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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第106話 走るよ!

 さてさて、ヴェルテの心情が分かったところで、“追いかけられっこ”が継続していることには変わりなく、パイセン共は尚も僕たちを追ってきている。そして、その目的は不明であるった。


 さて……アイツらをどうしてくれようか?



「ふむふむ……ふむふむ……ッん? ねぇ、ウィル」

「ん? どうしたヴェルテ?」

「アイツ……『先輩として助ける』とか、何とか言ってる〜〜? これ、どういう意味??」

「——ッ!? ヴェルテはこの距離で何言っているかわかるのか?」

「うん。少しだけ。ギリギリ聞こえるの」

「……マジか。さすが獣人」

「むふふ〜♪」



 さっきからヴェルテは耳をピコピコさせて渋い顔をしてると思いきや、まさか盗み聞きをしているとは……けしからん奴だな。


 だが、グッジョブだ!


 僕では気配すらも気づけない距離なんだが……この距離で会話を聞き取るとは……。ヴェルテのその耳は単なるお飾りとは違ったようだな。



「“先駆者……として……教えて……これも……俺の……役目??” う〜〜ん? よくわかんない」



 ヴェルテは途切れ途切れと単語を拾って苦虫を噛む。

 だが……それを聞いた僕にはおおよその見当はついた。



「たぶんだけど……先輩風でも吹かせたいんじゃないの? 僕たちの事を後輩だって知ったから、“後輩を可愛がるオレ優しい”って見せつけたいんだろう。ソイツ」

「ふ〜〜ん? やっぱりよく分からない。“せんぱいかぜ”って何? 『ビュービュー!!』って吹くの??」

「知らんわ、そんなこと……『ふふ〜ん♪』って自慢げに吹くんじゃないの?」

「へぇ〜〜」



 ま、おおかた間違いないだろう。ヴェルテが吐いた単語で推理するなら、それぐらいしか思いつかん。

 大事な試験中、後輩のためを思って時間を割くとは……殊勝な先輩だこと。いや、結局は自分のためか? 

 見栄を張って後輩思いのできすぎた人間アピールを周りの女の子達に見せびらかし、きゃ〜きゃ〜言われたいんだから。本当、馬鹿な生き物。

 そうでもしないと死んじゃう病気にでも罹患してるのかね?


 ただねぇ……



「このままヤツらの思い通りになるのは癪だよな〜〜。う〜〜ん……そうだなぁ……うん、逃げるか?」

「うん? ウィル。逃げるって? どうするの?」



 このままの状態キープは全然面白くない。遠目からジロジロみられているんだ。こんなの不快でしかない。

 試験開始からしばらく経ったし、そろそろ本気出して2階層に向かう……と同時にヤツらを撒こう。



「ヴェルテ。走るよ」

「——ッ!? うん! 私、走るの得意!!」



 さて、少し本気を出してみようかな?



——魔法(びゅ〜びゅ〜)【風の衣】(風さん吹け)!」



 ヴェルテに走る提案をすると揚々と叫ぶ。するとたちまち風が身体を包み込み、彼女のローブはバタバタと激しく靡く。

 あれは魔力を纏ったんだ。一種の魔法だよ。

 別に彼女が魔法を使えるからって驚くことはない。ヴェルテのレベルは15——普通に魔法の扱えるだけの力量はある。どこかの『ナメクジビーム』とは訳が違うのさ。これはちゃんとした魔法だよ。



「ウィル! 先に行くよ! よ〜〜い……ドォーン!!」



 そして刹那——彼女が身体に力を入れると高速で駆け出した。一瞬にして彼女の身体は遠くへと飛んで行き、その姿はたちまち小さくなっていく。あのクルトンが見せたクルトンダッシュと遜色ないスピードだ。



「さて、僕も行きますか。ヴェルテちゃん……息巻いて飛んで行ったけど、2階層への道知ってるのかね?」



 さて、そうこうしているとヴェルテを見失いかねん。彼女のあとを追いますか……



「「「「——ッ!?」」」」



 足に力を入れて草原を駆ける。ダッシュと共に後ろから驚愕、慄く声が鳴った気がしたが、そんな事は気にしちゃ〜いられない。

 油断すればヴェルテに追いつけないし少し本気を出す。ま、全力の7割と言ったところか?



「何なのあの子達!? 物凄いスピード!!」

「口先だけじゃなかったってこと……あの後輩ちゃん?」

「むむむ……なかなかやるけど……アシルの足元にも及ばないわよ……うん、きっとそう……」

「ほう? さすが、一年生で仮冒険者の試験を受けるだけのことはある。簡単なレクチャーをしてあげようと思ったが……杞憂だったか? あれだけの実力があれば……うん、十分だろう」



 だが、僕はそれでもかなりのスピードを出せている。あのお花畑3人娘率いる先輩集団はついてこれまい。


 そして、憂いを絶ったのなら——このまま2階層を目指してしまおう。


 この間も僕は薬草を影に落としていってるし、あと必要なのは白ウサギだけ……アイツは2階層の方が出没頻度が高い。理にかなった行動選択さ。


 と……その前に……



「オイ! ヴェルテ!! どこ行くんだよ!? そっちじゃねぇええ!!」

「あははは〜〜私は速〜〜い!」



 あの風に酔いしれてる馬鹿犬を拾わなくては……アイツ一体どこに向かって走ってるんだ!? 

 2階層へと抜ける道とは逆方向に走って行ってるぞ!?


 

「ウィルも速〜〜い!! すご〜いすご〜い!!」

「——オイ!! 聞けヴェルテ!!」



 まったく、今度は僕が追う番かよ!? くそぉお!!













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