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第8話 学園の日々③ 昼休み

 そして四時間目が終わり、教室が騒がしくなる。


「ハルト。食事にしましょう」


 隣に座っていたミツキが、立ち上がって俺の席にまで来る。


 入学から僅か三日目なのだが、多感な年頃の男女ということもあってかクラスでは仲良しになったグループが幾つも見られて、三々五々お喋りを始めている。


 ミツキも入学当初は大人気で告白する男子も多数。しかし昨日の俺との対決があり、加えて今日の一時限目での暴挙? の話があっという間に学園中に広まっていて、その影響は色濃い。


 だから俺とミツキの側に寄ってくる生徒はいない。一人もいない。皆気にしている目線はあるのだが、その色合いには警戒と忌避が強い。遠巻きにして誰も近づいては来ない。


 確かに良くも悪くもミツキとは近しくなれた。それは素直にとても嬉しいことだ。しかし今の状態は……と思っていると、そんな俺たちに話しかけてくる生徒が二人、いた。


「ハルトくん! ミツキさん! 食堂、いきましょう!」


「昨日の様子だと急がないと席が埋まってしまう。急いだほうがいい」


 シャルとユーヴェだった。


 この二人は俺たちの学園内での暴虐? にも関わらず、以前と同じように接してくれる。態度を変えないし、二人ともミツキを警戒したり忌避したりはしない。


「そうね。早くいかないと日替わりの三色ソーセージがなくなってしまうわね」


「ミツキさん。ソーセージとか、割と見かけによらずに庶民的ですね! ファンが増えるかもしれません!」


「ファン……。初日までいたファン……居て欲しくはないのだけど、今日の一時間目の乱暴でいなくなったでしょうね。昨日に引き続いてハルトに執着すると宣言したし。もう校舎裏で告白してくる人や恋文を送ってくる男子もいなくなって……正直ちょっとした解放感」


 ミツキは両腕を軽く上にあげて伸びをする。


「これで堂々と、ハルトとずっと一緒に過ごせるわ」


「え? ずっと一緒? 俺たち?」


 いや、その素直に好意的な言葉が嬉しくないという事はないのだが、ミツキがそんなことを言ってくるとは思ってなくて少し驚いてしまった。


「キャッキャウフフと一緒にはしゃぐわ。私たちの年齢だと成人式も済ませていて、早い人だともう結婚する年よ」


「結婚!?」


 驚いてミツキの目を見る。黒い瞳が妖しく悪戯っぽく輝いている。本気なんだか嘘なんだかわからないところが、なんとも言えずドキドキして怖くもあるところだ。


「ただ……」


「ただ……?」


 口内に溜まった唾液をごくりと飲み込んで、こわごわとミツキに先をうながす。


「稽古があるからはしゃぐ時間があるかしら? ハルトが稽古から逃げ出したのを捕まえて引きずりまわす手間もあるだろうし」


「俺、逃げ出すの? っていうか……引きずりまわす……」


「逃げ出した場合にはね。容赦する必要はないどころか、私を越えてもらわないと困るのだから、そういう訓練になるわね。どうしても。最初はスライムを鞭打つ様な仕様になるのが……今から考えると少し鬱だわ」


 ミツキは本当に悩ましいという顔付き。冗談を言っているようには全く見えない。


 俺、鞭うたれるの?


 いや、ミツキとの訓練を楽しみにしてないことはなかったんだけど。


 え? 王城での訓練さえ投げ出さなかった俺が……逃げ出すの?


 ――と、少しひとりごちに花が咲きそう? になったところでユーヴェとシャルが締めてくれた。


「とまあ、ハルトとミツキさんのペアが無事できたところで、食事だ。ハルトはパンと肉野菜のスープがあれば満足だろうが、シャル用の本日のデザート、木苺のプディングは数が限られている」


「急ぎましょう」


 シャルは急にスイッチが入ったとばかり、俺たちを促す。


 二人の言葉に従って、俺たちは教室を出て食堂へ向かうのだった。

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