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悪女の前の日本で生きた記憶が覚醒したのは、悪女として3回目の生を謳歌している真っ最中のことだった
生前、社会人だった私は新入社員としてブラックな企業に務め、ヘトヘトになって家に帰って浴槽に使ったまま居眠りをして溺死してしまったみたい。
そうして、悪女、レティシア・スカーレットとして転生を果たした。
レティシアは悪逆の限りをつくした。1回目の生では根っからのヒロイン気質であり、ローゼ王国の聖女でもある異母妹のセシリア・スカーレットの才能と器量の良さに嫉妬し、嫌がらせに嫌がらせを重ねて、セシリアを自殺にまで追い込んでしまう。その後、嫌がらせの黒幕だとバレて、1回目は悪女として処刑されてしまった。
2回目の生では、1回目の記憶を引き継いだセシリアが、回帰した時に引き継いだ記憶を頼りにレティシアに仕返し。王国建国祭でレティシアの悪事を暴露と糾弾をして、レティシアの地位を脅かした。
それだけでは復讐は終わらず、処罰として身分をはく奪されたレティシアを自分のメイドとしてこきを使うだけ使い、最終的には濡れ衣を着せて、処刑され2回目の生は終わる。
レティシアは妹という身分と、平民という卑しい身分というだけで、貴族であろうと努力をしないのに周りから可愛がられるという境遇の嫉妬から、セシリアを虐めていた。
反対に、セシリアはレティシアに復讐したのは並々ならぬ事情があった。2回目の生の時、レティシアの母親は、当時メイドの身分であったセシリアの母親が父親の寵愛を受けているのを気にくわず、殺害の計画を企て、実行した。つまり、敵の娘が私というわけだ。
そうなれば、母親を殺した娘に復讐心を抱くのは想像に難くない。
理解できる……が、それに関してはぶっちゃけレティシア件、現私にとってはとばっちりだった。
虐めたのは私が悪かった。どんな理由であれ、虐めはだめ、絶対。けれど、特に2回目の生では完全に私が預かり知らぬ私情と、倍返し以上の復讐があったことはたしかだ。
つまり、この3回目の生で、セシリアは私になにかしらちょっかいを出すことは考えればわかるし、私もちょっかいを出せば1回目、2回目の生と同じようなバッドエンドが待っているというわけ。
……それは、絶対に嫌だ。
そんな訳で、3回目の生を受け、生前の記憶が蘇ったレティシア・スカーレット8歳は、人生のターニングポイント、17歳を迎えるまでスカーレット家、並びにこのローゼ王国からの大脱出計画と、人生計画を企てることにした――。