ふしぎな腕時計
あっくんは、何をするのにも時間がかかります。
朝、起きてからごはんを食べるときも、だらだら だらだら時間をかけて食べます。
トイレものんびり。
制服に着替えるときも、ぐずぐず ぐずぐず。
そんなふうだから、いっつも学校には、ぎりぎりで着くのです。
げんちゃんが言いました。
「おまえ、いっつもぎりぎりだな。ぎりぎりぎりすけ
って呼ぶことにするわ!」
それから、みんなに、
「おーい、ぎりぎりぎりすけ ちょっと消しゴムとって!」
とか、
「ぎりぎりぎりすけ、おそいぞ!」
なんて言われるようになりました。
あっくんは、 ぎりぎりぎりすけ なんて変なあだ名はいやなんです。
とぼとぼ学校から帰っていると、めがねのおばあちゃんがやってきました。
「おや、どうしたんだい?」
「ぼく、何をやってもぎりぎりなんだ」
「それはこまったね。この透明な腕時計をはめてごらん」
腕時計なんてどこにあるのか全然みえないのに、めがねのおばあちゃんが、あっくんの右腕にはめてくれました。
すると、ピッと音がしました。
「これで大丈夫。明日の朝はうまくいくよ」
めがねのおばあちゃんは、そう言ってどこかへ行ってしまいました。
次の日の朝。
あっくんが、起きてごはんをだらだら食べていると、ピッと右腕がなりました。
「あっ、そうだ。急がなくちゃ」
制服を着るときも、ぐずぐずしてると、ピッと音がします。
そのたび、あっくんのスイッチがはいります。
学校にも、いつもより早く着きました。
そうして、1週間がたちました。
透明な腕時計のおかげで、あっくんは、ぎりぎりぎりすけ じゃなくなりました。
げんちゃんが、
「おまえのあだ名、変えてやる。 しゃきしゃきしゃきすけ にしてやるよ」
「え〜、いやだよ〜」
あっくんが言うと、みんなが笑いだしました。
あっくんも思わずふきだしました。
窓の外で、すずめもチュンチュンわらっていました。