創られし”者”と”物” ~ Invincible~
イングラシア艦隊を挟撃するインヴィジブル、アウルム
そしてシエル
イングラシア艦隊は思わぬ敵の出現に浮足立っていた
そしてこの混乱に乗じアエル、ルルベルはシエルへ無事帰還していた
「せ、戦況は・・・?!」
「おかえりなさいアエル。戦況は我々が優勢です。マスターの反応は大丈夫です。ファナンの最終確認ポイントにて捜索中です」
「ファナン、大丈夫かな・・・?」
「大丈夫ですよ。ファナンなら、ね」
アエルの心配にミーヴィが応える。その言葉にエイミーも頷く
ファナンの機体は撃破されたものの、脱出に成功している
あとはマスター・・・ザラートが発見してくれれば
「アエル達も帰還しましたし、私たちもマスターの近くへ動きましょう」
「そうね。友軍も到着しましたし、ここは連携を取って殲滅がベストですね」
シエルはゆっくりと敵艦隊に向け進軍を開始する
時折掠めるレーザーがシエルの周りで霧散する
反撃に放った主砲の一撃が敵駆逐艦を貫く
これで敵の残る艦艇は10を切った
ザラートはファナンの捜索に難航していた
時折迫る敵の攻撃を躱し、そしてレーダーに反応が無いか調べる
何もない、闇の空間が広がるこの宙域でファナンが乗るコクピットブロックを探し当てるのは至難の業
アエルより送られた反応のあったポイントをくまなく探すが、なかなか見つからない
その中、シエルがゆっくりとこちらに向かってくるのが確認できる
そして、新たに現れた連合艦隊の反応
1つはアウルム、あとの3つは新しいコード・・・識別は友軍、レーダーに映る艦影から新たに建造された航宙母艦だろう
そしてこちらに接近する小さな反応が3つ
艦載機として開発された機体だったな、あっという間にグロリアスの横に並ぶ
「ザラート隊長!」
「援護感謝する。君達は?」
「はっ、ドルーア隷下の第二軍に所属するヨウムと申します」
「そうか。早々、素晴らしい戦果だな」
「はい。いいえ、この新しい機体のおかげです。それにアウルム以下、連合艦隊の支援あっての成果です」
「いや、それでも君達の活躍あってのものだ、誇っていいと思う」
「ありがとうございます。それで、ザラート隊長はどうしてここに?」
「ああ、副長機が撃破された。脱出には成功したが、このあたりに漂流しているようで捜索中だ」
「それは・・・!畏まりました、我々も捜索に当たります。・・・聞いての通りだ、護衛、捜索を行うぞ」
接近した3機も捜索に加わり、そして
「隊長!発見しました!!」
ヨウムより改めて連絡が入る
ヨウム機の傍に銀色の球体、コクピットブロックがあった
「すまない、助かった!」
「いえ、無事に発見できて何よりです!引き続き護衛に回ります」
「助かる」
漂っていたコクピットブロックを回収し、グロリアス、そして戦闘機はシエルに向かい移動を開始
ザラートの駆るグロリアスは無事シエルへと帰還、ヨウムたち護衛機はそのままシエルの直掩に回った
「おかえりなさい、マスター」
「遅くなった・・・ファナンの容態はどうだ?」
「問題なく。気を失ってはいますが、生体反応に異常は見当たりません」
「そうか・・・」
「以降の戦闘は私達に任せてください。マスターはファナンの元に」
「・・・すまない」
俺は足早にファナンの元、医療室へと向かった
ファナンはコクピットブロック内で気を失っていた
幸い命に係わる負傷は無かった
今は大事をとって医療室のベッドで横になっている
「艦からの退避、そして戻ってすぐに迷惑をかけた・・・すまない」
「いいよいいよ。迷惑だなんて思ってないし、最善の方法なんだしねぇ」
エマが右手を軽く振り、気にしてないという風に返す
先のデストロイ、ウィドゥとの戦闘時に艦外へ、戦闘終了後戻ってすぐにファナンの対応とエマは忙しく対応していた
当の本人は大丈夫と言っているが、それなりに疲労は溜まっているだろう
一緒に艦外へと退避していたミリィもまた同様だった
ファナンの搬送、エマのサポートに、彼女は進んで協力してくれた
「ミリィ、お前も無理はするな。休める時に休んでもらっていいんだぞ」
「大丈夫です。丈夫なのは取柄ですし、体調やファナンさんの役に立てるのでしたらこれぐらい」
そういってミリィは笑顔を浮かべ、エマのサポートをしていた
エマの指示の元、ファナンとつながっている機器の数値を確認、それを記録
そして別の指示を受けたのか、別室から資材を運んだりと忙しなく動き回っていた
「・・・俺は邪魔かもしれないな」
「邪魔だなんてとんでもない。隊長は戦闘から戻ったばかりだし、ここで休んでいくといいよ。
・・・といっても、落ち着かないかもしれないけどねぇ」
そういってエマは苦笑し応える
そして、
「まぁ、前にも言ったかもしれないけど、こういう時は傍に居てあげるというのが一番の薬だよ。それに私達だって隊長のフォローもできるしねぇ。
特にミーヴィ、エイミーなら残りの戦闘、対艦戦なら大丈夫じゃないかねぇ」
「そうだな」
「隊長一人で背負い込むことはないさ。任せれる所は任せて、隊長は隊長らしく指示だけ出してというのも良いんじゃないかな?」
「・・・そういうもの、か」
「そうそう。いつも気を張り詰めてちゃ隊長がダウンしちゃうからねぇ。それが一番この部隊・・・連合軍にとってのダメージになると思うね」
いつになく真剣な眼差しで俺に向かって意見を述べていた
・・・エマの言う通りかもしれないな
「っと、隊長に対して失礼な言い方だったねぇ・・・申し訳ない」
「いや、俺も思うところがあるし、貴重な意見だった。こちらこそ礼を言う。ありがとう、エマ」
「ううん、どういたしまして。・・・いやぁ、そういった謙遜な態度が取れるあたり流石だねぇ」
「?そうか・・・?」
「そうだよ。少なくとも、研究所に来訪してた彼らの態度は、ねぇ」
そういってエマはまた苦笑を浮かべる
「色々苦労してたんだな」
「まぁねぇ、仕事は楽しくやらせてもらってたから苦労ってほどではないのかもしれないけどねぇ」
「・・・なぁ、エマ」
「うん?」
「今、ここでの仕事は気に入ってるか?」
「あはは、いきなりだねぇ。大丈夫、ここでは楽しくやらせてもらってるよ?何なら研究所に居た時より楽しいと言い切れる」
「・・・そうか」
「ん。隊長は本当にいい人だねぇ」
「ですね、隊長の隊長たる所以でしょうか」
ちょうど部材を運び込んだミリィもエマと同じく笑みを浮かべ答えていた




