第103話 なんでついてくるんですか?!
「あの〜〜先輩? なんでついてくるんですかね??」
僕は思わずこれを聞かずにはいられなかった。その4つの気配、その先頭を歩く男に対して——
「おやおや。睨まれてしまったね。俺はウィリア君に本当に嫌われてしまったようだね」
振り返ってみれば、先頭を歩く男はやれやれといった様相で首を振ってみせた。
背後にいたのは、さっきの連中——アシル先輩と“不”愉快な仲間達である。
それと彼の発言に訂正を入れると、“嫌われた”——と言うよりは、“どうでもいいはずの人物を嫌いになりそう”ってのが本音だよ。
「そのやれやれってポーズいらないんで、質問に答えてくれます? なんでストーカーしてくるんでしょうか?」
そう。明らかにこの連中——僕とヴェルテをつけてきているんだよ。
パーティーのお誘いはキッパリ断ったと思うが、どうして引っ付いてくるんだ? 別に、未練もクソもないだろう? まさか、まだヴェルテのことを狙っているとか?
「はぁあ?! 生意気な後輩!! 言いがかりやめてよね!!」
「そうそう! 後輩ちゃん! あたし達は〜〜たまたま向かう方向が一緒なだけ」
「すぐ人を疑うなんて最低。アシルはストーカーじゃない。アシルに謝って」
「「そうそう! 謝れ〜〜!!」」
だが、僕の言葉に機嫌を損ねたのは取り巻き女共だ。「てめぇの発言は憶測による決めつけだ! 謝罪しろや!」と言ってくる。
試験前の一件のことがあるだろうに……憶測で片付けるのは些か無理ってものだ。脳みそお花畑は単細胞。どうやら考えることを放棄したようだな。
「——ッチ。はぁぁ……そうっすか。勘違いならいいんですけどね。関わりたくないんで……」
もう、僕自身も深く考えたくないから無視だ。暫く放置して様子を伺おう。
「「「何アイツ!!?? ムカつくんですけど!!!!」」」
舌打ち、ため息、皮肉に、無視——
僕は——これでもか!! って、態度で不快感を表現した。案の定、お花畑3人は声を荒げている。無視して、前を向いて再び歩き出してたからそいつらの顔色は窺い知れないんだけどね。
でも、きっと顔を真っ赤にして憤っているに違いない。本当に低レベルな連中だよ、まったく……
「まぁまぁ、3人ともそう言わずに……可愛い後輩君じゃないか?」
「「「——どこがよ!!」」」
お〜〜い! そこ、ハモるな! 僕のガラスのハートが粉々になるだろうが!?
「ウィル……大丈夫?」
あぁ……心配してくれるのはヴェルテちゃんだけだよ。可愛い奴め。頭、なでなでしてあげる!!
「うん。心配ありがとう。大丈夫だよ」
「むふふ〜〜♪」
でだ……
一度は追跡者に反応を示してみたが、そのあとは特に触れることなく歩き続けてみた。
だけど……
「ヴェルテちゃん? アイツらまだついてきてる?」
「うん……4人きてる」
「まったく、これで何が言いがかりなんだろ?」
僕は振り返ることなくヴェルテに気配を察知してもらった。どうも、さっきよりは距離を開けて付いてきてるみたい。僕にはてんで分からないよ。
だが、ヴェルテちゃんのケモミミは、アイツらの気配を読み取っている。流石は獣人だ。
「ところでヴェルテ?」
「……ん?」
「今、僕たちは一緒に行動してるけど、よかったの?」
「……? 良かったって何が?」
「いや……アイツらと一緒に行かなくてさ」
そんな、引っ付き虫に憂いている僕だったが、もう一つ気になる事があった。
それは隣を歩くヴェルテである。彼女は別に僕に付き合って付いてくる必要はないんだ。
呼んでみれば「うん!」と言って、二つ返事で付いてくるもんだから、流れに身を任せて現状にあるのだが。
彼女自身はどう思っているんだろう? 本当はアイツらの方がよかった——ってことはないのだろうか?
「えぇ~私、弱い人には付いて行きたくない」
「——ッ!? ほぉ~?」
すると、彼女から興味深い答えが返ってくる。
「私の部族もそうだけど、獣人は強い人が好きなの。だから、弱い人はイヤだし、私も強くカッコよくなろうって思ってるんだ」
「へぇ~……で、アイツは弱かったと? レベル聞いたの?」
「聞いてない。勝手に喋ってた。レベル7だって……でもね、その前から私気づいてたんだよ」
「……気づいてた?」
「うん。私、そういうの匂いで分かる!」
「匂いで?!」
へぇ~……獣人特有の特殊スキルか何かなのかな? もしくは野生の勘——みたいなものか?
でだ——ここで1つ思う事があるだろう。
アイツ……アシル先輩はヴェルテちゃんの話を聞くにはレベルが7なんだそうだ。
あれ? それだと、ヴェルテより強いんじゃないの?
って思うところだろう。
——しかぁ〜し!
ヴェルテちゃんって実は……
「私、レベル15だもん! アイツよりも強〜〜い♪」
“レベル15”なんだって……
僕より遥かにレベルが高ぇ〜や……