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2.転移初日 スキルと契約

「......んぅ。...は?森!?」

どうやら転移されたようだ。周りは木に囲まれている。その木は地球では見た事がないほどに高く、とうに空が葉で埋め尽くされていることから、異世界にいることを感じさせられる。

上げていた顔を戻して辺りを見渡す。どこを見ても自然物しかなく、人工物は見当たらない。


「えー...王都に行きたかったんですがー...」

...すごく遠そうだ。私の記憶では、ここ、王都に最も近い森でも、馬車で一日半はかかるはず。てことは徒歩だとその倍とか?まあ詳しいことは知らんけど。


って、あれ?

「......」

嫌なことに気づいてしまった。もしかしてだけども、今いる場所は森の中でも入るのが難しいとされる『聖獣の森』では...?


『聖獣の森』は入る際に、森にいる聖獣に認められた者以外は結界により弾かれてしまう。弾かれたということは入れない、つまり聖獣に認められていない。認められるためには、入るのにふさわしい者になるべく、もっと努力をしなければならないと言われている。

実際は、聖獣がどのような基準で入る者を決めているのか定かではないため、なんとも言えないが...。


問題は、その『聖獣の森』に入れちゃってるということなのよね。確かこの森に入れる人は、国に10人くらいなはず。その10人というのは、騎士団長様だったり、魔術師団長様だったり、王子殿下だったり、という感じでですね...。はあ、改めて並べてみると凄いな。

まあ入れたとなると快挙だから、国中から注目されることになるので...。うん、さっさと出ますか。




もう数時間は歩いただろうか。そろそろ休憩を挟んでも良い頃だ。

その辺に倒れている木に腰を掛ける。少し体の力を抜くと、ペットボトルの水を口に含んだ。


...え?なんでペットボトルを持っているかって?なんか転移したらそばに置いてあったんだよ。

「サービスです⭐︎

頑張って生き延びてね☆〜(ゝ。∂)」

という書き添えと一緒に。

ありがたいけど少し頭にきてしまった私は悪くないと思う。


ふぅ、と小さくため息をつくと深呼吸をする。とりあえず今までの出来事を整理しようと記憶を遡る。


「そういえば...」

......神様は最後に『王子様のような人には注意してくださいね』と言った。それが何を指すのかさっきまで理解できなかった。いや、考えないように意図的に意識から外していた。が、今はとても怖い。悪寒が走り、身体が小刻みに震えている。


家族が死んだ、あの時に警察に言われたのは...?

『それは不思議な服装だった』

『物語から出てきた王子様のような、煌びやかな服』

言われたときは信じられなかったけれど、現に私は異世界に転移している。もしかしてあいつもなの...?


..........神様はここに侵入者がいることを示したのだと思う。

「..........ふ、ふふ」

笑いが込み上げてくる。恐怖で気が狂いでもしたのだろうか。

「王子のような服、か...」

どうせなら殺してしまおうか。ここは殺人なんか頻繁に起こる世界だ。なら、日本の法が届かないここで、復讐を目指すのもいいかもしれない。


◇◇◇◇◇◇


「とりあえず、地球のものを持ってこよう」

「スマホ、衣服、水、食料、リュック、テント、ライターをお願い。あ、すごく無茶も言っていいかな?」

まあ、ものは試しと言うしね。


「スマホはWi-Fiなしでも使えるように。バッテリーも無制限で。まあ、都合よくしておいて欲しいかな。

水は500mlペットボトルを1本。

衣服は半袖長ズボンをそれぞれ一着、下着を数着、靴下2セット、帽子、ついでに靴も動きやすいもの。あ、これはまた今度でいいや。やっぱり衣服は今度望んだときにお願い。

食料は美味しい携帯食。

リュックは私が背負えるもので、そこそこ大きい物を。

テントは持ち運びやすく、寝ることができる最低限の広さのもの。

ライターは一般的なもので」


言い終わると、目の前に言ったものがすっと並んだ。付け足した条件もしっかりクリアしている。すごい!異世界って感じする。


じゃあ、ある程度ものも揃ったし、3日くらいかなあ?野宿して王都目指しますか。




一日目。

足場が悪くて全然進めなかったと思う。ここが具体的にどこなのか分からないんだよね。だからどのくらい進めたのかも分からない...。


「あ!」

思わず大声を出してしまった。慌てて口を手で塞ぐがもう遅い。...辺りは静まりかえったままだ。

「良かったー」

気の抜けた声を発する。いやあ、ね?魔物は音で獲物に気づいたりするからさ。まあ小声だったら大丈夫なのかな。魔物とバトルしても勝てるだろうけど、面倒だから避けたいんだよね。


で、なんでさっき声を出したかと言うと、

スマホで現在地と王都の位置を調べればいいと思ったからである。早速調べると出てきた。

『現在地から王都まであと3日』

うーん。1日歩いたのに!誤差があるのは分かってたけど、最初の場所から3日くらいで着くと思ってたんだけどなー。『聖獣の森』からも出れなかった。

筋肉痛がもうきてるし、明日に不安しかない。

あ、魔法とかで癒せるかな?とりあえず自分を鑑定してみよう!漫画では適性がある人とない人がいたけど...

「鑑定」


『体力2800/3500 魔力10400/10900

魔法属性→火、水、風、土、光、闇、(移動)

スキル→鑑定∞、エンチャント(強)、スキル

    記憶、調理、全魔法強化、身体強

    化、攻撃強化、防御強化、精神強

    化、記憶力強化、魔法耐性、物理耐 

    性

その他→異世界人(神の使い)。加護スキル』


おおすごい!というか鑑定持ちだー!ふむふむ、鑑定でだいたい魔力500使う感じか。魔法も全属性使えるね。移動っていうのは、確か転移やアイテム収納とかだったはず。サブ属性みたいな感じのやつ。で、本題の回復魔法は光だから使えるね。


てことで、ものは試し(2回目)。やってみよう、とは言ったもののなんて唱えればいいかな?

漫画では、『ヒール』って言うんだけど、それは聖女さんにしか出来ないんだよね。

うーん。よし、オタクの知恵の出しどころ!テンプレ!

「回復!」

体全体が光に包まれる。しばらくすると、発光は収まった。いけたっぽい?立ったり屈伸をしたりと、体を動かしてみる。

...全然いけた。筋肉痛1mmも感じない。

「勝った!」

よっしゃー!...あれ、なんかガサガサ聞こえる。前方からだ。


はっとした。先程嬉しさのあまり大声を出してしまったせいで、何かがこちらに気づいたようだ。気をつけてたのに。

大きな地鳴りが響く。慌てて音の発生源の方へ向くと、生い茂る草むらを踏み分けてこちらを見つめている、ドラゴンウルフが目に入った。ぐるうぅぅ、と唸っていて、今にも飛びかかりそうだ。急いで漫画で得た知識を思い出そうと努める。


ドラゴンウルフは、魔物で名前の通りドラゴンとウルフのハーフだ。


魔物とは瘴気からなる魔族だ。

まず、瘴気からなる魔族には魔人と魔物がおり、魔族はその総称だ。魔人、魔族と区別はしているが、基準は人型か動物型かというだけの見た目の問題だ。

ただ、それぞれ少し異なる点はある。

魔人は魔物より知恵があったり、魔物は従魔の契約が出来たり、と。


ドラゴンウルフは魔物の中でもかなり強い種類で、火と土に耐性があるドラゴンと風に耐性があるウルフの良いとこどりの生物だ。

だから、攻撃をするなら水、光、闇属性のどれかが良いだろう。1番楽なのは光と闇だ。


光と闇は、互いに強く、互いに弱い。簡単にいえば、魔法の規模と魔法の技術が強い方が勝つ。これは、火や水などの同属性でも同じことが言える。

そして、光と闇は魔法の中で上位だ。互い以外の魔法に負けることは、よほどのことがない限りありえないだろう。


てことで、光と闇は他の属性より強いからこれで戦いますか。

漫画やアニメで見た技をイメージする。

まずは闇魔法。

「捕縛」

すると、イメージ通りに黒い蔦が出てきて、ドラゴンウルフを縛りその場に固定した。

続いて、光魔法。

「ライト」

部屋にある電球の光を最大限に強くし、浄化を行うイメージで放った。まばゆい光が辺りを包む。するとドラゴンウルフは黒いカケラに散り散りになり、ついにはふっと消えた。ライトを消すと、魔石のみが残っていた。

魔石は、魔物を倒すと出てくるもの。ゲームでいうドロップアイテムだ。これはギルドなどのそれっぽいところで売れば、いくらかお金が手に入る。

「......アイテム収納」

魔石が消えた。わりと半信半疑でやったら亜空間に吸い込まれた...。


そこからしばらく休憩を取り、そろそろ寝よう、とランタンを消そうとしていると、またもや草をガサガサと踏み分けている音が耳に入った。

ドラゴンウルフの時と比べ足音は小さいが、何かいることは間違いないので、すばやく振り向く。

その目線の先には聖獣のフェンリルと、聖獣の先祖の神の眷属である妖精がいた。それらは『聖獣の森』のみに生息しており、人間より高貴な存在のため姿を現すことはごく稀かはずなのだが...。

それらと人間の間には不戦の契約がなされていて互いに危害を加えることはないので、急いで跪き頭を下げて、最上の礼法をとる。


「お初にお目に掛かります。リンと申します。聖獣様、妖精様におかれましては——」

「頭を上げて。堅苦しいのは嫌い」

「そうそう!私達はリンとお喋りしたくて来たの!タメ口で、ね?」

頭を上げ、改めて2人(内一匹)を見やる。

フェンリルの艶のある銀の毛色は、闇夜でもランタンの小さな光を反射し、僅かだが輝きを放っている。

妖精は掌に乗る可愛らしい大きさの少女で、纏っている藍色のドレスは、青みがかった銀の髪ととても合っている。


うーん、驚くほど存在がキラキラしてるお2人にタメ口と言われても少し困ってしまう。

「タメ口と言われましても...」

「タメ口で、ね?」

「あ、はい」

これまた有無を言わさぬ笑顔だ。私の身近には凶暴な人しか居ないのか...。

「えーと、何をお話しに...喋りに来たの?」

「リンと契約しに来た」

はい?

「フェンリルは従魔契約を、私は神族契約をしに来たの〜!」

「...え?神族契約って...あの?」

「そうだよ!神の仲間と契約するあれ!」


そう、神や神の眷属は神族と呼ばれており、それらと契約することを神族契約と言う。

ちなみに聖獣も神族なのだが、獣というイメージが強いからなのか、従魔契約と言われている。


「......なんで私が?」

それほど凄い契約が、よりによってなんで私なのかが不思議で仕方ない。

「リンは魔力が飛び抜けて多いからね!聖獣、妖精、魔物は魔力を食べれば、他に何も食べなくても生きれるんだよ!だから、本能的に魔力の多い人と契約したがるの!

それにリンは性格も良いから〜!神族や魔族はその生物の性格や思考が、オーラとして見えるの!」

「じゃあ私の性格当ててみて!」


好奇心からそう言うと、フェンリルが答えた。

「根は優しい。しっかりしているが少し抜けているところもある。落ち着きがあり、その場での最適な判断を下すことができる、リーダータイプ。ただ、ある特定の人が関わると馬鹿になる」

いや、馬鹿って...。知ってたけどさ。レイルが絡むとそうなるのは。

というか、あのフェンリルって、遠回しに言うってこと知らなさそうだよね。

言うなら、真っ先に槍で心臓を射抜きに来る人みたい.

..な?


「当たってるね...。で、うん、契約する?」

「私からする〜!!リン、掌を上に向けて腕を出して〜!」

言われた通りに手を差し出すと、そこに妖精が手を重ねる。すると、手が熱をもったあと、掌の中心に直径1cm程度の、周囲を円に囲まれた模様ができた。

「これが契約の証...」

漫画でしか見たことが無かったからか、自分が契約したという実感があまり湧かない。

「俺もやる」

え?フェンリルさんって一人称俺だったんだ?

とくだらない事を考えている内に、掌の模様の周りの円が2重になった。

へぇ、2つ契約すると2重丸になるのか。これは知らなかった。


「リン、私達に名前つけて〜!」

「ああ、契約したら名前つけるんだったよね。ええと...」

「妖精ちゃんがリズ、フェンリルがグレイとかはどう?それぞれ、ラピスラズリと灰色のグレーから取ってみたんだけど...」

「うん!気に入ったよ!ありがと!」

「ではこれからは、グレイ、と」

「うん...。...ていうか、なんか、眠い...」

「ああ、契約をして魔力を取られたからじゃないかな」

「そうなのか。...じゃあ、もう寝る、ね」

眠いのは時間が時間だからかもしれない。


寝袋をテントに敷く。そしてその中に入りしばらくスマホをいじる。むぅ、早く寝ないとな...。

ふと時間が気になり、確認すると23時になっていた。地球と時差はないようだ(神様が言ってた)。ただ、時空は異なるらしい(神様情報)。時空が異なるとは...?


明日も朝早く出発するつもりだし何より眠いし、さっさと寝るか。それにあたって、結界を張る。

私が今張った厚さの結界を6時間程保つとすると、私の場合は消費する魔力は2000くらいらしい(神様情報)。


はぁ、神様がちょこちょこよぎるのウザイ!

私の結界は強いし、魔物はもちろん人も入ってこれないだろう!

よし、おやすみー!

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