第20話 蹉跌
勝つ。そしてやり直し。世界を上書きする。
何度やってもうまくいかない。同等の能力なのになぜかハルトを倒してしまう。
やり直しを何度もやってわかったのだが、私の現在のレベルとハルトの成長限界レベルは同じらしい。ならば二回に一回は私が負けるはずだ。なのにハルトに倒されることが出来ない。
この間……手をこまねいていたわけではない。
何度も自殺を図った。
だがレイピアで自分を貫こうとした時、あるいは塔から飛び降りようとした時、身体が固まって動かなくなるのだ。そして、どこからともなくベルフェゴールが現れる。
「死んじゃダメだよ。君は勇者と対決する運命なんだから!」
と、こちらの想いなど素知らぬという顔でのたまうのだ。
遠くへ逃げようとしてもできない。
王国から遥か離れた森の中で身体が動かなくなって、その時もベルフェゴールに連れ戻された。
「逃げるのダメだよ。何度やり直してもいいし勇者を鍛えてもいいけど、運命の対決の時にはキミは全力で勇者と殺し合わないとね。ボクが審判者だよ。ズルとかテヌキはユルさないよ」
やがて運命の対決の日がやってきて、操り人形の様にベルフェゴールに引きずられて大広間に向かう。
私の想い、努力、涙は……未だに届かない。