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第15話 恋心?!・・・戦闘に私情を挟むな

「すまんな、わがままで連戦しちゃって」と、控室で仲間たちに謝る。

彼の声には疲れが滲んでいたが、その表情はどこか満足げだった。


「いいよっ、かっこいいとこ見れたから最高!」

リリスは明るい笑顔を浮かべており、彼女の反応はまるで子供のように無邪気だった。


「でも明日お前だけ1戦になってしまうよな」

と、ロックが心配そうに言った。


「ん~、それもそうだな。なんか考えるわ」

と、少し考え込み、そしてゆっくりと首をかしげた。


「それより次お前たちだよな。頑張ってこいよ」

と、彼らを鼓舞する。


「はいっ、一生懸命勝ってきます!」

リリスは拳を突き上げ、気合を入れた。


「明日の決勝楽しみにしてろ。おれが潰してやるよ」

と、ロックは既に決勝を見据えている様子だった。


(お前さっき気が早いとか怒ってなかったか?)

俺は心の中で苦笑いした。


その時、デン君の声が響く。

「さてさて、予定とは少し変更になりましたが、2回戦第3試合、リリスVSロック、因縁の戦いがまもなく始まろうとしています!」


会場の期待が高まる中、デン君は続けた。

「リリス選手は齢12歳にして前衛組のリーダーを努め、昨日の戦いではロックPT5人を1人で倒すといった偉業をこなしています。一方、相手は全滅させられたロックPTリーダー、ロック選手。ここで負けるわけにはいかないリベンジマッチと言ったところでしょう。」


「2回戦の戦いの見どころはこの1戦ですね。メロさんはどう見ますか?」

デン君が解説者のメロに振る。


「ロック選手は本当に負けられない戦いになると思います。しかし、ポテンシャルの高いリリス選手は一筋縄でいかないでしょう。見どころはロック選手の攻め方、それにどう対応していくかになってくると思います」

とメロは冷静に分析する。


「ありがとうございます。まもなく時間です。よろしいですかぁ?」


フィールドは森、どちらも利点のあるステージだ。

緊張感が漂う中、デン君の声が響く。

「2回戦第3試合 READY~FIGHT!」



先に動いたのはロックだった。彼は森を駆けていくと同時に詠唱を始めている。彼の心には、勝利への焦りと仲間たちへの責任感が渦巻いている。


それに比べ、リリスは真正面から突っ込んでいく。若さゆえの自信からか、戦略はほとんどない。しかし、彼女は直感を信じている。


「またコソコソとせこい手使うのっ? 昨日は5人、今日はかくれんぼ正々堂々と来てよっ」

と、リリスは挑発する。その言葉には彼女なりの正義感があった。


「リリス選手、棒立ちですね。それに比べ、煽られてもコソコソと勝ちを狙いに行く姿勢は見習うべきなのでしょうか?」

デン君が実況する。


(ロックのやつ、勝ちに執着しすぎだ。正々堂々とやりあったほうが実力を出せるだろう)

心の中で思う。自分がロックをパーティーリーダーに選んだ理由を知っているからこそ、その変わり果てた姿が痛々しかった。


ロックは慎重に動いていたが、その様子は明らかに不安定だった。どこか心の中で、戦うことへの躊躇があった。昨日の敗北が彼に影を落とし、彼の思考を狭めていたのだ。彼は、再び自信を取り戻す必要がある。と、この次の展開をみつまでは本気で思っていた。



「ロック選手は攻めづらそうですね~。やっぱり気になる女性には攻めにくいのでしょうか?」

デン君がその様子を楽しげに実況する。


「ん~、ロック選手がそれに気づかれてないと思っているのも、馬鹿ですよね。目も合わせられないくせに、どうやって攻略するんですかね?」

メロが皮肉を込めて返す。


その会話を耳にして、ルーシュは眉をひそめた。

「え? 何、こいつら何言ってんの?」


「はぁ……お前も鈍い部類だったな」

と、横にいるジャックがため息をつく。


「待て待て、何の話だ?」

おれは好奇心を抑えきれず、詳しく聞きたがった。


「だから、ロックはリリスが好きなんだよ。あんな若い子に恋心を抱くとは、あいつも犯罪者だがな」

と、ジャックは冷やかすように言った。


「それ本気か? なんでそんなの分かんだよお前」

と、驚きを隠せなかった。


「おれだけじゃない、みんな知ってる。見てたら分かるだろ。リリスにだけきつく、リリスには本気になれていない、こういう時にしか話に行けない。メロが言ってたように、目も合わせたこと無いんだぞ、あいつ」

と、ジャックは自信満々に続けた。


(やばい、全然知らなかった。なんか態度がおかしいと思っていたが、そういうことだったのか……)


「ふふ、鈍い子はどこにでもいるわ。リリスちゃんも熱心にアピールしているのに、可哀そう」

と、レインがおれを見てからかうように笑った。


「へぇ、リリスもそうなんですか。そういうのって気づいてあげてほしいですね」


「ダメだ、こいつ」

と、ジャックとレインは声を揃えた。


その時、試合は続いていた。


「リリス、残念だがもう包囲させてもらった。お前が動く度に攻撃の手がやまない。そういう状況だ。諦めて投降してくれ」

と、ロックは冷静に宣言した。


「なによっ、なんにもしていないじゃん。早く出てきてよ!」

と、リリスは不満をぶつける。


「おお~っと、ロック選手、狭い範囲で魔法を駆使し、リリスを閉じ込めたようだぁ。ここで試合が動くかぁ?」

デン君の声が高まる。


「ならここで終わりにする」

と、ロックが詠唱を始める。彼の魔法が発動しようとしていた。


「そ~れっ。ナイアガラ・フォール!」

と、リリスが叫ぶ。


その瞬間、剣を振るった先のロックの周囲に、26メートルほどの範囲が水しぶきを上げ、吹き飛ばされてしまった。たちまちその場所は更地となり、ロックの魔法陣も全て消えていった。そして、ロック自身も吹っ飛ばされていった。


「これは予想外! ロックの戦術が一振りで消えてしまったぁ」

と、デン君が驚愕の声を上げる。


「この範囲はすごいですね。一撃でここまでできたら、誰も勝てませんよ」

と、メロが感心する。


「さて、この後ロック選手はどう出るのでしょうか?」

デン君の興奮が高まる。


「ねぇ、もう良いでしょ。最初の頃みたいに真正面から戦おう」

と、リリスが提案する。


 確かに、訓練の最初の頃は正面からやりあっていたはずだった。パーティー戦術にこだわりすぎていたと思っていたが、実はただの恋路に迷っていたのだ。


「お前は何もわかっていない……おれがどんな気持ちで戦って、どんな気持ちでお前のことを考えているのかっ!」

ロックは心の内を吐露する。


「おお~っと、ロック選手、これは告白でしょうかぁ?」

デン君が興奮しながら言う。


「回りくどい、これじゃリリスにはわかりませんね」

と、メロが苦笑する。


「何だこれ? 何見せられてんの、俺たち?」

おれは完全に困惑していた。


「良いじゃん、これはこれで面白い」

と、ジャックとレインは笑いを堪えている。


「さて、ロック選手、次はどうやってアピールするのでしょうか?」

デン君が興味津々で問いかける。


「リリス、これを受け取ってくれ」

と、ロックはポケットから何かを取り出そうとしていた。


「だ・か・らっ! 呼び捨てにしないでよ!」

リリスは剣を振り上げ、滝のような攻撃を浴びせる。


「ま、待ってくれ、だからこれを……ゴボボ!」

ロックは水しぶきの中で溺れそうになりながら叫んだ。


「うるさいっ、そんな攻撃待ってられるか!」

リリスは次々と攻撃を繰り出す。


「違っ……す、す、き……な、ばばんだだ」

と、ロックはもう何を言っているのかわからなくなっていた。


「そもそも、なんでこのタイミングで告ってんだ、このバカ」

と、呆れ返った。


その瞬間、ジャックたちは腹を抱えて笑い、会場全体が笑いに包まれた。ロックの告白と試合の行方は、まるで一つのコントのように盛り上がっていた。



「ここで一通り攻撃がやんだかぁ? ロック選手、生きているのかぁ?」

デン君が興奮を抑えながら実況を続ける。


水が引き、現れたのは横たわったロックの姿。彼の周りには、氷爆された氷の残骸が散乱していた。


「もういい、お前を倒してちゃんと告ってやる」

ロックはようやく本気モードに入った。彼の眼差しは真剣そのものだった。


「デッドゴーレム……」

と、ロックが唱え始めると、彼の腕が硬化し、見る間に3倍ほどに膨れ上がった。


「やっと本気なのねっ」

と、リリスは少し驚いた様子で言った。


「おれは最初からお前に本気だ」

と、ロックは心に秘めた想いを告げる。


「これ、話噛み合ってないよな? こいつら」

と、おれはジャックに確認した。


「あはははははは!」

ジャックは声を上げて笑った。


「バージョン・ツー」

ロックはさらに詠唱を続ける。今度は足が3倍に膨れ上がり、まるで3メートルほどの岩のゴーレムのような姿になった。


「最後だ……バージョン・スリー」

全身が固まったロックは、防御特化タイプとなり、まさに無敵の姿を誇示している。

しかし、彼の攻略はこれを超える威力が必要だ。これで苦戦したこともあるのだ。


リリスも自らを磨き上げ、全身からオーラを放っていた。

「じゃっ、耐えてみて。アイスア~フォールッ」

と、彼女の必殺技が響く。


カス音の指を鳴らすと、ロックはこの攻撃を耐えなければならない。

リリスの攻撃が来ても、ロックは微動だにしなかった。


「おれはお前のすべてを受け止める!」

ロックは叫ぶ。その瞬間、大きな滝のような氷が頭上から降り注ぎ、彼の周囲を覆い尽くした。


「耐える、おれは何が何でも耐えるぞ!」

ロックは力を込め、魔力を上げ続ける。


その時、リリスが何気なく言った。

「そうだっ、いつも思うんだけど、それ気持ち悪い」


パリンッと音が響く。ロックのゴーレム形態が壊れたのではない。他の何かが破裂した音がしたようだ。


「私の氷は…爆ぜる」

リリスは指を構え、音を鳴らす。


ペチという音がして、次の瞬間、大量の氷に包まれたロックの周囲が圧縮され、派手にその場を吹き飛ばした。

周りには何も残らず、地面は5メートルほどもえぐれていた。しかし、その奥には一つの岩の塊に見えるロックが落ちているのが見えた。


「ロック選手、耐えたか~?」

と、デン君の声が響く。


「けど、動きませんね?」

と、メロも続ける。


そのまま1分ほどが過ぎた。

「あれっ? ロック、生きてる?」

リリスが心配そうに言った。


「ねぇ、これどうなってんの? もう一発撃ったほうが良いの?」

リリスはカメラに向かって話しかけた。


「ええと、この状況はダメージが酷いと強制退場ですが、退場してないってことは動けるはずなんですが……」

集音魔法がロックに近づく。


微妙な音が聞こえてくる。何かを呟いているようだった。


「もうダメだ……おれはこの先どうやって生きていけば……ダメだ……ダメだ……ダメだ……ダメだ……」

ロックの声が途切れ途切れに響く。


「ええと、もう良いでしょう。戦意喪失により、リリス選手の勝利!!」

と、デン君が宣言する。


この集音や実況は選手には聞こえていない。ロックはひとりでに失恋し、ひとりで病んでいくのであった。


「まぁ、あれ耐えたんでロック選手のレベルはわかったので良しとしましょう」

と、メロは冷静に情報収集を続けていた。彼の目には、戦いの中で得た新たな知見が映し出されていた。


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