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1/1

残された時間



  「おめでとうございます。」



  その男、白音 夏葉(しらね なつは) は、

 上下左右、何もかもが白い空間に立たされていた。



  何処からか、祝福の声が聞こえる。



  白音 夏葉は、その声に対して、、、、



  「オープニングはカットで」



  あきれた目でそう告げた。


_________________________


    ~10分前~



  白音 夏葉は、拳を握り、

 消えゆく意識の中で、

 必死に己を保っていた。



  「(何分、あと何分だ、もう!限界が!)」



  冷たい汗が止まらない、

 足が震え、嫌な浮遊感まで漂う。



  「(最悪だ!あと、どれだけ耐えれば。)」



  そんな夏葉の思いを知ってか、知らずか、



  夏葉の視界に映るその女は、

 笑い、愉快そうにふるまう。



  「(クソ!、あの女、マジで!!)」





  そして女が告げる。






  「以上で文化祭実行委員会からの

 連絡は終わります。」



  「はい、佐藤さん、ありがとうございます。

 皆さんも、文化祭に向けての準備、

 大変だとは思いますが、

 クラスで団結して、最高の思い出にしましょう。

 先生も応援しています。」



  「(いいから、はやくしろおお!出すぞ!

 やばい、出るぞ! いいんか?!)」



  夏葉の肛門括約筋は、

 限界を迎えようとしていた。



  「(マジで、ババァ、

 弁当にヨーグルト入れるか普通?!」)



  夏葉は、お昼のヨーグルトでお腹を壊し、

 出口を求めるソレは限界寸前で会った。

 ダム決壊まで一刻の猶予もない。



  「では、これで、

 帰りのホームルームを終わります。

 皆さん、さよなら」



  「「「「「さようなら」」」」」



  「(よし!!間に合う!今から家まで、1時間、

 頑張れ、俺の肛門、お前ならできる!)」


  悲しいかな、青春真っ最中の高校生が、

 学校でウ〇チするわけにはいかない。

 そんなことがバレたら、最後、

 明日からの彼の名前は〈音姫〉

 間違いなし。



  「寡黙でクールでミステリアスな、

 俺のイメージが!!」



  夏葉はホームルームの終わりと共に、

 教室を飛び出し、音よりも光よりも

 早い、そんな気持ちで、校門を飛び出した。



  瞬間、眩い光が、夏葉を包み.....

 夏葉は、上下左右、

 何もかもが白い空間に立たされていた。



  [・・・のであった]

  天から声が響き、

 ()()()()()()()()()()()()()()()





  「いや、[のであった] じゃねぇ!!

 カットしろって言っただろ、バカ女神」



  [ばっ、バカってあなたっ!!!

 女神に向かって!!!]



  「うるせー!お役所仕事の女神が!

 こっちはそんな場合じゃねえ!」



  [おっほん!まあ、いいでしょう、

 あなたには一度、

 世界を救った功績もあります。]



  その通りである。

 過去に夏葉は、このバカ女神の間違いで、

 異世界に送り込まれ、

 大冒険の死闘を繰り広げたあげく、

 魔王を倒し、

 元の世界に帰還した過去があった。



  そして、世界を救った勇者として、

 崇め奉られ、世界中の美女をはべらし、

 酒池肉林まであと一歩、

 といったタイミングで、帰還させられた。



  「わかったら、早く、俺を元に戻せ、

 てか、家に直接戻させてくれ、

 そして、ムネ揉ませろ、

 むしろ、校門前でもいいから、

 ムネだけは揉ませろ。」



  [むっ!!むね!!っ、あなたねぇ!!

 いや、いいです、もう、、、。]



  女神のあきれた声が響く



  「いいから、早く戻せ、バカ。」



  [ダメです。]



  『ああああああbbbbbbrrrrrriiiii』



  なんてことにはならないが・・・



  「(()()()()()()()()()()())」



  夏葉に酷く嫌な寒気がした。



  「おい、バカ女神、ダメって言ったか、

 それと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」



  女神の返答は無い。



  「()()便()()()()()()()()()()()()()()()()()



  「・・・あなたのような勘のいいガキは

 嫌いではありませんよ。」



  「てぇめえ、どーゆーつもりだ。」



  [オープニングをカットしたのはあなたですよ。]


  女神は不敵にわらう。



  [前回は、あなたの身体と魂を呼び出しました。

 今回は、あなたの魂だけがここにあります。]



  「バカ!かおまえ!」



  [いえいえ、私の優しさです。

 前回はカラダを異世界召喚したがために、

 大変苦労していたのを知っています。]



  その通りである。

 前回異世界召喚は、カラダが地球産の

 軟弱ボディーであるが故に、

 無駄に苦労をさせられた。



  どんなに、魂を磨き上げ、

 膨大な魔力を身に付けても、

 それを行使する肉体がポンコツであるがため、

 大変な目にあった。



  しかし、鍛えた魂を元に、

 肉体を転成させ、その問題は解決したはずである。



  「なら、問題ねぇよ。

 俺の肉体は龍種よりも硬い」


  

  その通りである。

 つまり、本来、そのような肉体を持つ

 夏葉の肛門括約筋にとって、

 クソを我慢するなど造作もないコト。



  ただ、今回は、違っていた。

 異世界から帰還した夏葉は、

 あの世界で戦に揉まれた経験から、

 力を隠し、平穏に生きる道を選んだ。


  しかし、ソレが仇となった。


  

  平穏に飽きた夏葉は、日常の中で、

 自身の限界を極めるアソビをしていた。

 今回、極めていた限界は、

 ()()()()()()()()



  つまり、ウ〇コを我慢できる限界であった。


 

  夏葉の予想では、

 今日の夕方までは、

 大丈夫であるはずであったが、

 思わぬ伏兵がいたのであった。

 あのヨーグルト。



  [あ・・・]

  女神の声が響く・・・



  「おい・・・・」



  [・・・あ・・いや。これは、そう、作戦です。

 体を返してほしければ、

 もう一度、世界を救いなさい!]



  「んわけあるか!ばか!今すぐ返せ!」



  [異世界、ワインベルクは今!

 二度目の危機に瀕しています!

 あの大戦で生き残った魔王軍が、

 世界を再び、恐怖に陥れようとしています!

 勇者よ!今こそ旅立ちのときです!]


  

  「話し、聞けや!!てか、自分でやれ!」


  

  [しょうがないのです。こうでもしないと、

 あなたは協力してくれません。

 それに、私が、直接ヒトを救っても、

 信仰は生れません。

 生まれるのは堕落です。

 信仰には、試練と、

 それを乗り越えるための小さな希望。

 それが必要なのです。

 夏葉よ、私の使途として世界を救うのです]


  

  「勝手に話し進めんな!つか、

 俺の肉体は!?どうなってんだ!?」



  [こうなっています]



  『ブォンン』

 と音がして、空間に穴が開き、

 校門前が映し出される。



  夏葉は、校門から飛び出そうとする勢い、

 その姿勢のまま、白目をむいて、

 固まり動かない。

 バカのパントマイム、いや、

 ストリートパフォーマンス、

 マネキンチャレンジ、

 と言うべきか・・・

 一言でいうとマヌケであった。



  周囲の人が明らかに、

 夏葉をひいて、避けている。

 


  ドン引きされて避けられている内はまだいい。

 いや、良くないが・・・

 とにかく、このまま、悪戯されたり、

 先生を呼ばれたら最悪である。



  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になってしまう。



  「てか!クソは?!俺の便意は何処に行った?」



  [魂はトイレをしません。

 もちろん女神である私もです]



  「てことは・・・まさか・・・」



  [はい、あなたの身体は便意に耐えながら、

 固まっている状況です。]



  「おおおい!!!バカなのか!!」



  [あなたの状況を理解しましたか?

 あなたはもう、私に逆らうことは許されない。

 愚かなヒトの子よ。社会的に死にたくなければ、

 おとなしく、言うことを聞きなさい]



  「てぇめえ!それでも、女神か!!!」



  [なんとでも言いなさい、

 さあ!どうするのですか?]



  「クソが!くそっ!聞かせてくれ、

 あと、どれだけ生きられる?(社会的に)」


  

  [残念ですが、

 余命57分42秒といったところでしょう]


  青春を人質にとられた。

 このままでは、

 明日からの夏葉のあだ名は

 ()()()()()()()()()() ネ()()()()()()()()()()()()()()



  略して、クソキン・チャレンジ、だ。



  「っ!!!!上等だっ!!!!」



  [それでこそ勇者です]



  「いってろボケが、

 向こうでの俺の身体はどうする?」



  [既に用意しています。

 ちょうど亡くなりたてホカホカの

 肉体がありますので、

 その体に転生させましょう]



  「・・・おまえ、実は悪魔だろう?」



  [あなたの世界では、

 堕ちた神を悪魔と言うらしいですね]



  「ばばぁ、覚えとけよ、

 最後にスカッとする展開を準備しておくぜ。」



  [ふふふ・・楽しみにしておきますわね。]



  不意に、地面が光り、魔法陣が描かれる。



  [それでは、勇者、夏葉!

 世界を救い、見事、尊厳を守ってみせよ!]



  夏葉は声の主に中指を立てながら

 地面に吸い込まれていくのであった。


  ・・・・・・・・




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  「・・・・・・」


  「(・・・・・んだ?ここは?)」




  夏葉は真っ暗な、闇の中にとらわれていた。



  『fckshgfsgfsn』



  外からはガヤガヤとヒトの話し声が聞こえる。



  『(せめぇ、何処だここ。箱の中?

 ・・・出てみるか)」



  夏葉はそこから出ようと天井を押すが、

 びくともしない。



  「んだ、これ?かてぇ・・」



  『『『kjhgfdb!!!!』』』



  外からの音が大きくなる。

 何やら驚いているようだ。



  「あのーーーー!!?

 どなたかいませんか!?」


  『『『『mんbv!!!!』』』』



  さらに外からの音が大きくなる。



  「(おかしい、、

 言葉がつうじていないのか?)」


  ・・・よし、殴ろう


  「よいしょ!!!!」

  『バキ!!!!メキ!!!!!』


  夏葉は力任せに天井を殴った。



  そして、のしり、のしり、

 とその箱から出る。



  「「「「・・・・・・・!!!」」」」


  夏葉の周囲には人だかりができ、

 一様に固まっている。

 直後、、、。


  「お、おじいちゃん!!!」

  「わあああああ!!!!!」

  「いややややや!!!!!」

  「波阿弥陀仏波阿弥陀仏」


  

  「(だれがじじいだ!)」

   

  周囲の全員が怯えて叫んだ。



  夏葉は自分の下を見た。



  どうやら自分は棺桶から飛び出たらしい。



  そして、恐る恐る、自分の体を見る。



  青白い肌に、細く、しわしわの腕。

 顎から伸びる白いヒゲ.....。



  どう見ても、

 お爺さんに転生させられたのであった。



  「あっっの、くっそ!ばばぁ!!!」


     【残り時間 52分18秒】

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