忍び寄る悪意 ~帝国老将軍の杞憂~
木の上に狙撃兵、そしてそれを狙うのも狙撃で・・・某ガンシューティングを思い出しました
フットペダルで隠れたりするアレですよ?
オペレーション・デッドプールの成功に伴い、ダリアシティが支配下に加わった
新たな拠点を手に入れた連合軍はここを足掛かりに帝国司令部に向け進撃を開始
当惑星での作戦目標達成はそう遠くないものとなっていった
そんな折、ザラートは前線会議に赴くこととなり、副官のファナンと共にダリアシティへと向かうのであった
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【ダリアシティ・連合軍臨時司令部】
「・・・以上をもって今後の作成要綱の説明を終了します」
議事進行役の将官が説明を終える
オペレーション・デッドプールの成功により、進攻作戦は軌道に乗りつつあった
帝国軍の抵抗も少なく、連合軍は電撃的な進軍が可能であった
ダリアシティの確保に伴い、前線への補給路も新たに完成
同地区にある宇宙港にはプルメア本国から地上兵力の増援(主力戦車を主とする地上兵力ならびに補充人員)も順次送り込まれる状況となっていた
我ら13部隊については、可能性は低いものの現地ゲリラ部隊による奇襲、ダリアシティへのテロ攻撃を警戒し、現在の拠点を中心に警戒行動をとることとなった
「君たちの部隊には違う仕事で負担をかける、申し訳ない」
「この任務も非常に重要なものです、少将は気になさらず」
ネフェル少将はこのように末端の部隊、部下にも気配りができる名将でもある
これが人望の厚さにもつながっているのだろう
「しかし、ワーウルフ達の人狼輪形陣といったか、あの戦術は非常に使える」
「はい。あの戦法には我々も救われました」
「引き込んで殲滅・・・対人だけでなく、敵装甲戦力の殲滅にも応用できるやもしれんな」
「はい。私形に戦術として組み上げれないか検討してみます」
「心強いな、私は本当にいい部下を持った」
「もったいないお言葉です」
「では、我々は前線に戻る、君たちも後方からの支援、よろしく頼む」
お互いに敬礼を交わし、臨時司令部を去った
「ここの司令官、ほんとに良い人だね。確かザラートの学生時代の教官だったっけ」
「そう、学生時代には厳しいながらも優しい教官だったよ」
「そっか。いいなぁそういうの。私はそういう経験ないから、ちょっと羨ましい」
「ファナンは士官学校とか、普通の学校とか、通ったことは?」
「ん、無いよ。生まれたときからエイミーしかいなかったし。勉強はエイミーと電子教材だけ」
「エイミーだけって・・・両親とかは?」
「ん、いないよ?それが当たり前だって思ってたし」
「・・・ごめん、聞いちゃいけなかったか」
「いいよいいよ、ほんと、当たり前だと思ってたし私は全然気にしてないよ」
そう言ってファナンは屈託のない笑顔を浮かべる
しかし、ファナンの笑顔の中に少しだけ、言い表せない「不安」な様なものを感じた
もしかしたら、ファナンは・・・
俺はファナンの事を全然解っていなかった
エイミーに任せろと受けた手前、罪悪感があった
勇気を出して本人に聞くという選択肢もあったはずだが、俺はその決断ができなかった
・・・一度エイミーに相談したほうがいいのかもしれない
「そだ、せっかく出歩く機会なんだし、軽く食事して帰ろうよ」
「・・・そうだな、悪くない」
俺たちは大通りから少し裏手に入ったところにあった小洒落た店に入った
小さなカウンターに先客が一名居た
俺たちは入口すぐのテーブル席に着き、店員に注文をする
しばらくして料理が届いた、味はなかなかの物だった
「ん、美味しい・・・!」
「これはなかなか、いい腕だな」
俺たちは食事を楽しんでいると、カウンターにいた初老の男性がこちらに向き、そして近づいてきた
「すまない、君たちは連合軍の者か」
「・・・そうだが、それが何か」
ただならぬ雰囲気を醸し出す男性に声を掛けられ、とっさに腰に差す拳銃に手をかけようとした、が
「・・・ここで事を構えようとは思わない。美味い食事と雰囲気が台無しになる」
「・・・判った。立ち話もなんだ、そちらに掛けたらどうだ」
「すまない、お言葉に甘えさせてもらおう」
男性は俺たちの横の椅子に腰かけ、静かに口を開く
「さすが、躊躇うことなく武器に手を掛けるあたり、かなりの手練れと見受ける。君たちの察しの通り、私は帝国軍の者だ」
「・・・!」
ファナンが立ち上がろうとするが、俺はそれを制する
「大丈夫、事を荒げないと言ってるんだ。信用しよう」
「感謝する。本題に入るが、君たちに帝国の状況・・・現状を知ってもらいたくてな・・・」
男性から語られたのは、帝国の隠された歴史の一片だった
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・・・私の名はファーシル、第6機械化師団長を拝命している
名誉ある帝国機械化師団の長を拝命したときは、帝国のために尽力できると感動したものだ
しかし、実際に仕えて判ったことは腐敗しきった帝国の内部情勢だったのだ
腐敗しきった官僚たちの癒着
無能な上官たちの無理難題
一向に改善されない現場の環境
とりわけ酷いと感じたのはその指揮系統だった
現在の帝国の指揮系統は皇帝の絶対指揮権、それに尽きる
皇帝が「やれ」と命令すればそれに従うのみ、若い時はそのカリスマ溢れる皇帝に仕えることが誉れなことと思っていたが、実際はどうだ
何の罪もない民間人を殺せと指示されればそれに従わなければならない
結局のところ、本当に悪なのは皇帝そのものではないのか、という疑念が生まれてきた
しかし、それを口にだすことはできなかった
逆らう者には死あるのみ
そのせいで先の劣悪な環境を生み出しているのだ、と
近い将来、このシステムは崩壊する、私はそう考える
しかし、これを止めることができなかったことも事実
私は軍人だ、その責任を取る必要がある
軍人は軍人らしく、皇帝からの指示を厳守し、その責を果たそうと思う
・・・君たちはまだ若い、将来のある若者
どうか、帝国を
いい方向に導けるよう
我々を倒してはくれないか
次に相まみえるのは戦場だろう
君たちに敬意を表し、戦車ではなく生身で挑ませてもらおうと思う
・・・君たちの設営した「拠点」に
ザラートとファナンは急ぎ陣地へと戻る
帝国軍の師団長、ファーシルからもたらされた情報をもって・・・
この敵将、かっこいい感じに仕上げたいなーと思いこういう感じに(きっと見た目もナイスミドル
最期もかっこよくしたいなぁ