ソラに煌めく幾多の星々 ~Domination battle [Side:C]~
「エマ、後を頼んだ。・・・ファナンのこと、任せる」
「あいよぅ、任されたよ」
「艦長、ユズハ、後はよろしく頼む」
「ザラート隊長、後はお任せください」
「大丈夫ですよ、プルメアまで必ず」
ザラートはコーデリア達に後を任せ艦を後にする
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【<シエル>戦闘指揮所】
ファナンを<アウルム>に移送し、俺達は<シエル>にてエルメディアへの進攻を支援することとした
[コロネット]作戦を成功させるために
「マスター。軌道上、予定のポイントに到達しました」
「よし、所定のポイントに向けて攻撃を始めてくれ」
「了解、敵拠点に向け砲撃を開始します」
衛星軌道上から敵拠点へ向け支援砲撃を行う
シエルから伸びる青い光は惑星上にいくつもの爆発を発生させる
「楽と言えば楽だけど・・・なんか達成感が無いね」
「ルルベル、そう言うな。これもれっきとした作戦、俺達が支援することで制圧が容易になるんだ」
「そうですよ?何もしていない訳ではないんですから」
「んー、そうだけど・・・」
ルルベルの言いたい事も判らなくはない
先の、ファナンとミリィが負傷した時も、今この時も、何もできないというのは、正直堪えるものがある
・・・それは、ここにいる誰もが思っていることである
「今は、俺達に出来ることをやればいいんだ。即応できるのは、独立部隊にしかできない事だしな」
「ん、じゃあ何時でも出られるように準備しておく」
「それがいい、その時は頼むぞ?」
「まっかせて!」
「地上第一軍より砲撃支援要請、ややずれた位置への砲撃となります、よろしいですかマスター?」
「了解した。ミーヴィ、艦の位置をずらしても構わないので、支援に応えてやってくれ」
「はい、マスター」
・・・地上での熾烈な争いは一進一退を繰り返していた
宙域からの強力な支援砲撃を受けた地上部隊は損害を出しつつも、首都エルスルトを囲む包囲網は完成しつつあった
この日、<シエル>は半日かけて地上軍の支援に回り、地上戦が落ち着いた残り半日は宙域の警戒に回ることとした
・・・特に[デストロイ][ブラックウィドゥ]の2隻とは決着が着いていないため、特に警戒することとした
「ザラート、<グロリアス>出ます」
<グロリアス>での出撃にも慣れてきた
スクランブルを想定しての訓練でも、1分とかからず出撃が出来るようになってきた
また、今後の事も考え、最近はアエル達も<グロリアス>の習熟訓練を行ってもらっている
今だ量産化のめどは立たないものの、人型兵器の有効性は少しずつ認められてきている
・・・士官クラスは搭乗して戦う日は近いかもしれない
なお、実施された訓練で一番優秀な成績を叩き出したのはアエルだった
「私、操縦系が合ってるのかもしれません」
とは本人の話だが、誰が見てもその操縦センスは優れていた
逆に全くできなかったのがミリィだった
「こういう、狭い所は苦手です・・・」
体格や体の構造も影響しているのだろう。もともとコクピットも"人間"に合わせて設計されているはず
今後の運用を考慮するなら、そのあたりも検討しなければならないかもしれない
また、本国の兵器局では<グロリアス>換装用装備が何点か設計、製造されている
しかし肝心の運用機が少ないため、日の目を見るのは当面先になるだろう
『マスター、聞こえますか?ミーヴィです』
「ザラートだ、どうした?」
『<アウルム>より通信が入りました。無事プルメアへ到着。補給ならびにファナンを医療施設へ移送完了とのことです』
「了解した。コーデリア艦長に礼を伝えておいてくれ」
『了解、マスター。・・・あと、微弱ですが<シエル>艦上方に微弱ですが帝国艦艇と思われる信号をキャッチしました』
「判った。これより確認する」
『無理はされないように、お気をつけて』
・・・<シエル>より指定された方向、座標に向かい進む
しばらく進むと敵艦影を確認した
「敵巡洋艦を確認、数1。先の戦闘の落伍艦と思われる」
『了解、マスター。・・・当艦からは射線上にデブリがあり攻撃困難、マスターいけますか?』
「大丈夫、なんとかなる。これより攻撃を開始する」
敵艦の周りはデブリが多く、射撃は通りにくいと判断。俺は接近戦で挑む事とした
敵も先の戦闘で警戒レベルが上がっているようで、こちらはすぐに捕捉された
『敵影捕捉っ!敵機動兵器・・・"人型"です!数1!!』
『先の戦闘で確認された機か!何としても落とせっ!!』
<グロリアス>めがけ、赤いビームが幾重にも襲い掛かる
艦艇に比べ小さい機体のため、直撃弾は皆無であった
『くそっ!?なぜ、なぜ当たらん!!』
『敵機接近!このままではっ』
『わかっている!迎撃!迎撃するんだっ』
みるみるうちに敵艦との距離を詰め、始めに推進部をビームで狙撃する
青白いビームは推進部を撃ち貫き、敵艦の機動力を削ぐ
CIWSなどで応戦するが、こちらの機動力には追いつくことが出来ず、牽制するに留まっていた
『推進器大破!艦長!?』
『これまでか・・・総員退艦!急げっ!!』
艦後方から脱出ポッドが何基も射出される
その間も、対空砲火を掻い潜りながら<グロリアス>はビームサーベルで船体を切り裂く
・・・内部気圧の高い船体は、その裂孔を一気に広げ、大きく弾ける
離れざまに艦橋そして前部砲塔にビームを直撃させる
『艦長も退避をっ!これ以上は・・・!』
『・・・遺憾ながら艦を放棄する!皆、よくやってくれた・・・!』
艦長以下、退避した直後、艦橋は吹き飛ばされ、砲塔部では誘爆が起こり、敵艦は船体を崩壊させる
「ザラートだ。敵巡洋艦撃破。他の艦影は認められず」
『ミーヴィ、了解しました。こちらも敵艦は認められません』
「了解、こちらは一度艦に戻る。収容準備を頼む」
『はい、マスター。お疲れ様です、帰艦をお待ちしています』
・・・この戦域でザラートのキルスコアは群を抜いていた
まだ運用方法が確立していない"人型兵器"でこれほどのスコアを叩き出すとは誰も想定していなかった
この結果、軍上層部は"人型兵器"の有用性、特に<グロリアス>の性能を評価していた
が、あくまでこの機体は「試作機」
真に恐ろしい点はザラート、その人の「操縦センス」にあった
ザラート本人は気づいていないが、彼の操縦センスは群を抜いていたのだった
それは遠くない未来に判明することとなったのである




