第2話 転生・・・そして魔王復活
「はっ」
寝てしまったのか?
体を起こすと、周りの様子が異様に感じられる。
「起きた?」
次は女性の声だ。
「あなた、リロイに運ばれてきたのよ?」
リロイ?さっきの倉庫の男か?
「ここは?」
「ここは診療所よ。疲労が溜まってたみたいね。ポーションと睡眠で少しは良くなったと思うわ」
カーテンを開け、眼鏡の女性が顔を見せてきた。
「ありがとうございます」
まだ混乱している何から聞けばいいのか?
「《天国の城》のマスターのどなたかと会いたいのですが?」
やはり俺の建てたギルドから詰めていくのがいいだろう。
「《天国の城》?マスター?先生なら私もそうだし、職員室にでも行けば誰でもいるわよ?」
もっとわからん…先生?何がどうなってる?
「今って6350年ですよね?いや6346年か?」
「ふふっ、何言ってるの?7796年よ?」
「え?」
(1500年後、いや1446年か。クソ、きりが良いから重宝してたのに4年ずれてやがる。
それにほぼ1500年経ってるって何だよ。魔王は?今世界はどうなってる?)
「あっそうでしたすみません。あの、魔王って今どうなってるんですか?」
無理があるがごまかして聞いてみた。
「魔王?魔王なんて前の決戦で討伐されてからいないでしょ? 6150年? 忘れちゃった。歴史の先生にでも聞いてみて」
ますますわからん。
6150年はあいつと封印した年で間違いない…
しかし討伐?封印しただけだ・・・
その後復活していないのか?
ズキッ頭が痛む。
「・・・・・・だ」
あの時の魔王の声?
「次は1500年後だ」
なぜだ?
あの時思いも出せなかった魔王の最後の言葉だ…
1500年後?
色々考えていると外が騒がしい事に気づいた。
「なんかにぎやかですね」
と外のことを聞いてみた。
「そうなの。今日は王国の預言者様が見た予言の日…
《災厄の復活の日…一つの悪が大いなる空を囲う時、一つの光が同じく復活す》
って知らないの?魔王なんておとぎ話であって誰も信じてないけど、預言者様の言葉はいつも当たるの。それに光ってのが勇者が生まれるとも言われていて…」
その時、空が突如として暗闇に包まれ、まるで世界が一瞬にして消え去ったかのようだった。
「やはりお前も来ていたか…また続きをしようぞ」
その声は、脳内に直接響くような、不気味な響きだった。
「待て!魔王か!?」
段々と視界が明るくなってきた。
「何今の?本当に予言が?」
聖職者は怯えながら話す。
同じような症状になったようだ
「今何か聞こえましたか?」
一応確認した。
「何?音?真っ暗で何も聞こえなかった…というより何もなかったみたいな感覚で…」
魔王が復活したのは間違いなさそうだ。それに光の復活は多分…
カシャッと窓のカーテンを開けると、見慣れた景色が一変していた。
「な、何なんだここは」
「えっ?なにどうしたの?」
眼鏡の女性も覗き込む。
外に広がる世界は今まで見た何よりも広大で、同じ王国とは思えないものだった。
「城が5倍ぐらいになってる…」
「お城?何百年もあんな感じだよ?君なんか変だね?」
不思議そうに笑っている。
「はい…す、すいません」
「あらごめんなさい私ミライよ。よろしくねルーシュ君」
良くなったとすぐにその場を出た。
話をしても良かったが、あまりにも時間が進みすぎて話が噛み合わん。
先に情報を足で稼ぐか。
「分身クローナ、加速ヘイスタ」パチンと指を鳴らす。
俺は指で魔法陣を描き、指を鳴らすことで発動させる。
これは《詠唱短縮》のスキルを発展させたもので俺だけの能力でもある。
指に魔法陣を描けば0タイム発動も可能な能力だ。
色々制限もあるが、それはまた後日でいいだろう。
足で稼ぐと言ったが、分身を作り高速移動ですべて見るとするか。
それで俺自身はこのギルドと城を調べるとするか。
形や構造は多少の変化があっても、俺が作ったギルドで間違いはないようだ。
というか、若いからか一人称が自然に俺になってるな。まぁいいか、おっさん臭くなくて。
しばらく見回ってみたが、しかしやばいな、まさかと思ったが多分《天国の城ヘブンズキャッスル》じゃないなここ…俺の肖像画に銅像、俺のお気に入りの玄関まですべてなくなって改装されている。それになんかガキが多い…
まさかさっきの眼鏡の女性が「先生」って名乗ってたし学校になってたりしないよなぁ。
てくてくと門扉の方に向かうと案の定《RVR SCHOOL》学校になっていた。
せめてレイシュルト・ヴィ・ルーシュの略だと信じたいReverence Violet Royal(違った~)
俺はがっくりと肩を落とした。
「くそっ次は城だ」
城に向かって走っていく。
「にしてもでかくなったな…5倍じゃすまなさそう…ん?」
ガシャガシャと音を立て周りに人が集まってくる。
騎士みたいなものに囲まれる。
「何事だ?」
威圧する。
「おとなしくついてきてもらおう」
一番派手な鎧が言う。
「理由がない失礼する」
俺はその場を離れようとするが
「後悔するぞ?」20にも近い鎧が剣を抜く。
「誰に言っている?剣を抜くとは覚悟は出来ているんだろうな?」
パチンと指を鳴らすと、半数の鎧が吹き飛んでいく。
「次は殺るぞ?」
指を構えると。
「これ隊長、物騒ですぞ?」
奥から怪しげな男が向かってくる。
「しかし身元不明者で警戒しろと」
派手な鎧が答える。
「警戒しろと言ったがやりあえとは一言も言ってないですよ」
強気に怪しげな男が言う。
「しかし舐められるわけには!」
「下がれ」
怪しい男が言うが…鎧の男は動かない。
「聞こえないのか?」
もう一度鎧の男に言う
ビビったのか派手な鎧男は
「ッ、失礼します」
と言い下がっていった。
「本当に失礼しました見苦しいものをお見せして」
怪しい男が一礼する。
「で?」
俺が返す。
「これはすいません。私王国大臣クルムと申します。何かと不便かと思い、お迎えに上がりました。ル・ー・シ・ュ・様。」
「胡散臭い男だ」
はっきりと言う。
「いえいえ。若いのにお口のほうが達者で…おっと失礼もう何百歳でしたか?」
なにか知ってそうな表情で続ける。
「俺のこと知っているのなら説明しろ」
「それは私の仕事ではございませんのでこちらへ」
次回予告!
大賢者レイシュルトが1500年の時を超えて見たものは、予想だにしない未来の王国。
そして、再び現れた宿敵・魔王。その正体とは?
急速に変わった世界で、彼は新たな仲間を見つけることができるのか?
次回、「魔王復活・・・今の王と王子様」。
予測不可能な展開が待ち受ける。お楽しみに!