チェス部・・・爆誕!
異世界転生して早一週間。とりあえずできるだけの情報を集めた。この世界では、女性の顔面偏差値が反転してること。スクールカーストやその他のカーストが前の世界よりも顕著に表れていること。これは前のボウリング会場にいた美人の人達みたいなことだな。前の世界では、公で体よくパシリに使うのはDQNくらいだ。あのグループは少なくとも男の方はさわやかイケメンだったしDQNってことはないだろう。
あと、近親婚ができるみたいだ。なんでも近親者同士では劣性遺伝子が結びつきづらいとかなんとか。健常者同士だったらいいのだろうか。俺にはよくわからないが。ま、美愛が結婚を申し込んでくることはないだろう。つまり関係のないことだ。
明日からは学校だ。準備は今日のうちに済ませたし、今日は早く寝ようか。そう思っていると、部屋がノックされ、美愛が入ってきた。
「どうした?」
「お兄ちゃん明日から学校でしょ?だから、少しでもエネルギーを補充したくて・・・一緒に寝よ?」
ぐはッ。なんていう破壊力。俺でなきゃ倒れちゃうね。
「ああ、いいぞ。こっちにおいで」
「やた!おじゃましまーす」
「美愛も明日から学校だろ?三年生か・・・受験、がんばれよ」
「うん!お兄ちゃんと同じところに行きたいもんね」
「ああ、お兄ちゃんもだ」
俺がこれから通うことになる高校は部活が盛んだ。マイナーな運動部もあれば、何をするんだよっていう文化部もある。俺はチェス部に入るつもりだ。なければ作る。そして、チェス仲間を作るんだ!俺はこれまでオンラインで会話もなしに淡々とやってきたのだ。そろそろ、対面で読み合いをしてみたい。
俺は上椿高等学校の門をくぐり、新入生にクラス表を配っている先生らしき人物のもとへ行く。紙を受け取り自分のクラスを確認する。か、か、加藤はーお、九組か。一番最後のクラスだな。この学校は一クラス四十人だ。その中で俺の出席番号は十二番だ。
時間的に俺が一番最後に教室に入ることになる。少し緊張するな。俺は深呼吸し、意を決してドアを開ける。そして衝撃の光景が俺の目に飛び込んできた。ブス多すぎる。いやね、予想してましたとも。その予想を軽々と超えるほどの光景だったのよ。
俺は黒板に張り付けてある座席表に目を通した。これ以上こいつらを見てると吐き気がする。俺の席はーっと。お、一番後ろじゃないか。俺は一番後ろの廊下側から二番目の列だった。割と当たりじゃないか?
席に着き、荷物を置き、一息つたところで現実逃避をやめようか。となりめっちゃ美人なんですけど。緊張しまくリングですわ。ちょっと何言ってるかわからない。と、と、と、とりあえず話しかけよう。
「ごきげんよう。私、加藤優と申しますわ」
え?なんか変。俺なんか変。いつの間にお嬢様になったの?俺。さて、これを聞いて変な人だと思われなければいいが。俺は思考を放棄して彼女を見つめる。
「ご、ごきげんよう?私、う、上田麗奈と申します」
URだー!!ってそんなことどうでもいい。ええ子やなー。結婚したい。嘘です。出会って数秒で結婚できるほどのメンタルは持ち合わせていません。
「あ、ああ。上田さん。これから隣の席同士仲よくしよう」
「え?わ、私なんかと?いやいや、や、やめておいた方がいいと思いますよ」
「なんでさ」
「だ、だって私、こんなブスだし。仲よくしているところなんて見られた日にはいじめられちゃいますよ」
ええ子やぁー。自分の心配より他人の心配ができる子なんて。しかも謙虚!でも、謙虚すぎるけどなー。もっとちやほやされてきたんだと思ってたんだが。ってここ異世界じゃないか。
「いや、俺は見てくれ美人より、性格美人の方が好きなんだ。それに上田さんの容姿はきれいだ」
「ふぇ?い、いまなんてーーー
「おい、ホームルーム始めるぞー」
上田さんがなんか言ってた気がしたが俺は意図的に無視をする。女性にきれいなんて言ってしまったのだ。さすがに恥ずかしい。
「俺の名前は倉重京谷だ。ここ、一年九組の担任だ。よろしく頼む。えー入学式まで一時間ほどあるから自己紹介しろ。一番から」
急だな。この担任。効率厨か?まあ、それが別に悪いこととは言わないけど。ゆとりをもっていこうぜ。俺たちはゆとり世代なのだから。
自己紹介は上田さんの以外聞き流した。どうせ覚えられないし。上田さん、かわいかったなー。
「う、上田麗奈です。え、えーっと好きな食べ物はも、ももです。よろしくおねぎゃいます」
好きな食べ物もかわいいし噛んだところもかわいい。でも、クラスメイト達は侮蔑のまなざしを向けていた。おい!俺のまいすいーとはにーになって視線向けてやがる。ここは、一発上田さんは俺のだって認識させないとな。
都合よく俺の番が回ってきた。見てろよ、この完璧な自己紹介を。
「えー俺は加藤優です。好きな物はチェス。そして!この上田麗奈さんは俺の友達だ!以上です」
どうだろう、この完璧な自己紹介。徹夜で練習したかいはあったな。ん?上田さんが顔を真っ赤に、なんてこったー俺の自己紹介のせいだー。赤面麗奈ちゃん眼福です。
自己紹介が終わり、時間まで各々友達と話している。俺?もちろん上田さんと会話を楽しんでいる。主に文句だが。
「なんであんなこと言ったんですか!こんなブスと友達って思われたら・・・」
「だーかーらー俺は上田さんの容姿も性格も好きだから」
「ふぇ?も、もう。そうやってすぐからかう!」
「本音なんだけどなー」
「も、もう!」
上田さんとの距離もだいぶ詰められたのではないだろうか。会話もたどたどしくなく楽しい会話だ。やったぜ、友達ゲットだぜ!うん、ほんとによかった。入学早々ボッチはさすがにきつい。美愛も友達作れただろうか。ふっ、余計なお世話だな。あの美愛だ。友達なんて百人は作れるだろう。
あのあと、入学式が始まり、廊下に並び体育館へ向かった。入学式の後、部活動紹介もあるため寝れない。いや、上田さんに起こしてもらおうかな。そうだ!そうしよう。上田さんも寝たら、先生に聞きに行けばいいだけだしな。
結局上田さんに起きておくように言われ、ずっと起きる羽目になった。あんな美人からのメッは断れないよね。結局チェス部はなく遊戯部でカードゲームをする部活しかなかった。よし!なら部活を作ろう。俺は帰りのホームルームで解散を命じた倉重先生のもとへ行って部活の作り方を聞いた。
部員が三人以上必要で、場所と顧問さえ見つければ申請できるみたいだ。後二人か・・・チェス好きを探してみるか。いや、放送をかけてみてもいいかもしれない。そうだな。放送をかけよう。効率的だ。そう、俺は効率厨なのだ!あれ?ゆとり・・・なんだっけ?まあ、いっか。
俺は空き部屋があるかの確認と放送室を使っていいかの確認をするために、職員室へ向かう。その道中で、帰宅準備をしていた上田さんと会った。っていっても教室で先生に聞きに行ったんだからそれはいるよね。
「加藤さん、何かの部活を作るんですか?」
「うん。チェス部を作ろうとね」
「チェス・・・ですか。かっこいいですね」
「そうだよね!いやー俺もチェスを始めたきっかけがかっこよさそうだからなんだよね」
「ふふっ。かわいいですね。私もチェス部に入りたいです」
「いいの?放課後用事ない?」
「ええ、いつも暇で。しかもこれといった趣味もなくて、だからチェスを趣味にしようかと」
「そういうこと。ぜひ歓迎するよ。っていってもまだできてないけどね」
「ふふっ。そうですね、なら急いで作りに行きましょうか」
新たに勇者優の仲間に加わった麗奈を引き連れ職員室へ向かう。空き部屋がないか、聞いてみるのだ。
結果的にあったのだが、掃除が必要だな。うん。めんどくさい。でも!チェス友を作るためなら!それに上田さんと放課後一緒に過ごせる時間を作るために。
「これは・・・掃除のし甲斐がありそうですね!」
「おっと、新情報。上田さんは掃除が好きだったり?」
「ええ、それはそれは。」
「じゃあ、任せちゃってもいい?俺顧問と部員集めに行ってくるから」
「わかりました、次来たときはびっくりしてくださいね」
「忘れてなければね」
さて、顧問は倉重先生でいいか。放任でいい、っていたら食いつくと思うしな。ここ上椿高校は部活動が盛んであるため、顧問になっていない先生は白い目を向けられるのだ。顧問はめんどくさいからね。そんな噂が立つくらいにはね。
あとは部員問題だな。都合よくチェスが好きな生徒はいないものか。あ、いた。
適当にクラスを回っていたら、七組にスマホでチェスをやっている生徒がいたのだ。しかもめっちゃ美人。あ、ここではブスになるのか。まあ美醜価値なんて主観でしかないからな。自分の意見大事に。
「へいへーい。そこのお嬢さん。俺とチェス・・・しない?」
「誰?」
「俺は加藤優。高校生探
「うるさい」
「あ、はい」
「で、何しに来たわけ?」
「チェスって好き?」
「まー好きだけど」
「友達いる?」
「なにその質問。それ、答えなきゃだめ?」
「ああ、できれば答えてほしい」
「そう・・・いない」
「ならよかった。チェス部に入らない?」
「チェス部?そんな部なかったはずだけど」
「そう。ない。だから作った」
「は?作った?」
「そう、作った」
「あなた一年よね?」
「まあね、上級生は今日休みだからね」
「一日で作ったっていうの?」
「厳密にはまだ作ってない。君が入れば部の完成だ!」
「そう・・・お断りするわ」
「なんでだ!」
「なんでって・・・オンラインで満足してるからに決まってるでしょ」
「そ、そんな。で、でも、リアルで対面でやった方が読み合いとかもはかどるよ!」
「別にそんなのいらない」
「そ、そんな。」
くそっ。ここでこの人を失うわけにはいかない。本気を出そう。すぅー
「お願いしますッ!」
秘儀!DOGEZA☆これでも通用しなかったらあきらめるしかない。お願いだ。俺の思い、届けッ。
「わ、わかったわ。入る、入るから。頭を上げなさい」
「本当か!ありがとう!」
「ちょちょっと」
「おっと、ごめんごめん」
感動のあまり手を握ってしまった。それにしても入ってくれるのか。これで部は完成だな。とりあえず上田さんのところへ行くとしよう。どれくらいきれいになったかなー。
「そういえば、名前、何?」
「ん?ああ、そういえば言ってなかったな。それは部に行ってから一斉にやろうぜ」
「わかったわ」
俺は膝まづいている。神々しい!とても神々しい!なんだこのツルツルでピカピカな部屋はッ!
「ふふん、どうよ。きれいになったでしょ」
「ああ、上田さんには叶わないけどな」
「も、もう!」
「で、そちらさんが?」
「はい!上田麗奈と申します。加藤さんとはお友達です!」
「そう。私は堀内新菜。よろしく」
「で、この天下無双、才色兼備、眉目秀麗な俺が加藤優だ。よろろ~」
「で、ここにいつ来ればいいん?」
「自由だ」
「は?」
「だから自由だ」
「それ・・・いいの?」
「こんなに部活があるんだ、一つくらい部活動実績なくてもいいだろ。俺はチェス友と対面でチェスができる環境が欲しかっただけなんだよ」
「そんな理由・・・」
「そんな理由とはなんだ、一回やってみろ、リアルでやるチェスは白熱する」
「ほんとに・・・?」
「やってみるか?」
「ええ」
「俺とやるか。上田は・・・ルールを覚えてからだな」
「はい。しっかりとみて学びます」
「なら・・・いくぞ!」
ふっ、勝ってしまった。敗北を知りたい。といったもののめっちゃぎりぎりだった。ていうか、こいつ罠に全くかからないんだが。え?やばくね?どんな理性してんだよ。
「ぐぅー!くやしい!もう一回!!」
「残念でしたー!もうやりませーん、時間なので-」
「勝ち逃げ・・・された」
「すごい試合でしたね!」
「え?わかったの?」
「ん?はい。堀内さんが攻めて攻めてだったのに対して、加藤さんは守りに入って相手の隙を狙っている感じでした!」
「ちょっと、堀内さん」
「何ですか加藤さん」
「この子天才過ぎません?」
「ええ、確実に才能は私たち以上ね」
「将来が楽しみですね堀内さん」
「ええ、私たちも追い抜かれないように練習しましょ」
「お相手よろしくお願いします」
学校帰り自転車で二十分のところに我が家はある。結局最終下校時間までチェスをしていた。楽しかったなー。これが毎日続くとなると今からニヤケが止まらない。よし!明日からもがんばろ。