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弱い前衛と・・・頼らない後衛

少し森を移動すると、鼻をつく血の臭いが漂ってきた。


「やはりダメだったか。血の臭いが濃い……それに」


足元に、無惨に転がる数人の死体が視界に入る。


「3、4……あと一人はあそこか」


目を凝らすと、少し大きな木の根元に一人の男がうずくまっている。かろうじて息はあるようだ。


「息があるな。喋れるか?」


服装と装備から判断して、Aクラス先遣隊のリーダーで間違いない。


「助けてくれ……死にたくない……」


彼は必死に訴える。


「すまないが、助からない……」


そう告げると、男は低くうめき声を上げた。



「状況を教えてくれ」


男の痛みを和らげるため、治癒魔法をかけながら促す。


「ありがとう……俺たちは村に着いた。森の状況を偵察するため、ひとりを向かわせたんだ。すぐに戻るはずだった……でも、戻らなくて、全員で森に入った。奥には進むなと言われてたんだが……少し歩いて気づいたんだ。たった20分も進んでないのに、そこは最奥だった……」


悔しそうに唇を噛む男の目は、すでに虚ろだ。


「その幻影魔法に気づくのが遅れて囲まれて……このザマさ……」


「辛い思いをしたな。遅れてすまない」


「2体だけ……異常に強かった……何もできずに、次々やられた……気をつけろ……」


その言葉を最後に、男の手から力が抜け、冷たくなっていった。


「くそっ、最初からこんな……」


――ドォォオン!


突然、森の奥から大きな音が響いた。


「展開が早いな……あいつらか」


俺は音のした方へ急いで駆け出した。




「ひぃっ! こっち来るなぁ!」

ダンの情けない声が森に響く。彼は5体の魔物に囲まれ、逃げ惑っていた。


「おい、ダン! もっと粘れ! 詠唱ができねぇだろ!」

魔法使いチップが怒鳴る。


「私の守護盾プロテクタも、もう持たない……早くして!」

聖職者キキが苦しそうに言うが、前衛の2人が敵についていけず、後衛の善戦も意味を成していない。


「こいつら……強すぎて……ぐはっ!」

格闘家ハルが吹き飛ばされ、大きな木に叩きつけられた。


それでも、魔法使いのデールが詠唱を終え、2体の魔物を撃破する。


「まだいるぞ! 立て、お前ら!」


「次の詠唱まで粘れって言ってんだ!」


しかし、ダンは固まって動けず、ハルは意識を失ったままだ。無防備な後衛に魔物が迫る。


「くそっ、間に合わん……」


必死の詠唱も、どう考えても時間が足りない――その時。


「またせた」


――パチン。


指を鳴らす音と同時に、残りの魔物3体が燃え尽き、灰と化した。


「お前、Eクラス……?」


呆然とするチップを一瞥し、俺は手を伸ばした。

「立て。止まってる暇はないぞ」


まだ戦いは終わっていない。次々と新たな魔物が押し寄せてくる。


「前衛が戦わねぇと、後衛は何もできないんだよ」

俺はダンを見据えた。

「お前が怯えて止まったら、パーティー全滅だぞ」


「でも……」


「信じろ、仲間を」


ダンは怯えた表情のまま、剣を握る手が震えていた。


「仲間を信じられねぇなら、今すぐその剣を捨てろ。だが、それなら戦場に立つ資格もない」


ダンは歯を食いしばり、震えをこらえながら剣を握り直す。


「……やる、俺が守る!」


「それでこそ前衛だ」

俺はフッと笑い、次はキキに向かって言った。

「ハルを頼む。ダンが踏ん張るから、お前ら後衛も気合を入れろ」


「ええ、任せて」

キキはハルに治癒を施しながら、微笑む。

「ダン、あんたならやれるわ」


「チップ、デール!」

俺は振り返り、魔法使いコンビに声を飛ばす。

「一番強い魔法、用意しとけ! 威力はどれくらいだ?」


「最高出力なら森ごと吹っ飛ぶぜ!」

チップが胸を張る。


「それで十分だ」

俺は笑みを浮かべる。

「全力でいけ。あとは俺たちが時間を稼ぐ」



ダンは震える手で剣を構え直し、深く息を吸い込んだ。

「やるぞ……俺が守るんだ!」


俺はその姿を見て、満足げに頷く。

「そうだ、その調子。お前が守れば、俺たちは勝てる」

こっそり補助魔法を使い全員を強化する。



「さっきの魔法。威力がどれだけ出せるか教えてくれ。」


デールが先に答える。

「範囲を絞れば、森一帯を焼き尽くせる。ただし、発動には最低でも三分はかかる。それと……あんたも巻き込むかもしれないぞ。」


「それで十分だ。」


「おい、本気で言ってんのか?」

チップが驚いた声をあげる。

「あんた、Eクラスだろ? その魔法に耐えられるなんて無理だぞ!」



俺は無言で周囲の様子を一瞥し、前衛のダンに目をやった。彼はまだ震え、剣を握る手が頼りなさそうに見える。


「ダン、まだ怖いか?」


「……ああ。怖いよ。俺には、無理かもしれない……」


俺は彼の肩に手を置いた。

「それでいい。それが普通だ。だが、戦わなければ皆が死ぬ。お前が戦えなきゃ、仲間は守れない。それでも前に出るんだ。」


「……でも、俺……」

ダンは唇を噛んでいたが、しばらくすると震える手で剣を握り直した。

「わかった……やってみる。」


「それでいい。お前はそれで十分だ。」


次に、俺はチップとデールを見やる。

「三分で全力の魔法を使え。あとのことは俺がどうにかする。お前たちは詠唱に集中しろ。」


二人は目を合わせ、不安そうにうなずいた。

「分かった。やるしかないな……」


魔物の数は30を超えていた

一体一体は大したことがないが異様に連携が取れている。

そしてその奥に2体魔王の気配を漂わせる縞々模様の魔物が2体・・・


魔物たちは次々と押し寄せてくる。前衛のハルは意識を失い、ダンは立ち尽くしていたが、ついに覚悟を決めたのか、一歩前に出る。


「ぐっ……来いよ!」

ダンが叫び、剣を振り回す。無様でも、その姿勢に何かが宿っていた。


後衛のキキは、震える声で《守護盾プロテクタ》を展開し、ダンの背後を守り続ける。


「よし、いいぞ。そのまま耐えろ!」

援護しつつ奥の2体を牽制する。

(コイツラを抑えておけばコイツラなら勝てる)


しかし、魔物の勢いは止まらない。次々に湧き上がる異形の群れが、まるで森そのものが生きているかのように襲い掛かってくる。


「詠唱はあとどれくらいだ?」


「あと一分……!」

チップが焦りながら答える。

「くそっ、もう間に合わないか……」


魔法使いの2人の魔力に気づき縞々2体が俺の一瞬の隙をつき

2人に迫る


「しまった!」

その時、俺は指を鳴らした。


パチン──


その音とともに雷が走る、空気が一瞬にして凍りついたように変わる。魔物たちは魔法使いの手前で動きを止め、わずかに後ずさる。

(ここまでできるかコイツラ)

少し本気にさせられて焦る



「雷魔法……Eクラス、お前。」

 俺は一歩前に出た。

「集中しろ、チップとデール。最後の詠唱を仕上げろ。」


ダンは体を震わせながらも、必死に魔物の攻撃を防ぎ、キキの回復魔法を頼りに立ち続ける。


「すぐ終わるぞ……!」

チップが息を切らしながら叫ぶ。

「あと……十秒!」


俺は笑みを浮かべ、最後に一言だけ告げた。「これが俺たちの勝利だ。」


そして──


「フルフレイムメテオ!」



轟音と共に、森一帯が炎に包まれた。

岩系と火系の混合魔法で隕石ってか

俺のこっそり補助魔法もあってかいつも以上の火力に少し動揺する2人

縞々2体も魔法にあわせて俺がとどめを刺していた。

というかあの威力でも倒せないと踏み攻撃をしたわけなのだが・・・



しばらくして、炎の嵐がようやく収まり、森の中は静寂を取り戻した。焼け野原となった大地には、もはや魔物の影もなかった。


「……生きてるか?」


俺の声に、デールが咳き込みながら答える。

「なんとか……」


キキが疲れ切った様子で、ハルを抱き起こしていた。

「これで……終わり……?」


「そうだ。終わった。」

俺はダンの肩を叩いた。

「よくやったな。」


ダンは放心したように俺を見上げた後、小さく笑った。

「……ありがとう。」


「これで分かったか?」

俺は彼ら全員に視線を向けた。

「前衛がいなければ、後衛は何もできない。そして、後衛がいなければ、前衛は生き残れない。」


「お前たちは一つのチームだ。それを忘れるなよ。」


チップとデール、そしてダンは静かにうなずいた。

彼らはようやく、互いを支え合うことの大切さを理解したようだ。


「これがパーティーね」

 嬉しそうに聖職者キキが言う



「そう言えばEクラスお前なにもんだ?」

 全員がこっちを見る



「荷物持ち」

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