研ぎ澄まされた刃 ~第二次フォレストル宙域戦[3]~
連合軍、帝国軍の攻撃隊が激しくぶつかり合う中
ザラート達独立部隊もまた艦隊戦に突入していた
敵対する帝国艦隊はこの戦いのため編成を一新、最新鋭艦を揃えた第一艦隊
そして・・・
【帝国第一艦隊旗艦オーディンⅡ】
「敵襲!敵襲!!」
観測員の悲鳴に近い襲撃の緊急報が伝わる
輪形陣を取る連合軍艦隊に帝国軍の攻撃部隊が襲来したのだった
「敵の数は?!」
「はっきりとした数は・・・!しかし数は少ないかとッ・・・!」
「各艦、対空戦闘開始!直掩機は迎撃だっ!!」
クレツァーは冷静に命令を下す
各艦が迫る脅威に対し備える
そして、
艦隊直掩機が敵影を視認する
「隊長!敵機確認!!」
「連合軍の新型かっ?!それに機動兵器もかっ!!」
グリンガルが捉えた連合軍の数は総数28
数は少ないものの、その動きは統率が取れており、油断ならない相手であることが伝わってくる
そしてなにより・・・機影の4つは"機動兵器"
「隊長、これは・・・」
「狼狽えるな。我々がここで止めなければ帰るところがなくなる。各機、今までの訓練の成果を見せる時だ!一機でも多く墜としてみせろっ!!」
『了解っ!』
隊長機が先陣を切って突入してくる攻撃機編隊に向かい突撃する
ザラート率いる独立部隊の攻撃隊は報告に上がっていた通り28機の編成
4機の機動兵器、そして24機の戦闘機隊
ザラートが駆るグロリアス、そしてルルベルの駆るミリアムが先行
そのすぐ後方にファナンのコキュートス、そしてアエルのデンファーレが続く
その後方に6機ごとに編隊を組む戦闘機隊が続いている
「ザラート隊長。敵艦隊の直掩機に動きが。こちらに向かって移動を開始しています」
「さすがの展開速度だな。どのぐらいで接触しそうだ?」
「あと2分ほどで接敵するかと・・・数は40・・・いえ42です」
「各員に次ぐ。アエルからの報告の通りまもなく接敵する。各自作戦通りに頼むぞ!」
「ファナン了解」
「ルルベル了解ッ」
「アエル了解しました」
「ドルーア、戦闘機群も了解した。各機、作戦通り敵の機動力を優先して奪うぞ」
各機は当初の"目的"に沿って作戦を開始する
先手を打ったのは帝国軍
防衛ラインに展開するグリンガル、オーキスが所定のエリアへ効力射を開始
攻撃を回避すべく散開したザラート達に次の一手が到達する
「会敵します!敵の直掩機!数4ッ!」
ルルベルがレーダーに敵機を捉える
程なくして俺の機体もレーダーで敵影を捉えた
直後、ロックオン警報が鳴り響く
「敵機体、飛翔体発射ッ!数・・・12!」
アエルから通信と共に詳細な飛翔体のデータが届き、同時に迎撃のため発射されたビームがその飛翔体を捉える
「迎撃成功!続けて敵機接近!近接戦闘ッ!」
俺達に向け、敵機が格闘戦を仕掛けてくる
俺に向かって来た敵機の数は3
機体の横を通過した敵機は大きく反転し、こちらの背後を取ろうと散開し突入してくる
「さすがに小型機の機動性には敵わない、か!」
正面から突っ込んでくる機体がこちらに向け銃撃を開始、その両翼に展開する敵機も呼応し射撃を行う
躱し切れず被弾、機体を小さくない衝撃、そして鈍い被弾音が伝わってくる
・・・機動性に勝る敵機の攻撃を回避するのは至難の業
防御力では上回っているだろうが、アイカメラなど被弾に弱い箇所を狙われては後の作戦に支障がでてしまう
両翼に展開する2機を頭部、そして左腕に内臓されたライフルでけん制
そして正面から突っ込んできた機体に対し、
「これならっ!」
退くように見せかけ、スラスターを最大出力で噴かし急接近
「ぐっ、うっ・・・!」
急激なGに体を押さえつけられながら、機体を何とか制御する
敵もまさか、この体勢から突撃してくるとは思わず対応が遅れる
その隙を逃さず、俺は右腕のパイルバンカーを突き立てる
『なっ・・?!』
敵機乗員は意表を突いた機動、そして右腕、それも格闘戦という常識はずれな攻撃に反応できなかった
機体を貫かれたと同時にその衝撃で機体が砕け、宇宙の塵と化す
まさか敵機も近接攻撃を食らうとは考えてもみなかったのである
慌ててグロリアスから距離を取ろうとするが、
反転した瞬間、グロリアスからではない攻撃、青白いレーザーに撃ち貫かれ
その跡は何も残っていなかった
「助かった、ファナン」
「ううん、ザラートがひきつけてくれてるから狙いやすいよ」
『くっ・・・れ、連合の機動兵器は化け物かッ?!』
僚機を立て続けに失った敵兵は戸惑いを見せ、動きにスキができ、
『ろ、ロックされっ・・・ぐぁぁっ?!』
無防備に曝け出した機体下部を2発のビームに貫かれ、爆発四散した
「この距離ならこちらが一番有利。このまま敵機を撃破していきます」
「助かった、アエル。引き続き敵機の迎撃を頼む」
この前哨戦で敵側は全機未帰還、対しザラート達独立部隊の損害はゼロと一方的な戦闘結果となった
そして、その勢いのまま、ザラート達は帝国第一艦隊へと攻撃を開始したのだった




