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12.完全無欠、(詐欺師の)本領発揮?

「で、王子の公務の予定はどんな感じだった?」

「んーそれがね...凛ちゃんは今の一ヶ月で王子が出先で死ぬって言ってたでしょ?でも調べてもそれらしい公務がないんだよねぇ...」

凛花姉は膝に頬杖をつく。彼女らしくない微かに冷気を持つ瞳に口元が引き攣ってしまう。


「えーと?ちなみに公務はどうやって調べたの?機密事項だと思うけど」

「そんなの、凛ちゃんのためならすぐ出来るよっ!」

その口調とは裏腹に完璧なまでに整った笑みを見て思わず硬直した。怒ったら怖いタイプの凛花姉にこの技教えたの誰!!知ってる?美人だと迫力が増してマジ怖いの!!


「..........」

「ちなみにだけど。もっと調べてみたら、王子はここ数ヶ月の間に数回町に行ってた証言が取れたよ。共犯は幼馴染の護衛騎士みたいだね」

「......お、おう」

「だから細かいところはおいといて、ストーリー的には凛ちゃんの予想通りだと思うよっ!」

緩急の差が酷い。


まあでもこの情報はかなり大きい。それに町に行くのなら、あとは王子に近づければ結界魔法を掛けるなりどうとでも出来る。

結界付きの王子に襲いかかったところを偶然通りがけ、刺客を魔法で捕らえれば終わる。それプラス出来るなら、神様が言ってた黒幕ギーヴィン侯爵が犯人である証言が取れれば完璧だ。いつか拷問する機会が来るかもしれないし、練習にはちょうどいいのでは?(知らんけど)


ただ問題は王子がいつ抜け出すか分かんないってことだよなぁ。他で唯一分かることといったら昼間ってくらいだし。

ずっと見張る訳にも......なら魔法でGPSつければ良くね?


いや、犯罪的思考になったのは許して欲しい、ほんと。でもストーキングするより遥かに楽だし...いいよね?王子の身の安全のためだし。


なら王子が抜け出す前に王子に一度会えれば魔法をかけられるかな。流石に容姿すら知らない、会ったこともない人にストーキングも何もないからね。

あ、ちなみにだけど漫画でも容姿は知らん。死んだ、としか書かれてなかったし。

......さて。そうと決まったらどう会おうかな...って、なら——


「...ふふっ、考え事してる凛ちゃんも素敵!いつもの冷たくあしらう鋭さが抜けててほんとかっこいいっ癖になっちゃ」

「黙らんかい!」

言ってることが不穏すぎる。


「あっ、考え事終わったー?」

「...うん、終わった、かな」

とりあえず今後どう行動するかは決めたつもりだ。まあ辞めるかもしれないが。なんていったって、行動に移そうとした思いつきは渡るのが危なすぎる橋なのだ。普段なら絶対にやらないと言い切れる。だからか、決心したはずが揺らいでいるが......結局は選ぶんだろうなー。


だって返ってくるものが多いし。ハイリスクハイリターンってやつかな。これもいつもならリターンが大きかろうがどうでもいいんだけど...推し活を発展させるためなら妥協はしない!!せっかくの三次元は楽しませてもらう!!


「はぁぁ...無防備にニヤけてる凛ちゃんレア...」

訂正。物分かりはよくても繰り返した失敗は学ばないらしい。


両頬を腫らした凛花姉に礼を言う。「え!?ついにデレがきた!?」と騒ぐバカ凛花を外に追いやると、これからの計画を細かく立て始めた。







◇◇◇◇◇◇







というわけで、現在また王妃さ...こほん、無駄に細かいところ(例えば名前の呼ばれ方とか名前の呼ばれ方とか)を気にするエラ様とお茶を飲んでいるのですが。


事の発端は凛花姉を追い出した翌日のことだ。訓練のため登城しハードな訓練に死にかけた頃、すっかり白くなった頬を見せる凛花姉ににこにこと笑みを浮かべながら声を掛けた。

「凛花!今日はいい天気だね!」

「雨降ってるよ?」

「ところで!お願いしたいことがあるんだけど、いい?」

「凛ちゃんのよそゆき顔もいい!!目の奥が冷えたクールビューティーの社交界スマイルはマジ最高...ハッ!おねだりだったよね!?お姉ちゃんに任せて!!」

「本当!?ありがとう!流石、凛花姉は扱いやす...こほん!優しくて助かるよ!大好き!」


そのときのお願いが"王妃様に会うこと"だ。今度は自ら巻き込まれに行ってみた。結果どうなっているかというと。







「そうだわ!レイルのお嫁さんの件は考えてくれた?」

絶賛婚約を勧められています。いや、盛大に咽せたのは悪くないでしょ。紅茶吹き出さなかっただけ褒めて!!

「まだその話あったんですか!?」

「今なら貴女の大好きな憧れの人を救えるかもしれないわよ!!それに騎士としての技術も教えてもらえるし、公爵夫人として色々自由に過ごせるわよ!どうかしら!?」

そう、レイルは公爵です。あの王族の次に偉い、公爵。


......いや困りますが!?

貴族としての面倒なやつなんか漫画で覚えたオタクの知識としてしか知らないの!!御免被ります!!

それに何お得なセットつけてんのさ!そりゃ上二つはとっても魅力的ですけども。最後のセットの所為で魅力が0になった。


「...私などでは分不相応です。それに、私はまだ恋愛のれの字もよく分からない子供なのですから」

とりあえず乱れた醜態をなかったことにして適当に理由を上げる。まあ恋愛を知らないのは主に二次元を推しすぎた所為ですが。

「そうよね、まだこの話は早かったわ」

早いも遅いもないっす!

それに推しにはヒロインちゃんと結ばれてもらわなければいけないのだ!!そしてゆくゆくはカップル推しして傍で見守る...!!あーほんと最高!!


あのイチャつきがマジ好きなのよ!レイルは他のご令嬢には冷えきった視線をヒロインちゃんには甘々にとろけさせて溺愛するし、ヒロインちゃんはそれを純粋な心で恥じたり照れたりしながら受け止めるの!!愛妻家レイルと心まで聖女のヒロインちゃんとかマジ尊いの具現化かよ!!



「はぁ。それで言ったら私の息子たちもそうだわ」

エラ様の声でハッと我にかえる。口元は...よし緩んでないね。危なかった。

で、息子...というと王子殿下たちかな?


「...そういえば。王子殿下方はさまざまな方向へと長けていると聞きました。確か、騎士の技術や魔法、魔術に詳しい人がいるのですよね?」

「そうね、エイダンは闘いに優れているわ。体を動かすことが好きみたい。逆にセオドアは知にとても優れているわ」


そう言うエラ様の瞳に影が差す。やっぱ、殺人予告のことが不安なのかな?

人前でここまで感情を見せるのは王妃としてどうなのかと思っちゃうけど。多少は信頼してくれてるのか知らんが、まあ私には好都合だ。最初からこの話題を求めてたんだから。


「私は他国から来たのであまり存じ上げていませんが...確か第一王子殿下と第三王子殿下でしたよね」

こんなことを知らないのは不敬だろうが...エラ様がこういう場だからかそういうのに緩いから助かる。

「ええ。騎士としても魔術師としても注目されている貴女ならエイダン達と話が合いそうね。そのうえ聡明さも持っているのだから凄いわ」

エラ様はすっと優しい目で私を見つめる。美人のその視線だけで生きてける!!

その後俯いて数秒考える素振りを見せると、エラ様はバッと勢いよく顔を上げた。


「そうだわ!貴女二人と会ってみない!?」


エラ様のその言葉に、「光栄です」とわざと目を輝かせて答えてみせ、心の中では理想の展開に進んでいることに安堵から脱力する。自分の目的を隠すには純粋な喜びを演じるのが一番だ。

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