宇宙から降り立つもの ~まだ見えぬもの~
【惑星国家連合軍 野営陣地】
「戦艦?隕石ではないのか?」
俺が見たモノは戦艦ではなく、隕石そのもの。どう見ても船には見えなかったが
「普通に映像や、実際に見たなら・・・そう思うのも無理はないねぇ。でもこうすれば・・・ほら」
そういってエマは手元のタブレット端末を操作しホログラムを映し出す
そこにはフレームで構成された「戦艦」が浮かび上がっていた
「これが・・・隕石の正体か?」
エマは俺の問いに頷く
「恐ろしいほど高い技術で隠匿されてるねぇ。解析に2週間かかったよ。そしてこれではっきりとしたことが2つある」
「2つ?」
「1つは連合も帝国もここまでの戦艦を作る技術はない。これは世界バランスを狂わせるねぇ」
「もう1つは?」
「・・・この戦艦を巡って、戦闘がはじまるね」
そういってため息をつくエマ
「研究者の立場から言わせてもらうと。これは平和的に使いたいねぇ・・・これはうちら、いや全生命体の未来の糧になる」
そういって宙を見上げるエマ
「このご時世だ、お互い手を取って仲良し子良しとはいかないだろうな」
「だよねぇ。そこで一つ相談、というか・・・まぁこういう感じになって申し訳ないのだが」
そういうとエマは自分の大きな胸の前にあるポケットから一つ端末を取り出し、机の上に置いた
「作戦指令書、か」
「そうなるねぇ。怪我から治って早々で申し訳ないのだが、一つ受けてはくれないか」
そういってエマは頭を下げる
指令書に記されている内容はこうだ
・先の落下物は軍事利用が可能と思われ、何としてでも連合軍で確保したい
・休戦協定下のため派遣できる部隊は極小規模なものであり「研究名目」での「護衛」とされたい
・武装は非殺傷能力を有する物のみとし、戦闘も最低限かつインファイトとする
・帝国側も人員を送り込む可能性があるため迅速に行動されたい
「なかなかにハードだな・・・」
休戦協定下であるため、表立った軍事行動は取れない、が、帝国側もそれは同じ
正直、今まで幾多の戦場を戦い抜いてきた部隊であれば遅れをとることはないのだが
「派遣される部隊とあるが、その人員は到着しているのか?」
「それなんだけどねぇ・・・うーん、正直私も上層部のやり方は気に入らなくてねぇ・・・」
エマの反応が非常に気になる。何があったのだろうか。
「とりあえず会ってみるかい?」
「そうだな、会ってみないことには始まらない」
「わかったよ。・・・アエル!ルルベル!」
エマが2名の名を呼ぶと部屋の扉が開き2名の・・・少女が入ってきた
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・・・
「少女が二人ぃ?」
エマがザラートと打ち合わせを始める前、先の指令書と共に到着した2名の少女と会っていた
「アエル=ウィナーです」
「うちはルルベルです」
どちらも年は18にも満たない、どうみても戦時徴用の学徒、それも女性兵である
「しかしまぁ、なんでうちの上層部はこんな子供、それも女の子をよこすかねぇ」
そういってエマは頭をガシガシと抱え込む
・・・正直、こちらの情勢は良いとは言えないがこんな年端も行かない子供、それも女の子を戦地に赴かせるとはねぇ
「お言葉ですがエマ女史、私たちは一通り軍事訓練を受けております」
「です」
「いやぁ、あなたたちが悪いって訳じゃないよ」
「私たちでは任務達成は無理と判断されますか」
「いやぁ、なんというか、ねぇ・・・罪悪感しかないんだよホント」
しかし正式な指令書と共に彼女たちのプロフィールがある以上、これは紛れもない事実
ほんと酷なことばかり進めるねぇ、この連合国の上層部ってのは・・・
新たに配属された二人を眺め、うちはため息をつく
(なるべくなら、この二人には負担をかけたくないねぇ)
子供を戦争の道具に使うなんて、ほんと上層部ってバカばっか




