闘は任せてくれ!」

「あっそう。わぁ〜たのもしい。うれしいわ?」(棒読み)

「——ッ!? あぁ! 任されたよ!」

「…………」



 邪魔なアルフレッドも引き連れてダンジョンを進む。

 

 この時、私は揚々と息巻く彼に適当な返事を返す。


 だって鬱陶しいにも程があるのだもの……


 彼の持つ武器は魔杖——つまりは魔力を高める媒体なの。

 まず、近距離で戦うようなスタイルではないはず。

 なんで『はず』だと、曖昧な言い方をするのかは——まったく打ち合わせをしてないから。私の憶測でモノを言ってるだけなの。

 ダンジョンにチームで潜るなら、入念な打ち合わせ準備は必須なんだけど……この馬鹿男ときたら、何故か「俺に任せとけ〜♪」と先頭をズンズンと行って奥に進んでいってしまったのよ。


 あなた魔法使いでしょう?! どうして剣士である私の前を行くのよ!


 『君のことは俺が守る』ってどうやって守るつもりなのかしら? もしかして——肉壁?? 本当にそうやって使ってやろうかしら??


 と、彼の行動は私にとって困惑することだらけよ。


 ただ……このダンジョンは驚くほどに大したことはなかった。出てくる魔物はスライムだけだし……これは『夢境』と変わりない。

 こんな奴と一緒でも余裕に奥へと進むことができたの。

 だけど、ここ……何か不気味な感覚がするのよね? 

 ダンジョンが内包する魔力は沢山あるのに、出てくる魔物がスライムだけっていうのが腑に落ちない。

 まるで蓋をするかのように強い魔物が封じているような。何か鍵のような物が欠けているような印象?

 ほとんど抽象的で、私にもここが何なのか、結局は分からなかった。


 まぁ、そのことは置いておきましょう。


 考えたって答えはみつからないことだし、今は試験に集中するべきだから。

 

 事前にポイントの高い素材と、採取エリアは頭に入れてある。

 先頭をズンズン歩いて行くアイツも、最低限の知識は頭に叩き込んでいるでしょうけど、なんか心配。


 追いついて方針を聞き出さないと……



「アルフレッド! ちょっといいかしら?」



 先を行くアルフレッドに声を掛ける。

 

 最悪の場合、私が方向を示してあげなければ、とても高得点は目指せない。杞憂ならいいんだけれど……。


 だけど……


 この男はとても話が通じる生き物ではなかった。



「……って、アルフレッド? それ、どうしたの?」

「おお! アイリス。見てくれ! 高得点の素材を手に入れたんだ!」



 気づけば、アルフレッドは嬉しそうに大きな鉱石の塊を抱えていた。鑑別はしてないけれど……おそらく“鉄鉱石”ね。



「俺は、しっかりと予習してきたんだ。僕の記憶によると鉄鉱石はポイント30点がもらえるんだ」

「うん……そうね。確かにそうなんだけど……えっと……」



 えぇ、確かにアルフレッドの言う通り“鉄鉱石”は配られた冊子によると30点と記載があった。


 しかし……



「アルフレッド? そのぉ……意気揚々と息巻いてるところ悪いんだけど……鉄鉱石は40キロ納品で30点よ?」

「…………ん?」





 【鉄鉱石40000g 30点】


 冊子には、確かにそうあったの。





「いい、アルフレッド? ここは入り口から、かなり深く潜った地点なの。ここから40キロもの鉱石を持ち帰るのは現実的ではないわよ?」



 この馬鹿はキョトンとするものだから、優しく諭してあげた。本当は怒鳴り散らしたいところだけれど、私はもう貴族じゃないから、あまりズケズケとは言わない。実家に迷惑をかけたくないからね。



「それは〜〜ふふふ、心配ご無用。この俺に任せておけばいい。頑張ってみせるさ」

「いや、頑張ったって無駄よ。例えば、力自慢が最後の追い込みでドンと点数を稼ぎたいならまだしも……こんな序盤にする愚行ではないと思うのよ。私は、重いモノを運べる自信はないし、失礼だけどアルフレッド……あなたもそこまで力があるように思えないのだけれど」



 そう、どう考えても試験が始まって早々に走る行為ではない。入り口からほど近い場所で鉱脈を見つけたなら話は別でしょうけど、私達は深くダンジョンを潜り過ぎている。それは珍しい素材を見つけるためだったが……運悪く、この男は目先の鉄屑に目をつけてしまった。



「まぁ〜心配するな。僕はこう見えても力に自信があるのだよ」

「いや、だから力とか以前に効率が悪いと……」

「なら、ここは手分けしようじゃぁ〜ないか!」

「……は?」

「僕は鉄鉱石を入り口まで運ぶ。アイリス、君は他の素材を見つけてきてくれたまえ!」

「……え?」



 そう言ってアルフレッドは鉄鉱石の塊を抱えてUターン。走り去っていく。



「——ちょっと!? アルフレッド!!」



 私の呼び声にも反応せずね。


 どうしたら、ツーマンセル推奨の試験内容で役割分担だとか抜かして手分けしなくちゃいけないの?! 私のことを守るとか豪語しておいて、置いてけぼり? もう意味がわからない! この男には協調性って言葉が存在しないのかしら? まぁ、ないんでしょうね! だって現に私放置ですもの!!

 

 もう——◯ねばいいのにね!! バカフレット!!!!





 で、結局——





「はい——試験終了です。お2人の点数ですが……86点」

「ふむ。惜しかったな……もう少しで満点も狙えたというのに……なぁ〜アイリス?」


「…………」



 試験を終えて、結果は86点——一見、高得点を出したようにも思えるけど……稼いだ点数の内訳を知れば呆れてモノが言えなくなるわよ。



 アルフレッド 30点

 アイリス   56点


 合計     86点



 ね? 呆れるでしょう?


 私は握り締めた拳を、すぐ隣に居る男に振るわなかった事を自分で自分を褒めてあげたい気分よ。



「まぁ〜アイリス……なんだ。君は病み上がりだったからな。仕方ないさ。次こそは共に満点を目指していこうじゃ〜ないか。はっはっは〜〜!」


「…………」



 ねぇ……振るっていい? 


 今直ぐ怒りで握り締めた私の拳を、ケラケラ笑う男の顔目掛けて振るっていい!?


 ねぇ~誰か答えてよ!!


 もう怒りでおかしくなっちゃいそうなのよ! 助けて! 誰か許可ちょうだい!!


 なんでコイツ上から目線なの? 私の方が点数稼いでるのに! 結局、コイツは鉄鉱石しか——ック!? だから言ったじゃないのよ!!



「——アイリス……頑張ってくれたまえよ!」

「……ッッッ〜〜!!」



 ——あなたが頑張りなさいよぉおおお!!!!






 アイリスちゃんの可笑しな再試験——


 以上、終幕♪




     ♢冒険者試験結果♢


 1位 ウィリア ヴェルテ 6000点

※2位 アイリス ナメ太郎   86点

 3位 ーーーー ーーーー   85点

 4位 ーーーー ーーーー   74点

 5位 ーーーー ーーーー   73点

 6位 ーーーー ーーーー   71点

 7位 ーーーー ーーーー   69点

 8位 ーーーー ーーーー   69点

 ……








 







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