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僕だけは知っている〜〜そこがチュートリアルダンジョンである事実を〜〜  作者: バゑサミコ酢
第3章 ダンジョン攻略は思いがけない出来事の連続
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第102話 試験開始だ!

「みんな——準備はいいかい? それじゃあ、試験開始だ!」



 時間がきた。


 クルト()の後を追って、試験者はチュートリアルダンジョンに踏み込んで行く。門をくぐり、天高く伸びた塔の袂にある大きく尊大な扉をくぐれば、そこに飛び込んでくるのが一面の草原地帯だった。


 何言ってんだコイツ? ここ建物の中なんだぜ? 


 と思うかもしれないが、まぁ〜聞いてくれ。


 外から見たら、そこまで広くはなさそうに見えるのだが、中に入ると驚くほど無辺際なエリアが存在していた。これは、魔力によって塔内部の空間が拡大されている現象らしいのだが、詳しいことはこの世の誰にも分からない。冒険譚や神器の知識を持っている僕であってもね。

 ていっても、この世には分からない事が沢山ある。この現象もその1つだと思えば、対して可笑しいことでもないように思える。


 どうして空が青いんだ——とか?

 

 どうして僕という人間が存在しているのか——とか?


 この世界って一体なんなんだ——とか?


 ちっぽけな人間に分からないことなんていくらでもあるだろう? これも、その1つだと思えばさ、考えるだけ無駄だと思えてくるんだよ。

 ダンジョンってのは、そういうものなんだって考えてくれ。



 そこで、飛び込んできたのが遥か遠くまで広がる至って普通な草原だったわけだが……

 建物内だってのに風は吹いているわ。謎光源でダンジョン内は明るいわ。



 ——ぐぅ〜〜♪


「……お腹空いた」



 ヴェルテちゃんはいつも通りだわ。


 で、こんなの一々拾って考えてたら、きりがなくて頭が痛くなる。僕ってさ、無駄な事が嫌いなんだよ。すぐに疑問なんてのは思考の彼方へと追いやってしまった。



「じゃあ、みんな。僕はこれから2階層の出口まで向う。薬草の群生地は1階層。ラビットブランが出没するのは2階層からだ。そこで、採取、討伐を終えたら僕の元まで辿り着くこと。問題がなければ合格としよう」



 クルトンは広大な大地に慄く少年少女達に振り返って言う。



「ないとは思うが、もし危険な目……例えば怪我とか負った場合はすぐ周囲の冒険者、受験者に声を飛ばすこと。5階層までは危険は殆どないんだが万が一の時もある。試験の心配よりも自分の安全を常に意識しておいてくれ。引き際をわきまえておくのも冒険者としての心得だ。でないと、あるのは『死』なのだからな。肝に銘じておいてくれよ! では——試験開始だ!!」



 そして、注意事項だけ言い切ると、クルトンは開始を宣言して颯爽と走り去っていく。



「おい。なんだあの速さ……あれが一流の冒険者なのか?」

「すげぇよな。なんだよあれ……」



 試験が始まったのだから、わぁッと受験者が散らばっていくかと思いきや、その大半はクルトンの走りに絶句していた。いやはや程度が低い。

 あの程度、僕でも余裕で出せるが、口をぽかぁ〜〜んと開けて観察するもんなのかね?

 それに、クルトンの最後の注意喚起はなんだ? 確かに怪我を負えば試験どころではないし、『帰るまでが遠足』って言葉もある。安全に気をつけることは大切だが、1、2階層で怪我を負うような奴は、もはや冒険者のセンスはナンセンスだ。今すぐ回れ右して帰ってくことを推奨するよ。

 まぁ、この程度の低い試験のあれこれに呆れるのもいい加減疲れた。とっとと規定通りの素材、資源を刈り取ってクルトンの元へ向かおう。余った時間は、どうせなら横になってさ。のうのうと馬鹿どもが四苦八苦する様子でも眺めていようかな?



「じゃ、ヴェルテ行こうか」

「うん!」



 早速、ヴェルテに声をかける。彼女は元気よく返事を返してきた。やる気は満々のようだ。



「時にヴェルテは……薬草の採取場所、魔物の分布、階層の地形マップは頭の中にある?」

「…………う、うん……あ、あるよ? た、たぶん……」

「よしわかった。僕が前を行って先行するから、ヴェルテは僕のアシストをしてくれ」

「——ッ!? うんうん! 了解ウィル!!」



 ヴェルテちゃんがこの試験がどれほど意気込んでいるかを……一応確認だ。

 だが、お分かりだろう? 彼女の頭の中には何もない。

 だから、僕が前衛、斥候を担当——兼ガイドラインだ。できれば気配に敏感なヴェルテに斥候をしてもらいたいが、彼女を先行させればどうなるのかわかったもんじゃない。だから僕が買って出たんだ。結局、ダンジョン攻略のスタイルは学園での試験と一緒か。まぁ〜わかってたんだけどね。

 ただ、チュートリアルダンジョンの1、2階層なんて、役割を決める必要なんてないんだけど。もはやピクニック気分。だからコレでも十分大丈夫だろう。



 で……ところでさ……



 僕が草原を踏み締め歩き出せば、その後をヴェルテがついてくる。ここまではいい。だけど……



 ——ッザッザッザッザ……!



 背後から草を踏み抜く音が聞こえてくる。誰かにつけられているんだ。



 ただ……


 試験は始まったばかりだ。


 誰もが見当たる薮や茂みを見つけて、そこを目指す可能性だってある。だから、目的地が同じだって多かれ少なかれ、そんな連中もいるかもしれない。


 しかし……

 

 今、着いてきてるであろう気配がさ。なんと4つあるんだよ。


 この数字を聞いて何か思うことはないかい?





 




 




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