橋田彰の場合
「今回のテストどうだったー?」「ボロボロだよww」「補習サボリてーー」
「今回平均50いかなかったらしいよ?」「まじで?どんだけムズいんだよ」
クラスに落胆の声が広がる。中には開き直っているものもいるが。
俺は自分の点数をもう一度覗いた。
「100点」
正真正銘の満点だ。誰かに見られないように急いで机にしまう。
「おい〜彰くぅーん、何点だった?」
光一が絡んでくる。こいついつもよりテンション高くないか?気持ち悪い。
「俺は35点だ!彰は?」
「俺は…俺もそのくらいだ」
「そのくらい?ごまかすってことはもっと低いんだな!」
「うるさいなーほっといてくれよ、そういえばC組の子がお前のこと
可愛いて言ってたらしいよ」
「まじで〜??どの子だろー、見てこよーっと」
単純なやつだ。光一は良い奴だ。良い奴なんだがうざい。
ー数日前解いたこのテストに自信があった。恐ろしいほどに。
全ての解法が恐ろしいほど思いついた。
何故だ?特に勉強方法も変えていない。そりゃ10点くらい上がったのだったら嬉しいし、ラッキーだなと思う。ようやく勉強の成果が表れてきたのだろうとすら思ったかもしれない。けれど普段の俺の点数は平均より少し低い30点くらいなんだ。
「橋田、あのな、どんなに点数が悪くても、それは不正行為をするより立派な
ことだ。」横内先生が言う。とても苦しそうな顔で。
「先生は俺がカンニングでもしたと思っているんですか?正直この点数は自分
でも怖いです。でも断じて後ろめたくなるようなことはしてません!」
「じゃあ何だこの点数は?一気に70点も上がるか?申し訳ないが君を疑って
いる。塾に通い始めたか?家で勉強するようになったか?」
「ち…違います!何もしてません。でも不正はしてません!」
「分かった。同じ問題をもう一度解いてみてくれないか?もしまた満点が取れ
たら疑ったことを謝罪しよう。でももし解けなかったら処分を受けてもら
う」
緊張していた。とても。
もし解けなかったら俺はどうなるのだろう。親を失望させたくない。学校で嫌われたらどうしよう。このままカンニング野郎として学校生活を送るのはごめんだ。
目の前に問題が差し出される。
先生の目線が痛くて怖い。
けれど公式が次々と浮かび、一問一問解いていった。
先生は丁寧に式を書いている俺にすまなかったと詫び、けれども怪しむような目つきで俺が指導室を出るのを見送った。
自分が一番知りたい。お世辞にも頭は良くない。膨大な量をこなしているという訳ではないが、予習復習はきちんとして、それでこの成績なのだ。
一体自分に何が起きてしまったのか。
いや、何が変わってしまったのだろう。
そして俺はこれからどうなるのだろう。




