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ウィーケスト・アーミー  作者: 神楽阪 舞
第4章 永き「時空」を彷徨うモノ
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#解放される想い ~glorious~

総司令部での参謀会議が終わり、続けて鹵獲した人型兵器ならびに新兵器の打ち合わせに入る

打ち合わせ場所は<アウルム>


補給部隊兼務のオリバー、トビィが主催となっている


職権乱用・・・のような気がしなくもないが、まぁ、鹵獲兵器があの艦に乗っているので、悪くないと言えば悪くない、か


-----------

【<アウルム>第一会議室】

ザディアスへの進攻前に改修された結果、補給部の拠点としても活用される事になったこの艦に会議室などの設備が追加されていた

今回の会議室は前々からあるが、新たに2つ、会議室が追加されている

今後を踏まえての改修とのことだ


「おぅ、ザラート。お疲れさん、どうだった参謀会議は?」

「錚々たるメンバーで緊張しぱなっしだ。こちらの会議が一番楽だな」

「まぁ、知ってる顔ばかりだしな」

「違いない」

そう言って俺とオリバーは笑う

「でも、今日の会議は画像越しですが、いつも居ない、慣れない方がいらっしゃいますよ」

トビィがそう言葉を挟む

「・・・局長が、どうしてもと言ってきてな。今回は申し訳ないが、うちの局長が混じることになる」

「ゼル局長か。先ほどの会議でも顔を合わせていたんだが、こちらの会議に参加する話はなかったな」

「まぁ、局長はいつもそんな感じ、ですからね」

「トビィの言う通り。まぁ、ちょっと変わった局長だからな。まぁ、そこがいいんだけどな」

そんな会話をしながら、会議室に立体画像が浮かび上がる


「局長。お待たせしました。こちらのメンバー揃いました」

『急遽参加させてもらうことになった。ザラート、先ほどぶりだね。突然の参加、申し訳ない』

「お気になさらず。局長自ら参加されるとのこと。有意義なお話ができること、嬉しく思います」

『ははは。さすがネフェルの教え子なだけあるな。結構結構』

「ネフェル少将と仲がよろしいのですか?」

『そうか、ザラートは知らないんだったな。ネフェルとは士官学校からの同期だよ』

「そうだったのですか。申し訳ありません、存じ上げませんでした」

『ははは、気にしないでくれ。軍の一線から引いた老いぼれだ、しがない兵器局の局長なんぞやってる』


今までオリバー含め、俺達に便宜を図ってくれていた意味が解った

ネフェル少将の同期で、その教え子の俺を気にかけてくれていたようだ

つくづく、縁というものに感謝、だな・・・


『っと、すまないね。関係のない話で盛り上がってしまったようだ。オリバー、進めてくれ』

「はい局長。では、こちらの資料をご覧ください」

オリバーとトビィが端末を操作すると、立体映像が浮かびあがる

これは、先のザディアスで鹵獲した人型兵器、だな

その横には諸元が表示されている


-----------

名称:グロリアス(glorious)

全高:10.2m

重量:38.8t

装甲材質:軟・硬質セラミック複合材

出力:1,500kw (※水素融合炉)

推力:88,000kg

センサー有効半径:5,500m

-----------


「今回、惑星ザディアスで鹵獲した人型兵器について調査しました。結果、エルメディアで確認された人型兵器とは異なる機種であることが判明しました」

『エルメディアで確認された人型兵器、連合軍の通称コードは<シャドウ>・・・正直、今回の鹵獲機より高性能だろう、という事だったな』

「はい。鹵獲機・・・通称コードを<グロリアス>、基本性能では<シャドウ>に劣ると考えられますが、・・・あくまでそれは人型兵器同士での比較です。従来の兵器と比べるとその差は歴然としています」


なお、<シャドウ>の諸元はあくまで推定となるが、おおよそ3~5割増しだろうとのこと


「従来の兵器との差とは?俺は専門外だからそのあたりがよく判らないのだが」

「一言でいえば"汎用性"ですね。陸戦の主は歩兵や戦車ですが、宇宙空間で戦闘はできません。艦艇、航空機も両用型を除き空、海と運用が限られています。しかしこの"人型兵器"だとその全てをこなすことができます。・・・マルチロール機という訳です」

「トビィの言う通り。さらに付け加えると、マルチロール故、装備の多様性もある。

<グロリアス>の余裕ある出力、推力を活かせば様々な戦闘スタイルを取ることができるだろう」

『本星の兵器局で兵装の方も生産していこう。もっとも本体である機体は量産のめどは立っていないが』


やはり、量産がネックになっているようだ

当面、鹵獲機の運用は独立部隊で行う事となりそうだ

なお、メカニックはオリバーとトビィ、配下の補給隊で行う事とし、機体は補給時を除き<シエル>に収容

「パイロットだが、ザラート、頼めるか?」

「俺でいいのか?」

「ああ。こういうのはリーダが率先してやるもんだぜ?」

「そういうものか?」

「たぶん、違うと思います。・・・でも悪くはないと思います。<グロリアス>のセンサー、通信機器類は指揮官クラスが活用して、でしょう」

『なに、ザラートなら使いこなせるだろう。こちらからも頼めないだろうか』

「そういうことでしたら」

『データは・・・毎回頼んでおいてアレだが、トビィ、収集を頼む』

「判りました」


『よろしい。では次なんだが、今後の作戦展開に合わせて、連合の主力戦車の更新が予定されている』

「はい。しかし、我々の部隊が関与してもよろしいのですか?」

『いや、むしろ協力してもらいたいぐらいだ。どうも、軍の上層部は新しい物を嫌う傾向が強くてな』

「・・・体の良い実験体が欲しいとも言えなくはないな」

『オリバー君、ちょっと後で<シエル>のタラップ裏に来てくれ。・・・お話が必要かね?』

「ははは・・・冗談ですよ、冗談」

「あ、えー・・・まぁ、軍の上層部はあまり乗る気ではなく、それならば、とこの独立部隊に配備、運用という流れになりました」


トビィが二人に代わって説明をしてくれる

「判りました、しかし我々はそこまで機動戦力に詳しくはありませんが」

『ああ、そこで、この方に来てもらった。・・・入ってくれ!』

ホログラムに新たな人影が映し出される

「あ、貴方は」

『お久しぶりです。ザラートさん』

そこに居たのは、元ルーンファウス・・・帝国軍の士官だったエイワードだった

『今回の新兵器開発にあたり、オブザーバーとして来てもらった。何かと有意義な意見がもらえるだろう』

『不束者ではありますが、宜しくお願いします』

「よろしく」


各々挨拶を交わし、議論に入る


・・

・・・

新兵器のコンセプトは大まかではあったが、ある程度形になってきた

要約するとこうだ

・主砲は平均的な火力を有する物とする

・居住性に余裕を持たせた構造とする

・限られた人的財産を「出来る限り保護」するため、防御・乗員の生命を守る設計とする

・乗員は3~4名 必要に応じ機動歩兵隊の搭乗を可能とする

・様々な環境下で活動できる性能を有すること


『なかなか、難しい要求性能になってしまったな』

「しかし、連合の戦況を考えると、こうなってしまいます」

『帝国ではまず思いつかない思想です。帝国の考えでは「攻撃・機動力」が最優先項目ですから』

「ふーむ・・・それぞれを両立させるのは難しいか・・・?」

「オリバー、独立部隊(こちら)の技術者も交えて検討してみる、か?」

「エマさんにエイミーさんですね。・・・悪くないかもしれません」

『よし、ではさっそく招集してくれないか』

「了解。ザラート頼む」


エマとエイミーを招集し、会議は再開する

結論から言うと


エイミーがやってくれた


「・・・その設計思想。『地球』でありましたね」

『おお、そうなのか』

「はい。とある小国にそれらの条件を満たした戦車が運用されていました・・・大まかにはこうです」

そう言ってエイミーはタブレットにイラストを描く

しかし・・・上手いな


「主機関は車体の前面に配置。乗員居住エリアまでに空間を確保し、着弾時の破壊エネルギーを食い止めます。装甲は各種弾頭に対抗するため複合装甲とし、それぞれ取り外し、交換を容易にします。

・・・足回りは追従型のサスペンションを用い、行軍間射撃を可能に。

制御機器は戦術連携を考慮し、共通のコントロールシステムを採用すると良いかと」


「・・・すごいな」

『行軍間射撃・・・それで戦えるのですか?』

「?はい。私達のいた国では当たり前、でしたので」

「・・・恐ろしいな。我々はこのような技術を持った相手と戦おうというのか・・・」

「エイワードさん。大丈夫ですよ、我々にもこのような技術、ありませんから」

『オリバー、エイミーと協力して設計を進めてくれ。トビィ、エマは必要となる物の研究を進めてくれ。

予算は潤沢だ。出し惜しみなくやってくれ』

「はい」


『ザラート、まったく君の所は何でも揃う感じだな』

「恐縮です。しかし、私は何もしておりません」

『何もせず、有益なものが集まるというのも才能の一つだ。結構結構』


今後、開発にあたり出来うる限りの支援が貰えることとなり、開発・製造は急ピッチで進んだ

エイワードのおかげで戦車の集中運用による機動戦術も確立、それを支えるシステムも完成した


後日、人型兵器ならびに新型戦車の試験が演習場で行われる事となった

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