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1.神様登場からの転移

初投稿!

ど素人が書いたよくわかんない見切り発車ですので、温かい目で見ていただけると!


4話からりんの推し登場です!

「ということは、君がカイヴィス達が言っていた人だね? 王国紫騎士団長を拝命している、レイル・サリナーズです。君が試験に合格したら上司になる。改めてよろしくね」

次元を超えた世界(※2次元)にいたはずの推しと会話してる...!?

私が頭が真っ白になっている間にも、レイルが握手を求めて手を差し出してくる。

っやば、尊いしオーラが眩し過ぎて倒れそ、う...



――何故、2次元の推しが私の目の前にいるかというと。





◇◇◇





「独り、か」

私は家から一分ほどの橋の柵に身を乗り出した。ぽつりと呟いた声は閑静な住宅街に吸い込まれて消えていく。改めて口に出すと、少し寂しさを感じた。




「夜坂、お前ならいけると思ったんだがな。……どうする? また一年後に受け直すか?」

「いえ、先生。私は就職したいと思います」

「……そうか。力になってやれなくてごめんな」


男は寂しげに、そして悔しげに言葉を振り絞る。


「いえ、先生のおかげでここまでこれたんです。ありがとうございました。では失礼します」


言いたかったことを全て言い切ると、私は男に背を向けて扉に手を掛ける。古く建て付けの悪い扉は、力を入れずともすぐに開いた。


「……ごめんな」


歩を進め始めたとき、ふと届いた消え入りそうな声には振り返らず、私は足早にその場を後にした。




今日起きた出来事が頭に並ぶ。浮かんだ男の声は、何故だがつい先程聞いたように感じられた。


私は大学入試に落ちた。原因は自分でもよく分かっているつもりだ。おそらくは、家族が死んで動揺してしまっていたからだろう。あとは、受験期だからとしてもらっていた家事や食事作りも自分でしないといけなくなって、本来ならばラストスパートをかける時期に勉強時間があまり取れなかったからかもしれない。


彼らが死んだのはつい一週間前のことだ。


ある日、私は受験前の癖が抜けず、いつものように自室に籠り勉強をしていた。家族はそんな私に気を遣い、声だけを掛けて外出していたのだ。

その帰り道に通り魔に出会い、刃物で刺された。だが幸いにも、親が刺されたときに姉があげた悲鳴が近隣住民らの耳に届き、それから数分と経たずに救急車が現場に到着したらしい。そして、みんな命は助かった。これが二週間前のことだ。


それから、家族は意識不明の状態が六日続いた。その間に両親は脳死の判定を受けた。もう意識を取り戻すことはないそうだ。

「……」

そのことを医者に伝えられたとき、私は何とも思わなかった。幼少期から感情の起伏小さく、自分の歪んだ部分を自覚してから数年が経ったが、こんなときでさえこれか。ここまでくると一種の病気のように思えてくる。


あと意識が戻る可能性があるのは姉のみだ。姉には、元気でいてほしいと思う。姉はいつも歪んでいる私に色々な話をしてくれた。残念ながら大きく心が動くことはなかったが、それでもこんな私の相手をしてくれたのだから、回復するといいなと思う。

それからは、家族関係で色々と忙しくしつつも一日一日を過ごした。


彼らが意識を失ってから七日が経った。その日、私は久しぶりに彼らの病室に行くことにしていた。特別な理由はない。ただそのときの何となくで向かった。


看護師には「直接では会えない」「ガラス越しでになるよ」と事前に告げられていた。それに何か思うこともなく、ただそうなんだと受け止めながら病室に向かって歩を進めているとき、突如不快な機械音が廊下に響き渡った。医師や看護師らが一斉に慌し気に走っていく。私と一緒にいた看護師は、私に待合室にいるよう告げると、そのまま家族のいる病室へと駆け込んでいった。


後に知ったのは、 “家族は酸素吸入器をつけていたこと ” “それらを病院に侵入した者が外したこと ” “家族は死んだこと ”だった。


侵入者はそれは不思議な格好だったという。物語に出てくる王子のような煌びやかな服を纏い、この世界に存在しないと思われる言語を呟いたそうだ。それほど目立つのならばすぐに見つかりそうだと思ったが、何故か病院を出た後の行方が存在を消してしまったかのように掴めないらしい。


それを聞いたときに真っ先に感じたのは、憤激や途方もない悲しみではなく、虚無感だった。ああ、彼らはもうこの世にいないのかと事実を淡々と受け止めるばかり。意識不明などではなく、いよいよ死去したというのに。

やはり、私は薄情者らしい。そんな自分に嫌気が差した。



ふぅ、と小さくため息をつく。辺りを見渡すと誰もいなくて、それはそうかと一つうなずく。夜中に住宅街の一隅を歩く者はそういないだろう。


私は目の前の柵に脚を掛けると、乗り越えて柵の向こう側に立つ。半歩程の幅だ、体勢を崩せばすぐに川に落ちるだろう。


「……疲れたな」


ここには、頭の整理するために来た。そして一番最初に思ったのは、「なんとなく疲れた」だった。


幼い頃から、何かに感情を持つことが少なかった。友達といても、心の底から楽しいと感じたことはない。いつも適当に相槌を打ち、必要に合わせて笑顔の仮面を付けるという最低限の付き合いをしていた。


家族といても同じだ。一緒に過ごしてはいるが、それだけのことで、それ以上でもそれ以下でもない。同じ家でそれぞれ生活する他人、と言えば分かりやすいだろうか。欲しいものは言えば手に入れられたし、互いに相手のことを考えて動いたり気を遣いはしたものの、そこに愛情なんてものはなかった。今思えば、心の動きが少ないのはその家族の形や成育環境が原因なのかもしれない。


今まで、自殺をしようと思わなかった理由は両親がいたからだ。いくら他人とはいえ、もし私が死んだらニュースで自殺した子供を見たときのように、残念だと感じるだろう。だから家族にわざわざそんな思いをさせようとも思わなかった。言わば両親は、私のストッパーだったのだ。


しかし、もうそんな存在も消えてしまった。死ぬ理由はないが、生きる理由もない。元々生に執着はしていなかったが、両親の死により、それが一層強まったような気がする。

生存本能もなければ、人生を楽しめもしない。


今まではなんだったんだろうな。そんな思いが頭をよぎる。


不意に、このまま前に一歩進んだらどうなるのだろうと疑問が浮かんだ。決断してからの行動は早かった。


気がついたときには、自分でも意識せずに前に倒れ込んでいた。視界に映る景色は、川とは垂直に流れている。このまま死ぬのだろうか。そして走馬灯なども特に見ることなく、そのまま川に飛び込んだ。はずだった。



気がついたときには辺り真っ白の場所にいた。

「『気がついたときには』とか、漫画によく出てきそうだよね...」

「てかここどこ」

状況の把握に努める。辺り真っ白といっても、光や雪とは違うどこか現実味のない色で、ますます把握ができなくなってしまう。


突然、目の前に人影が浮かんだ。だんだん大きくなることから、それはこちらに向かって来ているのだろうと思い至る。

靴音しないんだ、と少し不思議に思っている内にも、はっきりとそれの輪郭を認識できるくらいに距離が縮む。

...私の目の前まで来た。


それは男で外見は人のようだが、服装や纏う雰囲気から人ではないと本能が告げる。穏やかだが、それでいて威圧感もある。


健康的な艶のある白い肌、二重でどこか色気を感じさせるターコイズグリーンの瞳、筋の通った高い鼻、と、とにかく整った顔つきをしている。薄く血色の良い唇は弧を描いている。

着ているローブには光沢のある白い生地に、金や銀の差し色が使われいる。光が反射して輝いており、とても神秘的で儚さも感じられた。


男は顔ににこやかな微笑を浮かべている。...何故か少し寒気がした。そこで先程から感じていた威圧感の正体は、こいつの笑顔だったのかと思い至る。

ずっと見つめ合っているのもなんだしそろそろ話しかけるか、と思い口を開く。だが音を発するのは向こうが先だった。


「こんにちは!いや、こんばんは、かな。地球担当の神、ビアーレです!夜坂りんさん、貴女にはこの先、二つ進む道があります!」

...頭に疑問符が浮かぶ。状況もよく飲み込めていないが、漫画オタクなので、この状況を信じてはいる。


「......こんばんは。で、進む道とは?」

「へえ、こんな状況でも取り乱さないんだ。で、道のことですよね。一つはこのまま死ぬこと。もう一つは異世界転移(漫画世界に転移)とかどうでしょう?」

理解が追いついていないので、説明を頼む。

「...具体的な説明を」


「おっけー!貴女、好きな漫画があったでしょう?」

「ありすぎてどれのことだか」

「あはは、そうか。じゃあ、気に入ってるやつを幾つか挙げてみて」

神様とやらに従い言ってみる。

「じゃ、その中のどの世界に行きたい?その世界に転移出来るよ」

「...本当に?」

「うん、ほんとに。ついでに、転移させるにあたって4つ願い事を聞いてあげる。叶えられるかどうかはものによるけどね」


「...じゃあ、『呪われレイルは王国紫剣騎士団長を目指す』がいいです!!ついでに言うなら、レイルが団長になった後のときに行きたい!!」

「おー、急に元気になったね!ふふふ、人が変わったみたい」

神様が首を傾げ微笑しながら言う。それを聞き反論(なのかは分からないが)したくなった。


...だって!だって!だって!!

推しのいる世界だよ!?


この漫画は、幼少期のある出来事をきっかけに、自身の殻に閉じこもっていた主人公レイルが、その呪いを打ち破って紫剣騎士団長になるという話。レイルのいる王国には、紫剣騎士団、青剣騎士団、と2つの騎士団が存在する。それぞれ団は、さらに8つの隊に分かれる。その中で、紫剣騎士団長は王国最強の騎士がつく座だ。レイルはその最強騎士を目指す。物語はレイルが団長になったあとも続いている。

そして、私はこのレイルを推しているのだ。


レイルと出会ったのは13歳のときだ。初めて人を好きになることが出来た。推しごとの間は心がとても動いていて、生まれて初めて人間なれたようだった。この時間が好きだった。

そのときまで、過ごす時間に対して好きという感情を持ち合わせたことがなかったから、とても驚いたのを覚えている。


「推しのいる世界に行けて興奮しない馬鹿はいないでしょ!?2次元と3次元が交わることは絶対ないんだから尚更!!」

「あはは、確かに人間はそうなのかもね!で、願い事は?どう生きたい?」


現実的な話を聞き、多少落ち着きを取り戻した。自分はどう生きたいのだろうか。

生き方を願ったことがないからなー、と今までにない思考回路で、少し混乱する。


「......じゃあ。私は紫剣騎士になって生きる。推しに会いたいしね。だから、向こうの世界の一般的な女性より、体や能力を強くして欲しい」

「おっけー。次は〜?」


「重い病気にかからないようにして欲しい。推しに会えずに死ぬとかやだし。まあ、軽い風邪くらいはいいかな」

生活水準も低いから、こっちで治せるものも治せなさそうだし。

「はーい!次〜!」


「向こうにはなくて、地球にある知識を出来るだけ私の頭に記憶させて欲しい。知識は向こうの世界が発展するのに役立つもので。あと、サバイバル系の知識も入れて欲しい」

「ラスト〜!」


「んー、神様おすすめの能力をお願い」



最後は考えなしに口にしてしまったが、地球での記憶を残してもらえるようすれば良かったと今更後悔する。というか、転移扱いなら記憶は残るのか...?


......まあ、どっちにしろ地球の知識は役に立つだろう。向こうの世界は地球より生活水準が低い。それに、魔法や魔物など地球に存在しないものも多い。万が一転移してすぐに魔物に遭遇しても、一つ目の願いも合わされば生き延びられるだろう。


しばらくこちらに背を向けていた神様が、振り返り柔らかな声で告げる。

「んー、少し時間はかかるけど出来そうだよ。あと、記憶は残しとくから安心してね。向こうの言語も習得させましょう」

「ああそうだ」


何か思い出したかのような表情をすると、神様が言い添える。

「貴女はまだ死んでないよ。転移扱いだしね」

私の考えを察してでもくれたのだろうか。その辺はよく分からないが、とりあえずありがたく思うことにする。


3つ目の願い事を言ったときに考えたことがある。それは"地球の知識を向こうに渡す代わりに、推しと親しくしてもらう"というものだ。


まずはしばらくの間普通に過ごし、漫画で起きていた出来事が実際に起きているかを確認する。起きているなら、今後も以前にも、起きている可能性が高そうだからだ。次に異世界の記憶を持つことを宣言する。下手したらこの時点で、馬鹿にされ殺されて終わりでは...?

......まあ、一旦生きていたと仮定する。

次に、漫画で起きていた出来事を言う。向こうも、感情やどんな秘密ごとも言い当ててくる人を、さすがに無視は出来ないだろう。ここで、異世界から来た事の信憑性と、信頼(下手したら推しからの恐怖の視線も(ご褒美))を得る。

で、地球の知識を渡す代わりにお友達になることを申し込む!知識目当てで付き合いをする可能性も高いし、6割(当社比)くらいの確率で死ぬ気がするが、まあ良しとする。


これはなかなかの賭けではないだろうか。だがこのぐらいやらないと、騎士になったとして、一介の騎士が王国最強の騎士なんかに会えないだろう。

推しに会えないのなら、わざわざ向こうで生きる理由もなくなる。まあ、推しに拒絶された後向こうでの生活が思ったより楽しいのであれば、そのときは平民に紛れて普通に生きるとしよう。


「考え事終わった?そろそろ説明を始めたいんだけど...。その意識がどっかに行くのどうにかなんないの?もう何回目?」

神様の声を聞き、ハッと我に返る。慌てて声の方へ目を向けた。

「5回もごめんって。大丈夫だから説明お願い」

神様がじっとこちらを見つめているが...うん気のせいだろう。


「...はぁ。説明は色々あるんだけど...まずルールから。地球の知識、物の持ち込みはOK。あとは、貴女に本来知られてはいけないことを知られてしまった場合、そのことに関して貴女が喋ろうとすると声が出せなくなるように制限をかけるから。それは異なる方法でも同じ。書いて伝えようとしても、口パクでも、周りに伝えようとした時点で制限をかけるからね」

「んーあとは......そーだ!折角だし、地球から持っていきたいものがあれば用意するよ!...さすがに人は勘弁してね?」


懸念は晴れた。これからの生活への期待に、表情が緩む。

「ものを持っていっていいんだよね?じゃ、ダメ元で聞くけど、向こうの世界に行ってから、念じたりすれば何回でも地球のものが届くようにするとかは無理だよね?」

「あー...」


神様が珍しく言葉を詰まらせ、苦い表情をしている。

「え?やっぱダメ?」

「えーと...大サービスというか、お詫びとして貴女が言ったことを出来るようにしておきます。で、後出しで悪いんですが謝罪しなければならないことが...」

敬語?てか神様が謝罪するほどのことって何よ怖すぎる。


「......なんでしょうか」

ぽつりと独り言ちるように聞いた。

「貴女がこの神界に来てしまったのは私のせいです」

「そうなんだ。で、続きは?」

そう言うと、神様がぽかんと気の抜けた表情をする。数秒、間をおいてからひとりでにうなずくと、こちらを見つめて苦笑した。


「本来なら最初に言うべきだったのでしょうが...私のせいでこのようになってしまい、申し訳ありませんでした」

そう言い頭を下げる神様を見つめる。...はい?なんで謝ってんの?

「なんで謝るんですか?元々私は死ぬつもりだったのに、転移までさせてもらえてむしろ感謝していますよ」

そう告げると私は微笑を浮かべた。それを見た神様は一瞬驚いた顔をすると、すぐに表情を和ませた。

「...ありがとうございます。ですが、相手が貴女だったから受け入れてもらえただけですし、私の罪が消えるわけではありませんので、改めて謝罪します」

再度神様が頭を下げた。

「わあああ!全然大丈夫ですよ!結果オーライだし、ね?」

神様は相変わらず申し訳なけなさそうな顔をしていたが、先ほどよりは明るい表情だった。どことなく、目がうるうるとしている気がする。もしかして泣いてる...?

あれ、神様が私を見る目がさっきより変わっている気が...。なんか神様を崇めるときのようなまなざ

「うぉっほん!」

危なかった。これ以上は危険だね。


「本当にありがとうございます」

神様が言葉を一旦区切り、では、と続ける。

「貴女が望むことは出来る限り叶えられるよう努めます。そして、貴女が望むのならまた神界に来れるようにしておきましょう。ここに来たいと思いながら眠りについてくれれば来れます。

この望みは何度でも使えますし、神界に来ている間、貴女は現実では普段と変わらず寝ていることになっていますので。ただ、来ている間は起きれないので注意して下さいね。

またここに来たときに4つ目の願い事について説明しましょう」

「何から何までありがとうございます」

「いえ、こんなことしか出来ずに申し訳ありません。それと一つ忠告を。()()()()()()()()には注意してくださいね」

「では異世界(漫画世界)、思いっきり楽しんじゃってくださーい!」

神様がうっすらと消えていくと同時に、視界が暗転した。


◇◇◇◇◇◇


「......んぅ。...は?森?」

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