第110話 勝負開始!
「はい——い〜ち! に〜い! さ〜ん!!」
ヴェルテは腰にあったツインダガーを抜く。二刀の刃を右……左……と交互に振りかざしていく。その刃の軌道は角の生えたウサギ【ラビットブラン】が薮から飛び出たタイミングピンポイントでとらえ、彼女の口にするカウントはそれに呼応して増加する。
それも、彼女は一度たりとも外したりなんてしない。お世辞なしにしても見事だとしか言いようがなかった。
だって、ヴェルテの一閃はウサギの姿が見える前には振り翳されているんだ。まるで、そこに飛び出てくるんだと分かっているかのように。
終始ピコピコと耳が動いていることから、聴覚で敵の気配を察知しているんだろう。あれはチャームなお飾りではなかったんだな。
もし、彼女に知力が備わっていたなら、僕は迷うことなく彼女に先陣をきらせて斥候をまかせていたんだけど……これだけが非常に残念で仕方がないよ。
「——は〜ち! きゅ〜う! じゅ〜〜う!!」
と、そうこうしているうちにヴェルテの撃破数は大台に乗ってしまった。
やばいな。うかうかしてたらヴェルテちゃんに大差をつけられて負けてしまうぞ。
このままでは「ウィルだっさ〜」って睨め付ける視線を向けられ、すっかりマウントを取られてしまうのではなかろうか? あのヴェルテに下に見られるなんて!? そんな未来はゴメンだ!
せめて僅差で負けるぐらい頑張らんと……だけど……
それでも勝つつもりではやるよ。そろそろ反撃に出させてもらおう。
僕だって負けるつもりで勝負の提案をしたわけじゃないからさ。
「——神器ッ——虚! 影! 紫紺の糸——操糸!!」
僕は走りながら、虚と影を構え、森の中に糸を張った。
糸術【操糸】——糸を操ることで絡むことなく周辺を蛇のように蠢き林中を巡る。紫紺の輝きが森林に不敵にチラつき出した。
そして……
「——紫紺よ撓れ!」
両手の漆黒のレイピアに力を加える。柄に結びつけた糸を撓らせ、その弛む波を伝わせるために……
すると……
一瞬——ザワッと森が揺れた。そして、目の前には……
「「「——キュキュ!?」」」
白い角の生やしたウサギ——ラビットブランが飛び出してくる。悲鳴のような鳴き声を漏らして。
森に張り巡らせた糸を撓らせ揺らすことで、薮に隠れたウサギに糸を触れさせ表舞台に弾き出してやったんだ。
僕のレイピアを結ぶ紫紺の糸は魔力でできている。そのためか触れた物体を反発して弾くんだ。ウサギ程度の軽いモノなら簡単に飛ばせるぐらいにね。
それを〜〜……
「——刺突!!」
「——ッギュウ!!??」
——串刺し!!
レイピアの刺突でもって複数匹を一気に仕留める。
「はい。1〜〜から、5! そして、6〜〜から、10!!」
「——ッ!? はにゃ〜〜!!?? ウィル何それ!? すご〜〜い!!」
「——ふふん。僕だって負けてられないからね。これぐらいできるのさ!」
「むむ〜〜私も負けないもん!!」
ヴェルテは僕の曲芸もとい狩り技に目を輝かせた。そんな黄色い声を拾って、らしくもなくニヤッとする僕。
やっぱりさ。相手の意表をついて驚かれると、つい嬉しくなっちゃうよね? 僕ってイタズラ心が万歳なんだよ。
こういうこと考えてるとさ。あぁ〜〜僕ってまだまだガキンチョなんだろうなぁ〜って……思っちゃうよね。少し反省。
それに、自分でも驚いたのが、こんなに負けず嫌いだったかな〜〜って……この瞬間感じていた。
だって……ヴェルテが負けじと、さらにウサギを仕留めにいく姿を見て、胸の奥がワクワクしてるんだ。そんで、僕はそんな彼女に勝ちたいと思ってしまっている。これってつまり負けたくないってことだろう?
僕の中にもまだこんな熱い感情があっただなんて——廃れたモンじゃないな。
「ふふ……僕だって負けないさ! ゴールまで約半分——ペースあげていくよ!」
「あっはは〜〜♪ 私も本気だすよ! 魔法【風の加護】!!」
僕は速度をあげた。一度、糸の接続を切ると、再度森に糸を巡らせる。
伸ばした糸を再び手元に戻すのが大変だからこうして一度消してから再度広げることで時短に繋がる。
ヴェルテも、速度をあげた。風を二重に纏って速度は通常時の1.5倍ほど増している。
こうして、僕達のウサギ斬殺行軍は、高速で2階層のウサギを狩り尽くしていく。
基本昼12時過ぎに投稿するのが私の決め事なのですが……
遅い日がたたあることを、この場をお借りして謝罪!
すいませ〜ん!!
仕事が……仕事が私余裕をくれない?!
実は仕事の休憩中に最終チェックしてるんですが……休憩時間がなかったんです……
行ってる余裕がにゃかったぁ……ああ〜申し訳ない……
さて……
ヴェルテちゃんとの勝負の行方——どっちが勝つでしょう? 予想してみてください!