第14話 賢者と知る者・・・1日3回戦目
フィールドは山。
足場が悪い。川沿いの場所からのスタートだ。15分という制限時間、多分近い場所でスタートになると思う。
そう考えていると、林から光る何かが見える。
(目立ちすぎだろ)
俺は楽しんでいた。
パチン。
指を鳴らし、光の方向を斬撃する。
ガゴォォォン。
弾かれたようだ。
(早々気づかれるような攻撃じゃないんだがな)
俺は距離を取りながら戦っている。しかし、思っているより早い。ジワジワ詰められているような気がする。
「ここで1つ試してみるかな」
俺は構え、少し時間をかけて右手を左から右に動かし、指を鳴らした。
飛ぶ斬撃だ。前方150度ほどカバーする斬撃が木々を投げ倒しながら飛んでいく。飛距離は50mほど、アーサーは余裕で範囲内だ。
頭上に影が写った。
「そりゃ上だわなっ」
パチンッ。
俺は仕掛けておいた魔法陣から上下同時に斬撃を出す。アーサーは体を捻り、弾き、突っ込んでくる。
俺は後ろに飛び跳ね、攻撃を避ける。
すぐに切り返してまっすぐ殴ってくるアーサー。
左腕の《ベンテンディア》が攻撃を弾いてくれる。
(スピードは遅い。十分対応できる)
アーサーが間合いを詰めてしゃがみ、アッパーを放つ。それを待っていたかのようにパチンと音を鳴らした瞬間、斬撃がアーサーを全方位から襲う。
「どうだ?」
俺は先程の大きい斬撃とトラップタイプの斬撃を試している。
複数の斬撃は時間がかかるのだが、先に魔法陣を複数仕掛けておいて指を鳴らすと、指定した魔法陣が発動する仕組みだ。それを使い、誘い込みまとめてぶっ放す。ハマれば防ぎきれない量を浴びせられる。
と、思っていた。
「全然効きませんよ」
粉塵の中のアーサーがピンピンしていた。
「なるほど。そういう仕組みか」
メロも気づかなかった先程のレインの魔壁が消えた正体。アーサーの周囲、もしくは指定範囲の魔攻撃を封じる力、封印魔法だろう。
「もう気がついたんですか?先程の戦い見てなかったと言っていたので、一気に詰めて決めるつもりでしたが、なかなか慎重な人なんですね。」
「さっき賢者ってバラしてなかったら、ここで決められていたかもな。」
アーサーはこっちが賢者だと知っているからあえて突っ込んできていた。斬撃が物理攻撃だと今の戦法が通じないからだ。魔法と知って打ち消すつもりで突っ込んで来ていた。
「失敗しましたね。でも、どうしますか?相性最悪ですよ?」
アーサーは攻撃の手を止めない。
(厄介だが、吸収して蓄え強化するタイプじゃなくてよかった)
「知ってるか?速い攻撃ほど威力は高いんだぜ」
俺は攻撃を捌いている間に、できるだけ斬撃の用意をしていた。
「いつのまにっ!?」
アーサーの目の前で指を鳴らした。
パチンッ。
音と同時に、アーサーが吹っ飛んでいく。
「やっぱ限界があるんだな」
20mほど吹っ飛び、仰向けに倒れたアーサー。
「流石に強すぎですよ……」
(それにしても2/3は封じられた。今の量が最低限必要ってことか、この後そんな隙を作ってくれるかな?)
10分が経っていた。
「ギア……フル・ジャスティア」
アーサーが唱えた。
綺麗な青白い光の翼をまとい、急接近し攻撃してくる。
もう1段階強化されたようだ
「かっこいいな、それ。なかなか面白い」
(こういうのが楽しめるのも前衛の特権よなぁ)
「もう決めますよ……チャージ、ブルー・リジェクティア」
翼のようなオーラが右手に集まって、ものすごい勢いで振りかざされた。
「悪いな、本命はこっちなんだ」
パチン。
落ち着いて指を鳴らした。
その瞬間、勢いと右手のオーラが消失し、膝をつくアーサー。
「えっ?」
状況がわかっていないアーサー。
「良い能力だな。この先が楽しみだ」
刀を抜くように腕を振り抜き、指を鳴らす。
突きのような軌道の斬撃だ。それに大剣でするような威力で回転を加えてある。
それを食らったアーサーは、鎧を消滅されながら勢いよく直線に吹っ飛んでいった。
岩にぶつかると同時にフィールドから消えていった。
「ふぅ」
一息ついた。
「試合時間13分、ここで決着だぁ!!!」
デン君はいつまでも元気だ。
「メロさん、この状況どうお考えですか?」
「はい、最後の力は大きく、アーサー選手は今後みんなから警戒される手強い相手になりそうですね。それに比べ、まだ余裕な感じが嫌なルーシュ選手はまだまだ隠し玉が多そうです。早くやられればいいのに」
(だからなんであいつはアンチキャラなんだよ)
まったく……と思いながら、俺はアーサーのもとへ行った。
「アーサー、大丈夫か?」
「ルーシュさん、ありがとうございました。なんか一気に力が抜けて疲れました。何したんですか?」
「ちょっと大掛かりな魔法使ったんだ。お前と一緒、《封印魔法》だな。ちょっと俺のほうが強力だったけど」
「なるほど、体力まで持っていかれるとは怖い魔法ですね」
「色々制約もあるし、戦いながら強力な魔術使うのはやっぱ難しいよな」
(やっぱ前衛と後衛揃ってこそだな)
「なんで身分隠してまで前衛してるんですか?」
「話すと長い。俺のこと知ってるならロロのことも知ってるんだろ? 今日の夜、俺の部屋に来てくれ」
「わかりました、お邪魔させていただきます」
これで俺の今日の戦闘は終わった。一日に3回戦、疲れた。やっぱこの体、体力魔力半分以下だな……