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試験内容と・・・学園の実力

 アリゾナの合図とともになるホイッスル、生徒たちは一斉にコースへ飛び込んだ。

 耳をつんざくような音が響き渡ると同時に、飛行能力を持った生徒たちが次々と空へ飛び出した。


「こんなもん、上から飛べば楽勝じゃん!」


 彼らは勢いよく加速していったが、次の瞬間――バシッ!

 突然、魔法の効果がかき消され、数人が真っ逆さまに地面へ落ちた。


「空は魔法無効化の結界が張ってあるのか……」


 俺が状況を理解する前に、アリゾナが呆れたように呟く。


「そんな楽なわけがないでしょう?」


 飛行魔法で抜けようとした生徒たちは、顔を歪めながらスタート地点に戻っていく。無策で挑むのは命取りだと悟った参加者たちが、慎重にコースを走り始めた。


「おい、ロロ、ヴィニー。魔法は使えるんだ。強化魔法を途切れさせるなよ。二人で切り抜けてこい。なるべく上位でゴールだ!」


「よーし! 見てろよ!」


 ロロは炎魔法の使い方を思い出しながら、意気揚々と走り出した。


 一方、ヴィニーはまだ躊躇している。


「ヴィニー、何をしてる! 落ちたら容赦しないぞ!」


「うう……やります、やりますよ!」


 ヴィニーも意を決して、走り出した。


 コースの障害物は、巨大な岩、回転する刃、そして魔法で動くゴーレムなど多種多様だ。ロロは素早く動きながら、炎の魔法でゴーレムを燃やし尽くしていく。


「おお! やるじゃないか、ロロ!」


「当然だろ!」


 一方で、ヴィニーは岩を避けるのに必死だ。


「くっ、もう限界……」


 彼がつぶやいたその時、俺は瞬時にサポート魔法を発動し、彼の動きを軽くした。


「助け無いと言ったが、まぁ黙ってろよ」

 ヴィニーは驚きながらも、コースを進み続ける。


「ちょっと待てよ、ルーシュ。お前はどうするんだ? 俺らを守るんじゃないのか?」


「悪いが、ここでは自分のために全力で行く。優秀なほうがこの学校での生活は楽になるからな」

 俺は言い終わると、軽く指を鳴らし、集中力を高める。全力で行く――。


~30秒でのゴール~

 試験開始から30秒ほど経ったとき――


「ビーーーーッ!」


 ゴールの合図が鳴り響く。


 ――一着は俺だ。


 ゴールに到達した瞬間、走っていた他の生徒たちが一斉に足を止め、唖然とした表情を浮かべている。


(この程度の障害物なら、防御魔法を全開にして走り抜けるだけで十分だ)


 アリゾナでさえ、目を見開いて驚いている。


「こんなもんか」


(このコースの長さだと、生徒たちの平均では早くても5分がいいところだろう。てか目立ちすぎたか?)


 さらに1分後、またゴールの音が響く。


「ビーーーーッ!」


 二着でゴールしたのは、真っ赤な髪に鋭い目をした生徒だ。


「やはりスザク様、二着でゴールです!」と一緒にいた一人が言う。


 スザク――その赤髪と自信満々の態度から、いかにも「俺様キャラ」の匂いがプンプンする。

「……誰だ、貴様。なぜ俺より速い?」


 睨みつけてくるスザクに、俺は軽く笑って嫌味を言った。

「そりゃ俺のほうが優秀だったんだろ?」


 彼の顔に一瞬、怒りが走る。


(1分半…こんな奴がいるとは……この学校、侮れないな)


「お前、覚えておけよ」


 スザクは不機嫌そうに吐き捨てると、そのまま去っていった。


(1分ちょいでゴールできる奴がもう一人……それにスザクに付き添う他4人が3分未満でクリアするとはな。こいつら、なかなかやる)



 その後、次々とゴールの音が響き渡る。大半の生徒たちは予想通り5分前後でのクリアだ。

 ロロとヴィニーも、なんとか7分でゴールする。


「ビーーーーッ!」


 ロロは息を切らしながらゴール地点にたどり着いた。


「上出来だ。15番目のゴールか。ざっと見積もって、この部屋が4つに分けられてるとして、60番目か……まあ、悪くない」


「やればできるじゃないか」


「ふざけんな、マジで死ぬかと思ったわ!」


 息を荒くするロロに、俺は笑って返す。


「試験で死ぬわけないだろ」


「いや、本当にやばかったです。途中で親切な人に助けられて……」


(ん? 親切な人? たまたまか? それとも……まぁいいか)


試験はまだ始まったばかりだ。だが、早くも実力者との競り合いが始まり、俺たちはこの学校の本気を垣間見た。


~筆記試験の苦戦~

20分が経過し、アリゾナが手を叩きながら言った。


「それでは、次の試験に参りましょう」


 現れたのは机と椅子。どうやら筆記試験らしい。


「休憩を兼ねた筆記試験です。なお、魔法の使用は禁止エリアなので、カンニングはしないように」


 そう言いながら、アリゾナはなぜか俺の顔をじっと見た。


(ふん、この程度の魔障壁なら壊すのは造作もないが……まぁルールに従っておくか)


 余裕ぶった俺だったが――


予想外の難問が待ち受けていた。


(なんだこれ!?全然わからん!!)


 問題の3割ほどが歴史についてで、しかもここ500年分の出来事ばかりが出題されている。

 魔法学校の試験だというのに、なぜこんなに歴史問題が多い!?


(くそ……髭のやつ、絶対に許さない……!)


 怒りに満ちた俺は、終了の合図と同時にアリゾナを鋭く睨みつけた。

 しかし、アリゾナはまるで気にする様子もなく、涼しい顔で立っている。



一方、俺とは対照的に――


「満点だな」

 ロロはニヤニヤしながら答えた。


「思ったより簡単でしたね。魔法学はルーシュ様に徹底的に叩き込まれましたけど、歴史が3割とかラッキーですよね」


「ラッキーだと?」


 今にもキレそうになった俺に、ロロが茶化すように言った。


「もしかして1500年間寝てたのに歴史を勉強してなかったとか?」


「寝てたとか言うな! 4、5日前まで1500年前にいたんだぞ!」


 それを聞いて、ロロもヴィニーも堪えきれず大笑いする。


「嘘ですよね?」

 二人とも笑いが止まらない。


(こいつら、この先もずっとネタにしてくる気だな……)


~魔力試験の開始~

アリゾナが再び声を響かせた。


「さて、休憩はここまで。次の試験に移ります」


 床が光り、次の会場へと転送される。


 たどり着いたのは最初の広場。会場の中央には、巨大な石像がそびえ立っている――試験官自身の姿を模したもので、〈ダニマイト石〉という特別な鉱物でできているようだ。


「次の試験は魔力試験です。このダニマイト石――世界最高の強度を誇る物質で、魔王が消え去った後に痕跡のある場所から発掘された、大変貴重なものです」


 試験官は誇らしげに続ける。


「この試験では、目の前にある2m四方、厚さ50cmの板に傷をつけることが目的です。攻撃は本気で行って構いません。」


 順番はランダムで進行されていく。前衛系の生徒たちは、剣や体術に魔法を付与し、力いっぱい叩き込むが――板に傷一つ付けられない。


「なかなか硬い石だな……俺でもこんな物質は見たことがない」

(この時代のことは、まだまだ知らないことばかりだ……)


 ヴィニーが静かに教えてくれる。

「この鉱物は魔王の結晶とも呼ばれています。魔王がいなくなった後、魔王の痕跡のあった場所で発掘されました。非常に貴重で、こんな試験で使うのは……」


「傷をつけられないなら、また使い回せるってことだろ? それに、ヴィニー、お前もそろそろ敬語をやめて慣れろよ」


「そ、そんな……私がロロ様やルーシュ様にタメ口なんて……!」


 慌てて手を振るヴィニーに、ロロが笑いながら言う。


「ヴィニー、敬語使ったら罰金だからな」


「そんなぁ……」



 そのとき、会場がざわつき始めた。


「なんだ?」


 ロロが周りを見渡すと――


(あいつだ……体力試験で2番だった赤い髪の男)


 スザクが順番に呼ばれ、板の前に立つ。


「お前ら、見に行くぞ」


 俺は指を鳴らし、瞬時にスザクの近くへと移動する。


 スザクは俺たちの存在に気づき、低く呟いた。


「よく見とけ」


 その様子を見守っていた近くの少女に、俺はスザクについて尋ねる。


「なぁ、あの赤い髪の奴、何者だ?」


少女は少し驚いた様子で答える。


「スザク様ですか? 彼は16歳にして学園歴代最高と言われる、スザク・アズナブル様です……!」


 少女の言葉を聞いて、俺はさらに興味を深めた。


(なるほど……あいつがこの学校での頂点か。面白くなってきたじゃないか)


(アズナブル家の出か。なるほど……あいつがこの学校での頂点か。面白くなってきたじゃないか)



~威圧的な詠唱~

 スザクが詠唱を始めた瞬間、周囲の空気が変わり、場の雰囲気が一変する。


(なかなかの威圧感……見事だ)


 ピリピリとした魔力の緊張が肌を刺すようで、ついその動きに魅入ってしまった。


「フレイマ・レディー……アインス、ツヴァイ、ドライ、フィアー、フュンフ!」


(五段階上級魔法か。こいつ、やはり上位魔法使いだな。しかも炎系……)


「ロロ、見とけ。お前と同じ炎使いだぞ」


(詠唱時間20秒か……かなり早いな)


 スザクの魔法が発動すると、ダニマイト石の板を中心に赤い光が広がり、激しい爆発音が轟く。


 爆炎と熱風が周囲に広がる中、その威力に思わず驚きを漏らしてしまう。


「この学園……面白い」

 その言葉は無意識のうちに口をついて出た。


 粉塵が晴れ、ダニマイト石の板が姿を現した瞬間――


 完全に粉砕されていた。


 先ほどまで2m四方あった石板が、見る影もなく崩れ去っている。


 髭の試験官も、想定を超えた結果に明らかに動揺している様子だ。



 スザクは爆心地からゆっくりと立ち去ろうとしていた。


「すごいな。良い魔法を見せてくれた」

 俺はすれ違いざまに声をかけたが、彼は目も合わせず、そのまま通り過ぎようとする。


「アズナブル家……勇者の家系だな」

 その言葉を口にした瞬間、スザクの足がピタリと止まる。


「お前、なぜそれを知っている?」

 背を向けたまま、問いかけてくる。


「ちょっとな」

(やはりこの時代では知られていない話か……)


 スザクの声が鋭くなる。

「その話はするな。殺すぞ」


 彼はこちらを振り向かないが、睨みつけるような圧力を感じた。


(ふん、触れられたくない秘密ってことか)

「怖い怖い」


 俺は軽く笑って返した。すると、スザクは何も言わず、そのまま静かに消えていった。



 その後も試験は続いたが、スザクほどの力を見せる者は現れなかった。しかし、彼の取り巻きたちは石板を半壊させるほどの実力を見せている。


(あいつら……取り巻きもなかなかだな。バランスが取れているし、全員後衛か)


 時代は後衛職が重宝されるようになっているらしい。おそらくこれも一つの流れなのだろう――何かが動き出している。


 全体の状況を見渡してみても、まともに実力を持つ者は50人ほど。そのうち9割が後衛という偏りようだ。だが、稀に前衛でも興味深い者が見られる。とはいえ、総数としてはかなり少ない。


次の挑戦者――ヴィンセント・アインシュタイン

「ヴィンセント・アインシュタイン、5番会場へ」


 会場にアナウンスが響いた。

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