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ウィーケスト・アーミー  作者: 神楽阪 舞
第4章 永き「時空」を彷徨うモノ
57/140

氷壁に閉ざされし甲兵 ~Новое оружие~

翌朝


明け方より吹き荒れだしたブリザードで周囲の景色は一変していた

視界は完全に遮られ、<シエル>との通信にも障害が発生していた

恐らく、補給部隊も途中で足止めを喰らっているだろう

まだ食料の備蓄はあるが、あまり長引かれると困るという感じだった


「ひぃぃ・・・!寒いっ・・・寒いっ!」

「ルルベル、寒いのは判るけど、ちゃんとしないと・・・」

アエルがルルベルを諫める

が、この寒さはさすがに堪える

「坑道の奥に入れば幾分マシになる・・・急ぐぞ」

「了解・・・っ」

ルルベルに限らず、他の皆も寒さに身を震わせている

想定以上のブリザード、記録した気温は何と・・・-50度


しかし、これだけのブリザードを耐えきった野営地は称賛に価する

工兵隊の技術力は想像以上だった

-----------

【試掘坑道・分岐ポイント】

昨日の調査で判明した奇妙な部屋と最深部へと分かれるポイントに到達した

静まり返った坑道に俺達が歩く音が響き渡る

「ここから先が深部への通路・・・で、右手の通路の突き当りに例の部屋があるからねぇ」

「ありがとう、そちらも気を付けて」

「では深部へ向かいます、各員注意して前進!」

アエルをリーダーとして調査隊は奥へと進んで行く


「俺達も行くか」

『はい』

俺とファナン、エイミー、それと数名の兵士を連れて奥へと進んでいく

しばらくは掘り進めたままの、ごつごつとした岩盤が剥き出しになった坑道だったが

「・・・少しずつ、機械的な壁になってる?」

「ですね、少し違和感を感じます・・・まるで"元々在った"・・・いえ、これだと」

「この場所を"そのまま"持ってきた、ということ、か」

俺の言葉にファナンとエイミーが振り返る

「え・・・それって」

「・・・隊長、それはどういう・・・?」

「いや、こんな"急に"機械質な壁に変わるのは不自然だ、ならここに「持ってきた」と考えたら、どうだ?」

「うん、そう考えたら・・・考えは整理付くけど、非現実すぎるよ」

「でも、隊長・・・ザラートは考える当てがある、と?」

「・・・俺も想像の域でしかない。が、想像もつかない事が起こったと考えると、それぐらい突拍子なことしか思いつかなくて、な」


「物質転送の技術は・・・私達の世界でも実現できなかったこと、です」

「うん。私もそんな技術があったなんて聞いたことも見た事もないよ?」


エイミーもファナンもそのような技術は無かったと言っている。が、

「でも、なぜか判らない。が、そんな気がしてな・・・確証はないんだ。気にしないでくれ」

俺は手をパタパタと振り、歩みを進める


「しかし、ザラートも面白い考えを持ってるね?」

ファナンが前からこちらの顔を覗き込むように言ってくる

「まぁ、色々と俺の知ってること、考えることを飛び越していく事が続いたからな、エイミーの件もそうだし」

「はい。・・・私も今起こってる事が不思議で仕方ないです。どうしてこうなったのか・・・?」

「エイミーはそう深く考え込まなくていいんじゃないか?エイミーはエイミー、だろ?」

「はい。私は"私"です、ね」


そういう可能性もあるんではないかと思ってな・・・と、これか」

俺達の目の前に、確かに奇妙な扉があった

その扉は無機質な金属製、一枚の板があるだけのように見える

そして、その扉の横には謎の文字・・・

それをみたエイミーが顔色を変える


「・・・ザラート、貴方の予想は・・・あながち間違っていないかも、しれません・・・」

それは赤文字でこう書かれていた


【Лаборатория】

「研究室・・・」


エマの声が静かな坑道に響く

「地下鉄の時と、ここも・・・判るか?」

「はい。・・・"地球"で、私の居た国とは別の所で使われていた言葉です」


そう言って、エイミーはさらに調べていく

「恐らく・・・この言葉を使っているということは、こういう扉が動かないときは・・・こうすれば」

そう言ってエイミーは扉の前で足を腰ぐらいまで上げ・・・

「ふんっ!」

『ガァンッ!!!』

「ぉぉー・・・」

「すごい・・・、エイミーがこんな行動(コト)するのって見た事ないから、なんか新鮮・・・」


エイミーは振り上げた脚で、目の前の扉を思いっきり蹴ったのだ


「でも、これで開・・・くんだな」

そして、扉はゆっくりと開きだした


「この国の機械類は壊れたら叩くと"直る"そうです。すべてがそうという訳ではないですが」

脚をパタパタと叩きながらエイミーは言う

「変わった風習なんだな」

「まぁ、変わった元首が多かった国のようです。

自分の思い通りに行かなかったら八つ当たりで側近を処刑したり、

一度すべてを無にしてやり直す勢いで、自国の機密情報を公開した元首だったり、

異文化が大好きで筋肉隆々な元首だったり・・・」

「さ、最後の筋肉云々は関係あるのか・・・?」

「さぁ、実際に見た訳ではないですが、実際にそういう大統領が統治していたようです。それも結構な人気だったようで?」

「そうなのか・・・?っと、無駄話が過ぎたか。部屋の中を確認しないと、な」


俺達はこの閉ざされていた部屋に入る

・・・ツンと鼻に饐えた臭いが届く

「妙に・・・埃っぽいね」

コホコホと軽く咳き込むファナン

「確かに・・・ここだけ、なんでしょうか。外と全く違う感じでしたね」

エイミーが回りを警戒しながら、机の上の書類などを確認している

「何かしらの研究施設・・・のようだな。端末は・・・これか」

近くの机の上にあった端末を確認する

・・・俺の知っている端末とは全く違うもののようだ

キーの配列などが全く知らないものだった

「これは・・・電源はここですね・・・電源・・・入りますね」

エイミーが俺の横から操作を行う

その動作は毎回見ても見事な物だった

「どうだ・・・?判るか?」

「はい。・・・これなら判ります。色々とここで研究されていたようですね」

「エイミーすごい・・・バシバシ、キーを叩いてる」

「ファナン、これはブラインドタッチと言って・・・画面を見ずにタイピングする技術です」

「へぇ・・・っと、ちょっと待って。今のって何?」

「えと、ちょっと待ってください。・・・ザラート、これですが・・・」


そう言ってエイミーとファナンが画面から身を避けて俺に促す


「これは・・・?」


俺達が見る端末の画面には、今までに見た事のない「兵器」の図面が映し出されていた

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